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# 『攻撃的サッカー 0トップ型4-3-3の時代』
2015/12/29 16:23
攻撃的サッカー 0トップ型4-3-3の時代 杉山茂樹 PHP新書 2015年



2014年のW杯で予選敗退となり、ザッケローニ監督の解任、更にはアギーレ監督の解任という監督交代劇を繰り広げ、迷走する日本のサッカー。本書は日本サッカーの根本的な問題点に「FWの決定力不足」という一般論とは異なる、布陣という視点で切り込んでいったものである。

筆者によれば、日本のサッカーは布陣の面でははるか昔の様相を呈している。メディアなどで公開される先発布陣は、流行りの4-2-3-1や4-3-3であっても、その布陣としてのサッカーをするのではなく、中央に人が寄った単調なものになってしまう。攻撃といえば、相手ディフェンスが蔓延る中央を突破するしか能のない強者の戦術、かつシュートに高度な技術を必要とする方法しかない。対して、世界の強豪クラブやW杯の上位国はというと、日本とは全く逆にサイド攻撃を重視し、ペナルティーエリア付近から鋭角の折り返しパスを出してシュートに結び付けるという、決定力の必要ないゴールを生み出す戦術を採用しているというのだ。筆者はそれを「0トップ型4-3-3」と名付け、今のところ決定的な弱点のない布陣であるとまで言う。

このような世界的にはブームとなっている「0トップ型4-3-3」布陣を支えているのは、各選手の戦術理解と、ポジションに求められる役割をきちんとこなす規律である。つい中央に寄ってしまうスター選手など、布陣の中の1人としての役割を果たさない選手に対しては、監督は戦術面の理解を促して厳しく修正を迫る。その中で、各選手は自らの役割を見出していくのだ。なるほど、これでは日本のサッカーは敵わない。筆者がかつて4-2-3-1 サッカーを戦術から理解するで主張していたように、日本のサッカーはあくまで布陣ではなく選手のキャラクターによって戦術を組み立てていく伝統が深く根付いている。こんなことではいつまでも布陣に必要な選手を育てるという発想が生まれるわけがない。

思えば、W杯で最高の結果を残した南アフリカ大会は、直前になって監督が「0トップ型4-3-3」を採用し、戦術変更に伴って急遽レギュラーメンバーとなった選手達が、その布陣の中で自ら求められる役割を果たそうとしたからこそ、うまくいったのかもしれない。確かに結果論ではあるのだが、そう思わずにはいられない。日本サッカーが進歩するためには何が必要か。真剣に考えなければ、これ以上の進歩は見込めないように思う。
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# 『野球×統計は最強のバッテリーである セイバーメトリクスとトラッキングの世界』
2015/10/07 21:22
野球×統計は最強のバッテリーである セイバーメトリクスとトラッキングの世界 データスタジアム株式会社 中公新書ラクレ 2015年



野球は投手、打者、野手など、個人の役割が他のスポーツに比べて明確であるがゆえに、多くのデータマニアを生んできた。数値を使って選手や球団を評価し、特に球団の運営方針や選手の獲得、育成に活かそうという分野がセイバーメトリクスである。野球の素人でも聞いたことのある「打率」や「打点」といった指標は、選手の能力を評価するのに十分な数値とは言えないという意見が徐々に出されるようになり、セイバーメトリクスの世界においては能力をより正確に測るための数値が開発されてきた。本書は、近年よく用いられるようになった「出塁率」や「長打率」その他の数値の計算式や考え方について、わかりやすく解説してくれるセイバーメトリクスの入門書である。なぜそのような数値があるのかに関する背景知識も交えて解説されるので、興味が増す。本書が書かれた時点では、セリーグで得失点差がマイナスの阪神が首位という(セイバーメトリクスの観点では)珍事が起こっていた。実はここで述べられていることを基に考えると、今年のヤクルト優勝も理に適っている。

また、後半では選手やボールの動きを追う「トラッキング」という手法が持つ今後の可能性について座談会形式で語られる。野球の見方すら変えてしまうのではないかと思えるくらい、トラッキングの持つ威力は大きい。ストレートのキレや伸びといった、かつてはなかなか言語化するのが難しかった現象も、トラッキングを応用すれば、言葉で説明できるようになる。セイバーメトリクスの可能性を感じられる1冊だ。

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# 『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』
2014/10/30 20:59
日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価 杉浦大介 ベスト新書 2014年



1990年代中盤に野茂英雄が開拓したメジャーリーグという道に、多くの日本人投手が挑戦し、成功と挫折の道を歩んできた。野茂のデビューから20年近くの時が過ぎ去ろうとしている今、改めて日本人投手がメジャーリーグでどう評価されているのかについて、選手やスカウト、記者などへの取材を基に考察を試みた本。

日本人がメジャー挑戦を試みるのは決して珍しいことではなくなった昨今ではあるが、それでもしっかりとメジャーの歴史に残ったりファンの記憶に残るような活躍をした投手となると、果たしてどのくらいいるのだろうか。また、現地での評価はどのようになっているのか。通の間では何ら不思議はないのかもしれないが、現在のところ野茂と黒田の評価がかなり高いらしい。そこから見えてくるメジャーで成功する秘訣とは、ずばり先発ならローテーションを守り抜き、平均以上の働きを何年にもわたって続けることである。そのために、投球の方法やメジャーの環境への適応を工夫していくことが大切なようである。だから、けがの多いダルビッシュは可能性を秘めていながらもまだ日本人メジャー最高の投手とは言えないらしい。

様々な人々のインタビューが紹介されるが、やはり印象に残ったのは、野茂の評価が非常に高いということである。野茂がメジャーデビューして20年という月日が経過しようとしているが、前例のない大舞台挑戦、2度のノーヒットノーラン達成など、彼の活躍した足跡は未だに多くのメジャーリーグファンの心に残っている。

また、近年よく言われる、日本人投手が若い頃から投げすぎで肩を酷使していないかという指摘に対する考察も興味深い。私自身、勝利を追求するあまりに1人の投手に頼り、短い期間に何百球という投球をさせる文化には幾分疑問を持っている。しかし、筆者の分析やインタビューの結果によると、投げ込みもより無駄のない洗練されたフォームを定着させるのに一役買っているという面もあるそうだ。また、どんなに球数制限をしたところで、現在けがが減っているわけではないらしい。近々日本の良いところも認めていく動きが出てきそうであるという見方には驚きだ。

ワールドシリーズも終わった今、書籍でメジャーリーグに触れるのには絶好の機会であるように思う。一般的にメディアで語られていることだけでなく、少し踏み込んだ話が詰まったものとして、本書をお薦めしたい。

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# 『「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー』
2014/07/06 18:27
「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー 高橋秀実 新潮文庫 2014年



今年の4月から放映されていたドラマの原作。東大合格者数では有名な開成高校も、野球部に至っては悲惨な状況だ。まともにキャッチボールができないやら、守備をやらせてもエラーを連発するわで、とても試合で勝てそうなチームではない。ところが、2005年夏の大会では、東東京ベスト16進出という大躍進を遂げた。本書は、そんな開成高校野球部の取り組みについて、選手や監督への取材を通してまとめたものである。

ドラマ化し、そこから知った作品ではあったが、非常に興味深い記述に溢れた内容で、一気に読んだ。強豪校の常識が通用しない開成高校において、大切なのは「ドサクサに紛れて勝つ」ことだそうだ。高校野球における様々な戦術は、結局は強豪校同士の逼迫した試合を前提としたもので、ごく普通の学校、はたまた普通以下の実力の学校ではまったく意味を為さない。これが、開成高校野球部監督、青木先生の考えである。エラーを前提として、取られた分以上に取り返す攻撃野球、練習を仮説と検証の場とする練習法など、開成高校の実情に合った戦略の数々は、不思議と説得力に満ち溢れている。また、ドラマについても、本書の内容を最大限に活かして制作されていたのだなとわかり、本書の素晴らしさを伝えてくれたドラマのスタッフにも感謝したくなった。

終わりにある桑田真澄による解説もまた、素晴らしい。野球以外のあらゆるものを絶ち、練習時間が長ければよいと考える風潮や、体罰はあって当たり前という高校野球の姿勢に疑問を持ちながらも、プロの世界まで駆け上がった彼ならではの開成高校野球部への愛情に満ちた言葉は、心に響く。

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# 『個性をモノにする』
2012/06/17 22:06
個性をモノにする 岡島秀樹 ベスト新書 2012年



メジャーリーグ移籍直後は、チームメイトから松坂の話し相手くらいにしか思われなかった岡島秀樹。しかし、結果を出すにつれて首脳陣からの信頼を得て、いつの間にかボストン・レッドソックスの中継ぎの中核を担うまでになっていった。子どもの頃からメジャーにあこがれていたわけでもなく、30代になってからの突然の移籍だったにもかかわらず、岡島はなぜメジャーで活躍できたのか。本人が語る、その秘訣とは。

岡島は、自らが活躍できた1番の理由は個性を武器にした点だと語る。ボールを手から離す瞬間に捕手を見ないという独特の投球フォームが特徴の岡島は、これまで何人もの人から、フォームを是正するよう注意されてきた。しかし、岡島は自分のフォームを認めてくれる人々にも出会い、その人たちから励まされて、野球を続けてきた。本書の中でたびたび触れられるエピソードから、個性を伸ばすことの難しさ、個性を認め、支える人の重要さを実感することができる。

本書のもう1つのテーマは、メジャーリーグへの適応という観点であろう。多くの日本人がメジャーリーグに挑戦し、様々な壁にぶつかって、辞退しているのが現状だ。岡島は盛んに、野球は仕事だと語る。スポーツ選手というと、いかにも好きなことを仕事としているという印象があるが、岡島が持っている野球観は、非常にビジネスライクな面が強い。結果にこだわるプロ意識は忘れないなどの考え方が、アメリカ流の野球とマッチしていたのだということがよくわかった。また、家族を養うという意識がとても強く、普通のサラリーマンに近い思考をしている点も面白い。それゆえに、ビジネスマンにとっても参考になる記述は多い。壁にぶつかったときの考え方、慣れない環境への適応など、人が職業とともに生きていくのに必要な術を随所で語ってくれる。

メジャーへの適応については厳しいことを語りつつも、自分の置かれた境遇で悩んだこと、うまくいかなかったこと、気にせずに割り切ったことについても触れている。その意味では、プロとして意識すべきことについて語っている部分と矛盾しているとも言えるかもしれないが、1人の職業人が余すことなく心境を語ってくれたと考えれば、むしろ人間味があって良い内容かもしれない。

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# 『世界は日本サッカーをどう報じたか「日本がサッカーの国になった日」』
2010/12/01 16:36
世界は日本サッカーをどう報じたか「日本がサッカーの国になった日」 木崎伸也 ベスト新書 2010年



2010年のワールドカップ南アフリカ大会で、日本は大方の予想に反して決勝トーナメント進出を決めた。カメルーン、オランダ、デンマーク、パラグアイとの戦い振りを、サッカー先進国のメディアはどう報じたのだろうか。ドイツ、スペイン、イタリア、フランス、ブラジルなどの国々の実況中継の様子、現地の新聞の報道に注目することで、世界から見た日本サッカーの姿を描き出し、今後の日本サッカーのあるべき方向を模索する。

野球とは異なり、サッカーには個人を評価する数値が非常に乏しい。野球の場合、打率、出塁率、ホームラン数、打点、エラーなど、個人を評価する材料が多くある。しかし、これらの数値は完全に本人の実力によると言い切れるわけではなく、偶然も影響する。また、どの数値にこだわり、どんな選手を評価するかは、人によってまちまちだ。ましてや、個人を評価する数字がほとんどないサッカーにおいては、選手・チームの評価は難しい。本書で紹介されている世界のメディアの報道振りを見ても、そのことを痛感せざるを得ない。だが、だからこそ、世界のメディアで日本のサッカーがどう報道されていたかを知ることで、新たな視点で日本サッカーについて語ることができるという利点もある。

サッカー先進国の実況者は、日本の場合とは異なり、サッカーの実況に特化した専門家である。それゆえに、各自の視点で試合の状況を語り、素晴らしいプレイを褒め、悪いと思う部分は徹底的に貶す。また、もちろんのこと喋りのプロでもある彼らは、絶妙な比喩を用いるなど、表現も多彩だ。そんなことが、本書の内容から伝わってくる。

世界の報道の様子を見て筆者が指摘するのは、日本は恐れずに攻撃に出るべきだということである。規律を守った守備が世界に通用することは証明できたかもしれないにしても、攻撃的に出て観客を沸かせることができなくては、一流ではないと言うのだ。自身のサッカー哲学をどう持つのかが、今後の日本の課題なのかもしれない。

筆者が最終的に出した結論には、多少肩透かしをくらってしまうかもしれない。何しろ、周りの目を気にせず、堂々と戦えというのだから。

ヨーロッパのメディアでは、試合ごとに出場選手に点数を付けて評価する習慣がある。日本が戦った4試合についてのメディアの評価が掲載されていて、興味深い。

本書は、誤植と、自動詞・他動詞の使い方にミスが多くある点が問題だと思う。筆者によると、本書は諸事情から非常に短い時間で仕上げる必要があったらしい。それでも、ミスは最小に抑えるべきであろう。

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# 『日本サッカー現場検証 あの0トップを読み解く』
2010/10/27 10:02
日本サッカー現場検証 あの0トップを読み解く 杉山茂樹 じっぴコンパクト新書 2010年



ワールドカップ南アフリカ大会、日本は大方の予想を裏切り、世界を驚かせる番狂わせを演じて、決勝トーナメント進出を決めた。岡田監督については、更迭論まで噴出していたにも関わらず、一挙に支持率が上がった。著者の南アフリカワールドカップ体験記に乗せて、岡田ジャパンの戦術に迫る。

著者は、サッカーの戦術に関する本を多く出している。以前、本ブログでも、『4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する』という本を取り上げた。メディアで一般に報道される「攻撃サッカー」などの言葉に疑問を呈し、過去に観客を沸かせた戦術を引用しながら独自の視点でサッカー解説を行うのが特徴。

本書でも、その姿勢は変わらない。「本田の1トップ」「中盤の3ボランチ」「守備的な布陣への変更」といったメディアの報道が実態に則していないと批判し、「主力の不振」といった岡田監督自身の言葉についても、納得しない様子。

著者が最も力点を入れているのは、事実上「0トップ」になったという布陣の解説だ。著者は、今までずっとストライカーの不足が嘆かれている日本の場合、攻撃的MFの力をうまく利用する「0トップ」という布陣が向いているということを提唱してきたという。日本の躍進は、偶然なのか、狙ってなのかはわからないものの、この戦術が奏功した結果だという。本田・香川・宇佐美といった、FWとMFの中間とも言えるような選手が次々と台頭してきた中、この戦術は現実味を帯びているかもしれない。Jリーグの現状では、ウィングの選手が育ちにくいことや、そもそもフォーメーションという概念自体定着しにくいという指摘にも納得。

「アフリカ勢が勝てない理由は情緒不安定だから」といった、鵜呑みにはできないような記述もあるが、本書をもとに、また新たな視点で日本代表やJリーグの試合を観戦してみると、思わぬ発見がありそうなのは事実だ。実際に試合会場に足を運びたくなる気持ちになる本だ。

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# 『イチローvs松井秀喜 相容れぬ2人の生き様』
2010/05/11 16:11
イチローvs松井秀喜 相容れぬ2人の生き様 古内義明 小学館101新書 2010年



共にメジャーリーグを代表する日本人選手である、イチローと松井秀喜。メディアへの対応に見られるように、2人は対照的な面を見せることが多い。本書は、メディアとの対応のみならず、プレイへの考え方、父親との関係や、食事に至るまで、様々な面から両者を対比させ、違いを浮き彫りにする。

なかなか面白いテーマだと思ったので、購入。思えば、2人は野球のみならず、生き方の面においても対照的であると思わせる部分が多々ある。おそらく、よく言われるところは、メディアへの対応と、個人の記録に対する考え方の違いであろう。

松井秀喜は、メディアに対して本当に真摯な対応をする。全打席凡退でも、3安打でも、不調でも好調でも、感情を露わにはせず、必ずメディアからの質問に応える。そして、その模様は日本のニュース番組でも放送される。それに対して、イチローは、メディアを前にひねくれ発言をすることも多く、時には子どものようにはしゃぐ姿も見せる。イチローのコメント力については、以前、斎藤孝氏がテレビ番組で絶賛していた。

個人記録に対する考え方も正反対だ。イチローはメジャーリーグに進出後も前人未到の領域までに踏み込む実力を発揮し、自らが所属する弱小チームの中で飛び抜けた活躍を見せる。一方、フォアボールが少ないことが批判されるように、チームの勝ち負けよりも個人の哲学を貫くことを重視していると思われても仕方がないようなプレイスタイルだ。反対に、松井秀喜は、チームの勝利ということを何よりも大切にする。先日、日米通算1500打点を達成した時でさえ、ホームランで自分がホームを踏む以外はすべて仲間のお陰とし、大喜びする様子はない(もちろん、松井の言っていることは正論ではあるが)。

本書が触れている領域は、さらに広い。親子関係、食事(好き嫌いからこだわりまで)、ファッション(私服からユニフォームの着方まで)、所属するチーム(大都市の常勝チームか、地方の弱小チームか)に至るまで、2人を対比させる。笑ってしまうのは、影響を受けた漫画の違い。イチローは『キャプテン』、松井は『ドカベン』なのだそうだ。徹底して両雄の違いにこだわり、これでもかと話題を提供する姿勢には、ある種の感嘆すら覚える。

これだけ違いがあっても、両者は結果的にファンを楽しませているという点では同じだと思う。それでも、本書は、書き出しと締めくくりで、時代はどちらを真のヒーローとして選ぶか、あなたならどちらを選ぶか、ということを一貫して問いかけてくる。一方がいるから、もう一方が引き立つということもある。どちらかとは言わず、両方が対照的であること自体を楽しんでいきたいという回答では、不十分だろうか。

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# 『考えよ! なぜ日本人はリスクを冒さないのか?』
2010/04/18 19:12
考えよ! なぜ日本人はリスクを冒さないのか? イビチャ・オシム 角川oneテーマ21



ワールドカップ南アフリカ大会開催まで、あと60日となった。現在のサッカー日本代表に求められるものとは。そして、1次予選突破への心構えとは。前監督が、提言を行なう。

ワールドカップが近付く中、サッカー本の出版が相次いでいる。そのような状況下で、前監督の言葉が持つ力は、どのようなものだろう。おそらく、本書に書かれいてるメッセージは、「考えて走る」ことと、「日本の独自性を意識する」ことに収斂される。

本書で盛んに繰り返されるのが、「コレクティブ」という言葉だ。これは、サッカーがいかにチームワークを重視したスポーツであるかを体現する。組織的な守備を行い、パスコースを埋める努力がなければいけない。攻撃においては、相手を消耗させるよう考えてパスを回し、自ら走る。これこそがサッカーの醍醐味であると主張される。「考えて走る」ことの大切さがよくわかる。

本書の2番目のテーマは、外から見た日本を意識することだ。日本では当たり前だと思っていたことが、世界では違っていることがわかる。日本が世界の標準と異なる点を意識することで、改善点の発見にも結び付くし、日本の強みに気付くこともある。最も目から鱗だったのが、高校サッカーに関するコメント。海外ではクラブチームがユースを持ち、若手の育成を一様に担っているのに対し、日本は学校の部活動が若手育成に大きな貢献をしている。これは、日本にとっては当たり前のことでも、海外から見れば極めて特殊な現象であるらしい。そしてまた、オシム氏によれば、高校サッカーは若手の育成、人材の発掘の場として、非常に良く機能しているという。「1億2千万人の人間がいながら、サッカーができて速く走れる男を見つけることができないなんてことがなぜ起こりうるのだ」(p. 99)など、ヨーロッパの小国の出身である筆者だからこその発想も興味深い。

繰り返し述べられるのは、自分を信頼することの大切さ。だから、現在の日本代表に対するあからさまな批判は全く為されない。提案も非常に婉曲的だ。本書を読み納得することが、筆者の本望ではないだろう。本書を叩き台にし、議論することこそ、筆者の意図するところだ。筆者は、選手に「考えて走る」ことを要求するのと同じくらい、読者に「考えて話す」ことを訴えかけている。

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# 『4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する』
2010/02/13 12:23
4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する 杉山茂樹 光文社新書 2008年



1993年のJリーグ発足以来、常に人気スポーツであり続けてきたサッカー。日本代表の試合ともなれば、多くのサポーターが集まる。スター選手の話題が尽きることはない。しかし、その反面、戦術、特にフォーメーションについて語られることは案外少ないのではないだろうか。本書は、サッカーの戦術について、フォーメーションの観点から解説した本。「サッカーは戦術でするのもではない」という意見に対し、年間300試合の取材経験を基に、筆者が疑問を呈する。

日本では、サッカーのフォーメーション(グラウンドにどのように選手を配置するか)については、4-4-2や3-5-2など、3列表記を用いることが多い。少なくとも、新聞などのメディアの書き方は、そのようになっている。これは、単に左からDF, MF, FW登録の選手が何人いるかということを示しているに過ぎない。しかし、実際はそれほど単純なものではなく、ポジションの名前以上に、全体として選手をどこに置き、どのような戦術の下に動かすのかが、大変重要になる。また、ある戦術を実現させるには、それに見合ったフォーメーションで試合を運ばなければならない。見事な戦術が実現した時、ダヴィデがゴリアテを倒すような番狂わせが起こる。一見ただの数字の羅列にしか見られないものの中に、とんでもなく奥が深い世界が詰まっているのである。

本書は、サッカーのフォーメーションについて、歴史的な流れを概観しながら検討していく。そして、素晴らしい戦術ゆえの名勝負の紹介が間に挟まれる。名勝負の裏には、名監督の采配がある。そのような事例を知ることで、フォーメーションというものへの見方が変化する。「攻撃は最大の防御」という表現がなぜサッカーにはぴったりと当てはまるのかも、少しわかったような気がする。

ただし、本書は、相手のフォーメーションの崩し方については、それほど取り上げていない。筆者の言う「古典的な」フォーメーションの弱点や崩し方はよくわかる。しかし、反対に現在流行のフォーメーションにだって、弱点があって然るべきだと思うのだが、それについては触れられていない。個人的には、スポーツにおいては、どんな戦術も長所と短所を持っているのだと思うのだが。

ちなみに、本文の前にある、フォーメーションの紹介図は、非常に参考になる。

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