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# 『人の心は読めるか? 本音と誤解の心理学』
2017/09/09 16:55
人の心は読めるか? 本音と誤解の心理学 著/ニコラス・エプリー 訳/波多野理彩子 ハヤカワ文庫 2017年



本書では、まず人間の心を読むという行動について、様々な心理学実験の成果を通して考察が行われる。親しい人のことならよくわかるか、他人のことならともかく自分のことならよくわかっているか、相手の立場に立とうとすると他人の気持ちを想像しやすくなるか…これらの疑問に対する答えは、残念ながらノーである。主に社会心理学の分野で行われてきた実験の成果から考えるに、人間は自分が思っている以上に他者の心理を理解できないもので、直感的な能力は信用できないというのが、筆者の結論だ。この結論に至るまでに紹介されている数々の実験結果は非常に興味深く、知的好奇心を刺激するものばかりだ。しかし、それで終わりにならないのが本書の素晴らしいところだ。このような研究結果を踏まえて、どうすれば他者との行き違いや誤解を減らし、可能な限り円滑なコミュニケーションを行えるのかについて、筆者なりの解決策(あるいは他者とのコミュニケーションで生じやすい傾向を理解して行動する方法)が提示されているのだ。

人間の認知に関する問題に迫っていく内容は純粋に知的刺激に満ちた内容ではあるが、実験心理学という基礎研究の成果を、社会の問題解決に活かそうという意欲に満ちた内容であるという点においても素晴らしいのが本書の特徴だ。臨床心理学と比べて実用性が見えにくく、脳科学と比べてメディアへのインパクトも小さいのが認知心理学や社会心理学の現状であるが、そのような基礎研究も、問題意識次第でこれほどまでに重要なメッセージを発することができるのだということがわかる(もちろん、基礎研究を「役に立つ」という視点で語ろうとすることに対する批判もあるだろうが)。
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# 『ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか』
2016/02/19 17:42
ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか 川合伸幸 講談社現代新書 2015年





人間の攻撃性について、これまでに蓄積されてきた心理学分野の実証的な研究を概観し、人間の本性とは何かを探る本。メディアを通して暴力に触れることの影響、闘争遺伝子の真実、性差から互恵行動に至るまで、人間の攻撃性について様々な考察がめぐらされる。

古くから知られる実験から、最新の脳科学的な手法を用いた研究、進化心理学からの知見まで紹介されていて、これまで心理学の分野が攻撃性についてどのような研究を行ってきたかが概観できる。

人間は最近になって、凶悪事件を引き起こすなど、ますます暴力的になっているという見方がなされることはあるが、筆者の見解では、そのようなデータはなく、むしろ人間の世界は平和な方向に向かっていると考えられるそうだ。まさに、人間性とは何かについて考える材料に満ちた本である。

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# 『「日本人」という、うそ―武士道精神は日本を復活させるか 』
2015/11/27 18:49
「日本人」という、うそ ─武士道精神は日本を復活させるか 山岸俊男 ちくま文庫 2015年



組織による隠蔽や不祥事が生じるたびに言われるのが、「モラルの崩壊」といった言葉である。そして、モラルの復活には、かつての古き良き日本が持っていた心を取り戻すべきであるといった議論が往々にして行われている。現在の教育改革の動向においても、識者の発言にしても、武士道に由来する精神を涵養すべきとする意見は根強い。しかし、それは正しい方策と言えるのだろうか。そのような疑問を原点に、社会心理学の観点から日本が現在抱える問題の所在を明らかにし、将来日本が選択すべき道について考えるのが本書のテーマである。筆者は、心の持ちようを変えるべきだという議論を「精神論」として切り捨て、実証的な研究に基づいた、人間の心の性質に合った方策の必要性を訴える。

日本人は集団主義的で、欧米人は個人主義的であるという、誰もが疑うことのなさそうな前提をも覆す筆者の主張、それを裏付ける実験の数々は非常に興味深い。後半では、日本の思想の原点にある統治者の倫理と、西洋の思想の原点である商人の倫理についても触れている。これら2つの思想が入り乱れて「いいとこどり」される危険についても論じており、単なる社会心理学の枠を超えた日本社会論になっている。

本書のもととなる書籍が発売されたのは実に7年前のことであるが、現状がそれより良くなったとは言い難く、相変わらず精神論で何とか日本を支えようという思考は変わっていないと思う。このような社会状況の中、本書の存在意義は大きい。

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# 『増補 オオカミ少女はいなかった スキャンダラスな心理学』
2015/06/22 21:51
増補 オオカミ少女はいなかった スキャンダラスな心理学 鈴木 光太郎 ちくま文庫 2015年



心理学ほど、実際に研究に携わっている人間とその他の人間との間でイメージの異なる学問も少ないかもしれない。特に、オカルト的なものや神秘主義的なものもまとめて心理学に入れられてしまう風潮は、心理学がどことなく胡散臭いものとなるのに一役買っているように思える。本書は、実験心理学の専門家がこのような心理学について回る怪しいイメージや似非科学的な認識を打破しようと試みたものである。多くの人が1度は耳にしたであろうオオカミ少女の話やサブリミナル効果などの話をめぐって、実際のところ心理学ではどこまでがわかっていて、どこからが実証できていない領域なのか、慎重な考察が行われる。そして、もはや神話化した話題のおかしな点が次々と暴かれていく。その謎解きにも似た試みに、わくわくしてしまう。

本書を読んでいくと随所で感じられるのが、人間の弱さである。ある考えにとらわれてしまい、自説に都合の悪い結果がなかなか見えにくくなってしまったり、自らの権威を守ろうと、データの捏造に走ってしまったりと、心理学の世界に蔓延る神話の裏には、ほとんどの場合人間臭い感情がある。皮肉なことに、人間の思考の癖を探ったり、非社会的な行動の源を探ろうとする学問が、自ら人間の感情の海に溺れてしまい、どこか怪しい学問という印象を人々に抱かせてきてしまったようだ。

筆者が繰り返し述べているように、他人が述べていることを鵜呑みにせずに、原典に当たってみる苦労を厭わず、研究の手法について妥当かどうか常に考えるという地道な作業こそが科学的な営みの基本であり、ひいては学問に携わる者の義務なのであろう。

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# 『リスクにあなたは騙される』
2014/10/08 23:43
リスクにあなたは騙される ダン・ガードナー ハヤカワ文庫 2014年



人間はリスクを正しく理解せず、非合理的な行動に陥りがちである。これが、本書があらゆる事例と心理学的実験を通して伝えようとしていることである。人間は物事を判断するときに、直感的で素早い「腹」と論理的で時間をかけた「頭」の2つを利用するが、現代社会においては「腹」の判断はしばしば間違う。「腹」による判断は人類の進化の中で身につけてきた大切な機能なのだが、現代社会の発展が速すぎてそれに適応できていないからだ。

そんなわけで、原始的な直観で、それに不釣り合いなほど進化した社会を生き抜くには相当な注意を払わなければならない。現代の先進国でテロに遭う可能性は非常に高いと言えるのか? 食品添加物にどれほどの関心を払うべきなのか? 重大な病気になる可能性はいかほどか? 現代に限らず、人はリスクに遭わずに生きることはできない。しかし、リスク判断に「腹」だけを使う習慣を身につけてしまうと、とんでもないことになる。

本書は、メディアの報道、企業の戦略、政府の予算配分など、現代社会がリスク判断に関して抱える問題を鮮やかに描き出す。きちんとした判断根拠を与えずに恐怖だけを増長する一方のメディアは問題ではあるが、感情に訴えかける話を好む人間の性を考えれば、一方的な批判もできない。きっと、筆者の言うように立ち止まって疑ってみるという姿勢こそが何よりも大切なのであろう。また、筆者は盛んに「じっくりと「頭」で考えればわかるものを…」と述べているが、案外我々は「頭」を使えるだけの正確な情報を持っていないのではないだろうかと思った。筆者は「実はこの可能性はこんなに小さいのに」という言い方を多用するが、その計算は「頭」を働かせるだけの情報なしには不可能だ。そう考えると、メディアは判断の根拠となる数値を示す責任があるし、リスクを捉えるための統計を見極める方法や、統計にアクセスするための方法を知るためのリスク教育というようなものも必要なのではないだろうかと思った。

巻末にある、訳者とサイエンスライターによる解説がまた、素晴らしい。本書の魅力を余すところなく伝えてくれる。

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# 『言語の社会心理学 伝えたいことは伝わるのか』
2014/03/21 20:15
言語の社会心理学 伝えたいことは伝わるのか 岡本真一郎 中公新書 2013年



言語を用いたコミュニケーションについて、語用論や心理学の立場から論じた本。非言語コミュニケーションや敬語の使用など、話題は多岐にわたる。

伝えたいと意図していることが、いつも伝わるとは限らない。では、なぜコミュニケーションに失敗するのか。その原因について多角的に論じているのが本書である。タイトルの通り、一応はことばの社会心理学をうたっているのだが、実際には言語学やコミュニケーションの理論にも触れながら、言語を用いたコミュニケーションの本質に迫ろうという内容である。敬語や皮肉など、言語学的な研究が多くありそうな分野でも、コミュニケーション学や心理学の領域からの分析が加わるだけで、違った視点を得られる。特に、伝える方は実際よりも相手に自分の意図が伝わっていると思いがちであるという実験結果は興味深い。

著者は研究で得られた成果をミスコミュニケーションの問題に応用しようという姿勢が強く、心理学的な研究の応用可能性についても考えさせられた。

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# 『回避性愛着障害』
2014/01/14 21:03
回避性愛着障害 岡田尊司 光文社新書 2013年



他者との親密な関係を避けたり、責任が重い仕事を苦手とする人々が増えているという。筆者はその原因を回避性愛着にあるとし、その問題点について考察していく。

人間が他者との関係を築くうえで重要な役割を担う愛着は、ボウルビィの研究などから、いくつかのタイプに分類されている。その中で、養育者との関係がよそよそしい関係になっている場合を回避型と呼んでいる。現在、その回避型は増加傾向にあり、人間関係の問題に留まらず、少子化などの社会問題の根幹になっていると、筆者は分析する。

本書の中で触れられる具体的な記述を見て、身近にいる回避型の人を想像した読者も多いのではないかと思う。確かに、回避型の人々が増えることは、社会問題と言えそうだ。しかし、愛着の問題で難しいのは、愛着の問題は、母親の養育に関する問題と切っても切れないつながりがある点だ。筆者は、愛着の問題は幼少時における母親との関係が重要であると述べていくわけだが、特に経済状況がよくなければ、母親が働きに出なければならない場面は多い。子育てに不得手な母親だっているはずだ。それでも、母親の働きかけが重要であると言い過ぎてしまうと、今度は母親の精神的負担があまりにも大きくなるのではないだろうか。根底にある状況を考慮せずに愛着の問題を語ると、また別の問題が出てきてしまう。愛着の問題とどう向き合うのか。これは、生半可な問題ではない。

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# 『錯覚学-知覚の謎を解く』
2013/01/02 17:55
錯覚学-知覚の謎を解く 一川誠 集英社新書 2012年



世の中に溢れる錯覚。それは、実験室で扱われるものだけではなく、また、面白いものだけでもない。錯覚は、身の周りに溢れるものであるし、社会的な文脈で捉えなければならないものである。本書を読んでいて、そのように感じざるを得なかった。

確かに、錯視の現象自体は面白い。同じ長さの線分がどう見ても長さが違うように見えたり、同じ濃さの四角形が違う濃さに見えてしまったりと、錯視に関わる図形や画像を見ていると、びっくりするような体験ができる。

しかし、著者が繰り返し述べているように、現代人が身に付けた錯視は、これまでの進化の過程ではむしろ適応的であったが、高度に技術が発達した現代においては、事故を引き起こす可能性がある。例えば、錯視が原因で交通事故が起こることは十分考えられる。また、スポーツの判定など、時に国際問題にもなりかねない場面など、錯視の影響を無視できない状況は多々ある。

単に現象を紹介するだけでなく、錯視が持つ社会的意味合いについての考察も充実しているのが、本書のウリだ。本書を通して、人間の認知について考える一歩としたい。

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# 『クリティカルシンキング 入門篇 あなたの思考をガイドする40の原則』
2011/01/31 13:28
クリティカルシンキング 入門篇 あなたの思考をガイドする40の原則 E.B.ゼックミスタ,J.E.ジョンソン著 宮元博章・道田泰司・谷口高士・菊池聡訳 北大路書房 1996年



世の中には、案外変な言い分がまかり通っているものだ。そして、人はある時は論点のおかしな部分にすぐに気付くにも関わらず、ある時は全く気付かない。間違った思考をしてしまうと、自分にとってのリスクを見逃してしまったり、偏見を持って人を判断してしまったりと、望ましくないことにつながる恐れがある。本書は、卑近な例から批判的思考(クリティカル・シンキング)について学び、実践できるようになることを目指す人に向けた、批判的思考入門の書である。

世の中には、「~な人の思考法」などといった本が溢れているように思う。ところが、そのような本を読んでも、いざ自分の思考法を改善したり、素晴らしい思考力を持った人の方法を取り入れようとしたりした時に、思いのほかできないという経験を持った方はいないだろうか。おそらく、そのような場合、思考の結果やプロセスはよくわかっても、そもそもなぜそのような考え方が良いのか、間違っているのかについて、納得のいく説明が為されていないのではないだろうか。

本書は、ある具体的な場面でどうすべきかといったような、非常に具体的な問いに対する答えを用意した本ではない。その代わり、原因の推測など汎用性の高い思考法の習得を目指した内容になっている。本書で取り上げられた事項を身に付けようとすることで、地に足のついた思考が鍛えられていくように思う。加えて、本書は科学的思考の練習の書という特徴も有している。正しい思考、鋭い思考の根底にある規則がわかると、それを広く活用できるようになる。とはいっても、具体例が身近なものでなければ、知識の活用は難しい。本書はその点も徹底していて、日常的な話題からいつの間にか批判的思考の基礎へと導かれていく構成になっている。

もう1点、本書の優れた点を挙げるとすれば、人間が陥りやすい間違った思考の例が豊富に収録されていることであろう。これらの例は、心理学的な知見の積み重ねの上に成り立ったものである。自分の陥りやすい思考の穴を意識することで、思考する力は格段に上がるだろうと思う。

したがって、本書は本当に幅広い人にお薦めできる本である。また、下手なビジネス書よりも役立つ。むしろ、書店のビジネス書のコーナーに置いても良いくらいの本だ。翻訳は、真の意味での「翻訳」を目指し、必要に応じて具体例を日本人にとって馴染みのある事例に書き換えているため、時に原典が外国語ということを忘れてしまう。

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# 『ことばと思考』
2010/12/03 18:17
ことばと思考 今井むつみ 岩波新書 2010年



人間は、ことばによって世界を切り分けているという見方がある。また、話すことばが違えば、思考の様式も異なるという主張もある。これらの見解は本当と言えるのだろうか。ことばと思考はどのよう関係にあるのか。このような問いの答えを探ろうとするのが、本書である。

本書の結論からすれば、ことばによって思考の様式が異なるのか、そして、ことばは人間の思考を決定するのかという問いに対する答えは、「はっきりしない」ということである。回答として満足がいくものと捉えるかは人によって異なるであろう。しかし、本書がそのような結論に至るまでの過程では、非常に興味深い事例の数々が紹介されている。適宜引用される心理学実験は、なるほどと思わせるような結果を示すものだ。色の知覚、動作の知覚といった、どちらかというと個別言語の差異に起因するようなトピックから、虚偽記憶など、ことばという存在が自体が人間の思考に影響を与えることを物語るトピックまであり、好奇心を刺激する。

また、本書が持つ最大の魅力は、発達的な視点であろう。子どもはことばを獲得していく過程で、思考を発達させ、さらに日常触れる言語の思考様式をも獲得していくのだという。単に、異なる言語を話す人々は思考も異なるのかという見方だけでなく、人間がことばを得る前と後でどんな変化が生じるのかといった見方も、ことばと思考の関係を考えていく上で効果的であるということがよくわかる。

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