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# 『ルポ トランプ王国2』
2020/03/25 13:21
ルポ トランプ王国2 金成隆一 岩波新書 2019年



同著者の前作に続き、「なぜ人々はトランプを支持したのか?」という疑問を追う取材の旅をまとめたもの。選挙前の取材からは4年の年月が経過し、再び大統領選の行方が注目される時期に来ている。時の経過によって、当時のトランプ支持者は引き続き支持者であるのか、それとも支持を離れようという心情にあるのか。

前著と同様、取材によって浮かび上がってくるのは、かつては自分の身一つで努力すれば実現できたアメリカンドリームが夢のようになってしまった現在を憂える白人労働者の姿だ。再びトランプを支持するという人物もいれば、もう投票しないと言っている人物もいる。どちらにしろ、現在のアメリカ白人労働者が置かれた立場が、アメリカ社会の分断に大きな影響を与えていることは確かだ。

また、前回の取材ではあまり大きく扱われなかった支持層についても、今回は取材が及んでいる。それは、戦争の帰還兵と、バイブルベルトの住民だ。彼らが取材に応えて話す様子から、一筋縄では理解できないアメリカ社会の複雑さが露になる。

何を自己責任とするか、何をもって平等・公平とするのか、どうすれば希望を持って生きられる世の中が実現するのか。アメリカ大統領選という1つの現象から、アメリカに留まらない様々な普遍的な問題があぶりだされていく。新型コロナウイルスの影響で、経済の先行きがますます不透明になっている今、雇用や労働、教育、健康の問題をめぐって社会の分断が深まらないよう、これらの問題を丁寧に考えていくためのヒントとしても、一読に値するのではないだろうか。
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# 『神様のファインダー 元米従軍カメラマンの遺産』
2018/02/11 20:58
神様のファインダー 元米従軍カメラマンの遺産 写真:ジョー・オダネル、編著:坂井貴美子 フォレストブックス 2017年



終戦間もない日本に降り立った従軍カメラマンのジョー・オダネル氏は、広島・長崎の風景を撮影する中で、戦後の惨状を目撃し、アメリカの原爆投下を疑問視するようになっていった。悲惨な風景を2度と思い出したくないという思いから、撮影した写真を封印していたオダネル氏だったが、後に写真を公開し、反原爆の思いを伝える活動を続けていくのだった。
本書は、そんなオダネル氏の活動を彼の写真とともに振り返り、記録に残そうという試みのもと書かれた。オダネル氏は2007年8月9日に亡くなった。長崎への原爆投下の日と重なるところに、運命すら感じてしまう。アメリカ人として反原爆を訴え続けた人物として、オダネル氏が果たした役割は大きい。そんな彼の偉業をたたえて、死後10年の日に発売された本書を読むのは意義深いのではないだろうか。

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# 『23区大逆転』
2017/10/08 11:37
23区大逆転 池田利道 NHK出版新書 2017年



かなりの話題となった『23区格差』の著者による、新たな東京23区に関する分析を行った本。東京の23区に人口の集中が起こっている現在、新たな動きが着々と進んでいるという。かつてのような西部山の手地域と東部地域の間にあった格差が縮まったり、ブランド感のなかった区の住民が自らが暮らす地域に誇りを持ち始めたりと、少しずつだが確実に、変化は起きている。

本書は、暮らすという視点や働くという視点から改めて23区の実態を見直し、それぞれの区が抱える問題と、その問題を乗り越えるシナリオについて述べていく。そして、最終的に行き着くところは、間もなく迎えることになる東京オリンピック・パラリンピックを機に、いかにレガシーと言えるだけのものを残せるかという戦略についての話題だ。コンセプトなきオリンピックに向けて、漠然とした取り組みをしながら経済効果を夢見ているようでは、先が思いやられる。

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# 『フードバンクという挑戦 貧困と飽食のあいだで』
2017/10/08 11:11
フードバンクという挑戦 貧困と飽食のあいだで 大原悦子 岩波現代文庫 2016年



まだ十分に食べられるにもかかわらず捨てられている食料を、必要としている人のもとへと届ける活動が、フードバンクである。本書は、アメリカで誕生したフードバンクの概要、それを日本で普及させるべく尽力した2HJの活動を紹介し、さらにはそこから見えてくる日本の貧困問題、NPOという組織のあり方、ボランティア活動のあるべき姿と、多岐にわたる話題を提供する。

「食べ物を必要としている人のもとへ」という活動が持つ問題意識や抱えている問題点を見ていくにつれて、フードバンクが乗り越えようとする問題は、決して食の問題だけではないことがわかる。そして、バックにとてつもなく大きな、解決が難しい問題があっても、とにかく現場でできることをしようとフードバンクの活動に携わる人々の姿を知ると、勇気が湧いてくる。

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# 『ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く』
2017/09/09 16:27
ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く 金成隆一 岩波新書 2017年



昨年の11月に誕生した新アメリカ大統領、トランプ氏。選挙前から彼の言動は世界の注目を集め、世の多くの人々の予想に反して大統領に就任した。本書は、多くの人が抱えたであろう疑問「なぜトランプ氏は支持されるのか」に対する1つの答えを提示する。

筆者がトランプ支持者の多い地域に精力的に赴き、取材を重ねていった結果わかったのは、トランプ支持者は、普通に真面目に働きながらも暮らし一向に良くならず、将来のへの不安感を抱く、ごく一般的な労働者であった。トランプ氏が繰り返す侮蔑的な発言に対して心から賛同するかというと、そんなわけではない。ただ、トランプ氏は自己資金で選挙戦に臨み、富裕層ではなく自分たちミドルクラスに関心を向け、何かを変えてくれるのではないかという期待感から、これまで当たり前のように支持してきた民主党を捨てトランプ支持へと鞍替えしてきた人々だ。グローバル化、中国やインド、ラテンアメリカの台頭が進む中で、かつてのように学歴がなくても真面目に働いていれば家族旅行を毎年するくらいの給料は当然のようにもらえるというアメリカンドリームを信じることができた世代とは異なり、将来が見えにくい生活に不安を覚える人々は、やり場のない不安を解消してくれる期待を込めて、トランプに投票した。

本書でも繰り返されていることだが、このような事態は対岸の火事と言える問題ではなく、日本、ひいては先進国全体が抱える根の深い問題に起因する。グローバル化に加えて、かつての発展途上国の台頭による労働集約型の雇用の減少、先進国の中流家庭の賃金は伸びず、先行き不透明な生活を余儀なくされている。トランプ氏の発言を批判し、あのような大統領を当選させたアメリカは何だと言うことは簡単だが、それで終わらせていてはいけない。アメリカで起こっている問題は、そのまま日本にも当てはまる部分が多く、差別や暴力も厭わない権威主義的な政治指導者の当選は、将来の日本にも起こり得ることである。アメリカを通して先進国は何を学び、何を考えていくのか。そのようなことが問われているように思えてならない。

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# 『ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?―キャリア思考と自己責任の罠 』
2017/08/23 11:45
ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?―キャリア思考と自己責任の罠 福島 創太 ちくま新書 2017年



「ゆとり世代」というくくりが登場してからそれなりの時が経過し、その年代の先頭は30代へと突入しつつある。何かとこれまでの人間とは異なる人々という印象を持たれ、「ゆとり」というレッテルを貼られてきた彼らは、就職・転職という人生の一大選択においても、明らかにそれまでの世代とは異なった思考や行動を示しているようだ。本書は、これまでの日本型雇用慣行に従わず、転職を繰り返していく「ゆとり世代」の若者のインタビューからその思考に迫り、その背景にある社会の仕組みに対する批判的な考察を行い、更には現状を打破するための案を提示する。

筆者が最も危惧しているのが、現代の日本社会の様々な側面に見られる分断である。世代間の分断、富裕層と貧困層の分断など、「あの人たちは自分とは違う」という感情に結び付きやすい状況のことである。本書に登場しインタビューを受ける「ゆとり世代」の転職者の語りも同様である。とても共感できるという見方から、けしからんという見方までがあろう。それでも、「やりたいこと」を求めたり、「ここではないどこか」を見つけたかったりして転職を繰り返す若者の行動に社会が影響しているという側面を無視した過大な自己責任論を展開しているだけでは、今後の日本に未来はないのではないかと筆者は警鐘を鳴らす。

本書を読んでいくと、若者の転職問題は根の深い問題であり、すぐには解決できないほどに大きな問題ではあるが、とにかく考えること、気付くことが重要なのではないかと思うようになる。

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# 『東京郊外の生存競争が始まった! 静かな住宅地から仕事と娯楽のある都市へ』
2017/07/27 20:49
東京郊外の生存競争が始まった! 静かな住宅地から仕事と娯楽のある都市へ 三浦展 光文社新書 2016年



東京23区への一極集中が話題となる現代、かつてのニュータウンを中心とした首都圏郊外は人口の減少や高齢化といった問題に直面している。本書のデータからもその事実は如実に表れていて、団塊ジュニアの定住率の低さが問題となっている。本書は、まず年収や性別、正社員・非正社員といった指標を基にして、若者が住みたいと思う街の特色を探り、続いて郊外が生き残り、より魅力的な街へと変貌していくための策を探る。

本書を読むと、都心一極集中の時代であっても、郊外の魅力は存在するということを改めて知ることができる。究極的なところでは、筆者は日本の都市計画はほとんど成功していないという意見である。かつて自ら「ファスト風土化」と名付けた、日本の都市がどこも皆同じような面白みのない街へと変わっていく現象を指摘した筆者らしい見方である。在宅勤務が広がるなど、働き方改革が進み、現代ブームの「職住近接」または「食住近接」とも言える暮らし方を、郊外にも持ち込む環境が整えば、それが郊外復活の鍵になるのではないか。そう思えてくる。

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# 『沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿』
2017/01/09 18:22
沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿 首都圏鉄道路線研究会 SB新書 2016年



流行りの格差ものだが、本書が扱うのは題名の通り首都圏鉄道路線の格差である。具体的には、利用者数や収益、ブランド感や沿線の発展度合いなどを指標に、首都圏の主要路線間のランキングを作成し、各路線に評価を下そうというものである。

多くの指標から分析してみると、一般的なイメージと合致した傾向から意外な傾向まで、路線の様々な顔を知ることができる。沿線のブランド感では東急が圧倒という図式は何となく想像のつく一般的なイメージであろうが、通勤通学時の混雑率や遅延発生頻度、沿線の開発状況など、少し異なった視点から見てみることで、また新たな魅力を持った路線や、自分に適した路線を発見することもできる。格差があるからこそ、自分に合ったものは何かを選択する余地が生まれるとも言える。もちろん、そもそも自らが暮らす環境を選ぶための選択肢が多い人間と少ない人間がいることは事実であり、地域や経済の格差を見て見ぬ振りするのは決して望ましいわけではないが、そのような議論を行うためにも、まずは鉄道沿線における格差を知っておくのは悪いことではない。また、自分が沿線に住んでいる路線の新たな魅力を発見することにもつながるのではないだろうか。

そうした視点で本書を読むと、新たな発見がいっぱいあって面白い。

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# 『難民高校生─絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル 』
2017/01/04 20:44
難民高校生─絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル  仁藤 夢乃 ちくま文庫 2016年



家庭にも学校にも居場所がなく、渋谷を彷徨う中高時代を過ごした筆者が、やがて社会の中に居場所を見出し、自らと同じような境遇を経験する若者に居場所を作る活動に至るまでの半生を綴った本。

高校時代の筆者の周りには、居場所をなくして渋谷の街を徘徊する若者が多かった。その多くは、劣悪な家庭環境などのせいで、高校中退、虐待、妊娠、中絶、DV、リストカット、自殺未遂といった問題を抱えていた。そのような人々と日々を過ごしながらも、どこか空虚な気持ちでいた筆者は、高校中退後に高認取得を目指す予備校に通い、そこでの授業やゼミでの出会いを通して徐々に大人への信頼と自己評価を回復していく。大学進学後、目標を失いかけていた筆者に希望を与えたのはボランティア活動だった。そして、在学中に起きた東日本大震災。現地の若者との交流を通して、彼らの「何かしたい」という思いに触れることで、筆者は被災地域の若者、大人、企業を巻き込んでの復興支援立ち上げに関わる。その活動を通して、地域に居場所をなくしていた高校生が、やがて地元での信頼を勝ち得るまでになった。まさに過去の筆者と同じような境遇の若者が、社会とのつながりを見出していく過程を作り出すことができたのだ。

筆者が本書を著したきっかけは、若者から大人へと向かいつつある自分が、かつての若者としての記憶をしっかりと残っている間に、問題を抱えた若者の姿を伝えたかったということにあるそうだ。筆者は、こうした若者と大人との間に大きな断絶があることに問題意識を持っており、「私だから」こそ、普段彼らがうまく言葉にできない内面を伝えられると思ったそうだ。この「私だから」という言葉の持つ意味は大きい。多くの人にとって「私だけに」できることなど、限られていても、各々がその時その時を悩みながら生きてきた人生があるのだから、「私だから」できることならある。それを通して社会とつながることができれば、きっと居場所が見つけられる。

若者が抱える悲痛な叫びは、時に声という形ではなく、ファッションや態度、行動に現れる。それを理解不能という言葉で片付けたり、勝手に心情を理解した気にならずに、いかに個々の人間に寄り添って考えられるかが、大人に求められていると、筆者は言う。

なぜか大人になるにつれて忘れていく、かつて自分が若者の時に感じた生きづらさや大人への不満を、忘れずにいられる大人でありたいと、私自身も思ったものだ。しかし、気付けば大人の論理で物事を見て語る自分がいる。そんな自分に、若者として感じていた怒りや悩みや不満を強烈に思い出すきっかけを与えてくれた本だと思う。

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# 『ポエムに万歳!』
2016/10/09 09:20
ポエムに万歳! 小田嶋隆 新潮文庫 2016年



実は、表題となっている「ポエム」に関する論考は、第1章の半分に過ぎず、残りは別の内容のコラムをまとめたものである。「ポエム」とは、身の回りに溢れる、恥ずかしげもなく自分語りに没頭したフレーズのことである。筆者は、それが蔓延する現代日本のおかしさについて語っていくのだ。実際のところ、筆者自身が指摘しているように、「ポエム」と詩の境界は非常に曖昧である。広告に用いられるフレーズや、J-POPの歌詞でさえ、「ポエム」になりえる。あまり正確な定義がなされていない言葉を利用して語るというのもちょっと…という気はするが、言いたいことはわかる。過剰な感情表現や感動を狙ったような言葉の数々には、何か胡散臭いものを感じることはあるものだ。この異常なまでの感情的な自分語りについては、かつてテレビ番組が居酒屋甲子園の様子を映した映像とともに、ポエム化する社会を異様なものとして報じていた。バイトに「成長」や「仲間」を見出すことで、ブラックバイトと言えるような現状をあえて肯定するような、異様な雰囲気を感じたのを覚えている。

ポエム以外の論考では、ネットの発達による、嫉妬が表立って渦巻くようになった社会や、事実無根の誹謗中傷が与える影響の大きさ、食品偽装が生じる原因などがある。筆者本人が言うように、コラムに求められる、一般とはちょっと違った視点に満ちた論考には、なるほどと思わされる。ポエムの論考が1冊になっていると勘違いして購入してしまったのだが、むしろポエム以外の論考で十分楽しませてもらった。

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