忍者ブログ
# [PR]
2024/04/29 22:47
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


CATEGORY [ ]
pagetop
# 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』
2018/08/12 23:50
AI vs. 教科書が読めない子どもたち 新井紀子 東洋経済新報社 2018年



人工知能が世界的に注目され、その開発に世界中のIT企業はしのぎを削っている。人工知能によって便利になった世の中を想像する楽観論がある一方で、AIが人間の力を超えるのではないかと恐れられているのも事実だ。今、AIに何ができるところまで研究や実用化が進んでいるのか。そして人類の未来に起こる問題は何か。

筆者は、AIは言葉の意味を理解しているわけではないのだから、「シンギュラリティ」など到来することはないと主張する。それは筆者が中心となって行っている「東ロボくん」プロジェクト(AIの東大合格を目指すプロジェクト)から明らかだという。AIは文章読解で大苦戦している。これが本書の前半部分の概要だ。

しかし、筆者はAI楽観論者でもない。よく、AIが活躍する社会では人間にしかできない能力を発揮することが大事だと言われている。だが、筆者の研究チームが行った研究の結果からは、ほんの一握りを除いて、日本人の読解力がAIレベル、もしくはそれにすら達していないということが判明したのだ。しかも、個々の読解力の差を十分に説明できるだけの因子は未だ発見されておらず、危機感を持つ教育現場で検証中だという。

本書を読んでいると、AI技術の基本的なことがわかるのはもちろん、教育や経済など、様々な問題に対する考えや意見が頭の中を目まぐるしく駆け巡った。それだけ考えさせられる刺激的な1冊だった。
PR

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識』
2018/08/12 23:07
いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識 荻上チキ PHP新書 2018年



「ストップいじめ!ナビ」の代表理事である筆者が、いじめ問題について、これまで蓄積されてきた知見をデータに基づいて示し、いじめ防止において何が大切か述べた本。「いじめの深刻化→道徳教育の充実」という図式は正しいか、いじめが起こりやすい場所はどこか、いかなる対策が有効かなど、単なる感情論に終始するのではなく、データから言えることを考えていく。

特に興味深いのが、「ご機嫌な教室」という概念だ。いじめは多くの場合、児童・生徒がストレスを感じる環境下で起こるという。それならば、ストレス要因を除き、児童・生徒が心地よく過ごせる環境を整備することがいじめの抑制につながるということになるのだ。

筆者が主張している、市民社会において許されるかという視点は非常に大事である。いじめを、単なるふざけ合いやからかいと思わず、将来的にハラスメントやヘイトスピーチのような人権侵害にもつながる恐れがある問題として考えれば、これは学校教育の場に留まらない重要な問題だ。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『アクティブラーニング 学校教育の理想と現実』
2018/06/09 17:41
アクティブラーニング 学校教育の理想と現実 小針誠 講談社現代新書 2018年



2020年の教育改革において注目すべきキーワードが、「主体的・対話的で深い学び」である。いわゆる「アクティブラーニング」と称される授業は、一方的な知識の受け渡しに終始する授業ではなく、学び手自身が活動し、知識を活用するという視点を重視した授業である。この教育法は、すでに教育に携わる人々のみならず、世の中の大きな注目を集めている。そんなアクティブラーニング礼賛社会に対して警鐘を鳴らすのが本書である。では、何が問題か。

筆者は、アクティブラーニングの特徴とされる、コミュニケーションを中心におく授業スタイルが抱える問題点を指摘する。グループ活動による学び合いを重視した学習で、コミュニケーション弱者が取り残されてしまわないか。ただ活動させることで、表層的な学びしかできない結果にならないか。本当の意味での深い学びに到達した生徒が、現代の社会の在り方に対して批判的な結論に到達した場合に、社会は寛容でいられるか。

どんな教育方法であっても、利点と欠点はあるはずだ。アクティブラーニングを歴史的な観点から分析する本書を読むと、学力観と教育法に関する議論は常に起こってきたものであり、教育改革のたびに振り子が振れては振り戻されてきたということがよくわかる。

現場で教育に当たる者としては、絶えず自分の教育法について批判的な眼で考えるということを忘れずに、日々の教育に勤しむ。結論めいたこととなると、それくらいしかないのだろうか。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『女子高生 制服路上観察』
2018/03/25 16:02
女子高生 制服路上観察 佐野勝彦 光文社新書 2017年



筆者は、学生服メーカーの研究職に就いている。学生服の世界は意外と奥が深く、学校、メーカー、生徒の3者の思惑がダイナミックに影響し合って成り立っている。学校側は生徒の着崩しを憂慮し、メーカーは1校の採用が命運を分けるというフィールドで努力し、生徒は生徒なりの思考とルールで制服を着こなす。これらがまったくうまく噛み合わないとき、3者ともに残念な結果になる。そのような最悪な事態を防ぐべく、筆者は路上で高校生の制服の着こなしを観察し、果敢にインタビューし、研究し続けてきた。その成果がまとめられたのが本書である。

教師や保護者の立場からすれば、制服の着崩しに対して嘆きたくなることもある。メーカーだって、せっかくのデザインが活かされない着方を見れば、悲しくなるであろう。しかし、その裏に隠れた生徒側の心情を丁寧に調査していくと、興味深い現象がわかってくる。例えば、なぜスカートは短い方が好まれるのか。柄はチェック柄が好まれるのか。生の声を聞き、観察を繰り返すことで、筆者はある答えにたどり着いた。

教育業界に関わる人間が読んでも面白く、高校生の服飾について関心がある人間が読んでも発見があり、若者文化について考えたい人間にも一読の価値がある。本書を読めば、普段何気なく目にしていた制服姿の高校生に対する見方が変わる。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『高大接続改革――変わる入試と教育システム』
2017/08/16 21:49
高大接続改革――変わる入試と教育システム 山内太地・本間正人 ちくま新書 2016年



2020年度から大学入試が大きく変わることを受け、「アクティブラーニング」という言葉が様々な場で使われるようになった。本書は、保護者、教師などが教育改革の動向を理解し、その中でどのような教育を行っていけば良いのかというヒントを与えてくれるものである。

まさに大転換を迎える2020年教育改革だが、現実には現中3生からその影響を色濃く反映した学校教育を受けていくことになる。そして、現小5生からは完全に改革された中等教育を受け、本人が望めば大学へと進学する。その年代の子どもと多少たりとも関わりのある人にとっては、気が気でないかもしれない。本書は、言葉だけが独り歩きしている感のある「アクティブラーニング」について、それが必要になっている背景、家庭でできること、アクティブラーニングの思想を取り入れている学校の事例などを紹介し、心の準備ができるようにしてくれる。

実のところ、アクティブラーニングを基本とする教育は、文化資本や金銭に恵まれた家庭の子どもと、そうでない子どもの格差を助長しかねない可能性を秘めた怖さを持っているそうだ。それでも、子育てをしている家庭にとっては、来るべき時代に対して可能な限りの準備をしておきたいというのが本音であろう。本書を読むと、決して身構え過ぎず、人間本来の学びたいという気持ちを尊重し、自分たちだからこそできることを、という視点を忘れずに果敢に立ち向かう姿勢こそが大切だと思えてくる。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『尊敬されない教師』
2017/07/31 17:15
尊敬されない教師 諏訪哲二 ベスト新書 2016年



日本語では、言葉のうえでは教師に対しては尊敬語を使うようになっているが、実際の気持ちとして、教師に尊敬の意を持つ者は少ないのではないだろうか。筆者が教師として過ごしながら見てきたのは、まさに教師が尊敬されなくなるに至っていく歴史そのものだった。筆者が自らの高校教員としての日々を振り返りながら、教師が尊敬されなくなった原因や、そのような時代に必要となる教員としての心得、社会が持つべき視点などについて縦横無尽に語ったのが本書である。

筆者が高校教員となったのは、ちょうど団塊世代が高校へ入学してくる時期であった。その後の高度経済成長の時期を経て、日本は経済的な観点(すなわち個人の利益)から物事を見るという習慣が強くなり、その影響を教育も免れることができなかった。学校と家庭・生徒との関係は、ちょうど商取引上の対等な契約を結んだような関係となり、教育が社会から贈与されるものであるという考えは消え失せた。そこに教師が尊敬されなくなった理由があり、生徒や家庭は教師や学校に対して意見することが増えていったのである。教育の機能不全と思えるような事態も急増していった背景もここにある。

筆者は、教師が特別優秀な人間がなる職業ではないと認めたうえで、それでも現場の教師が極端にレベルが低いとは思っていない。逆に、教師に対して批判的な言説には痛快とも思える反論を行っている。大した権限を世の中から与えられてもいないのに、責任を追及するときだけ教師がやり玉にあがるという見方など、なるほどと思える。その他にも教師として必要な処世術や考え方など、参考になることは多い。「尊敬されない教師」としてどう生きていけば良いのか、考える手立てを得られる書となるであろう。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『大学受験勉強法 受かるのはどっち?』
2017/05/28 18:01
大学受験勉強法 受かるのはどっち? 笠見未央 角川書店 2016年



大学受験は、それを経験する者にとっては、とても大きく感情を揺さぶるものである。受験生時代の苦労や喜び、不安、挫折感に、受験後も付いてまわる学歴社会など、生々しい感情とともに語られることが多い。それだけに、カリスマ性を持った教師がもてはやされ、大逆転物語から大きなカタルシスを得る受験生や大人がいて、受かる勉強法や教育法は大々的に取り上げられる。

しかし、ここで1度冷静な目で受験勉強法を見つめ直してみるのも良いのではないか。大学受験に関しては、様々なところで別々の勉強法が勧められていることが多く、迷う受験生や指導者がいるのは容易に考えられる。そこで、本書のように時に両極端とも言える勉強法を示し、自分のタイプや目標に応じて優れた点を取捨選択していく助けになる本の存在意義がある。スケジュールの立て方や各教科の勉強法といったオーソドックスな疑問から、受験生はTwitterをやっても良いのか、逆転合格に才能の差は影響するかなど、受験生としてはぜひ知りたいと思える論点が満載である。

一部、筆者のきわめて個人的な体験から勝負の判定が決められている、惜しいとしか言いようのない項目もあるが、多くは参考になる分析がなされている。また、最新の参考書や受験勉強法の研究に余念のない人たちの議論なので、現代の受験生にとって非常に有益な情報に富んでいる。勉強に迷ったら、一読の価値ある本であろう。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『東京23区教育格差』
2016/12/26 13:06
東京23区教育格差 昼間たかし・鈴木士郎 マイクロマガジン社 2016年



近年一気に火が付いた東京23区の格差議論の中で、教育の分野に絞った分析をしたのが本書である。筆者は語る。本当なら、出身地域によって教育水準に格差があったり、教育環境に差があったりするのは問題であるが、先行きの見えにくい世の中で子育てする者にとって、子どもの教育は待ったなしの問題であると。だからこそ、自分の子どもを育てるのに適した環境を見つけるためにも、23区の現状について理解しておこうというのが、本書がそのそも持っているコンセプトなのだ。だから、本書を読んで徒に踊らされるのも、地域の格差を公表し、よりよい地域を選択することを勧めるとはけしからんと怒るのも、執筆の意図に反した行動であろう。もちろん、本書には登場してこない東京多摩地区、神奈川県、埼玉県、千葉県に居住するという選択だってあり得るのだ。結局のところ、保護者がどんな子育てをしたいと思うかという軸が重要なのだと思うばかりだ。

結構な数の取材に基づいている本書は、教育熱心な地域に潜む危険さと、教育環境として厳しいと言われる地域独自の努力を同時に取り上げ、判断材料としてバランスを保てるようにしている。大学進学までのルート別シミュレーションから、どこで節約し、どこでお金をかけるかについて考えられるようなヒントも多く提示されている。

一般的に言われる「住みたい街」の人気と、教育環境の良さは必ずしも比例するわけではないのがよくわかる。様々なメディアを通して、どこに住むかが重要な選択だと聞かされる今、教育という軸も加えて居住地を考えることで、また新たな街選びができることだろう。


CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?』
2016/09/03 22:52
女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか? 村松秀 講談社現代新書 2016年



NHKのゆるい科学番組「すイエんサー」は、アイドル・女優の女子中高生から成る「すイエんサーガールズ」に、日常のふとした疑問を解決してもらうという番組である。収録時間に制限はなく、台本もない、徹底的に考え抜いてもらうことを大事にした構成になっている。そんな番組でいつの間にか名物となったのが、難関大学の学生とすイエんサーガールズが知力を競い合うガチンコバトル、「知力の格闘技!」である。紙で作った橋の強度や、紙で作ったタワーの高さを競い合うといった勝負で、すイエんサーガールズは東大や京大といった国内最高学府の学生に勝利するという大番狂わせを演じてきた。本書は、これまで「すイエんサー」で扱ってきた問題を振り返りながら、知力とは何かという問いに迫るのものである。

「すイエんサー」で扱う問題の多くは、時にどうでもよいと言いたくなるが、しかし気になる問題である。例えば、「バースデー・ケーキのろうそくの火をひと吹きで消すにはどうすればよいか」や、「どうして足の小指をよくぶつけるのか」などだ。このような問いにも科学的な答えはあるもので、すイエんサーガールズは毎週必死でその答えに向かって頭を働かせるのだ。筆者は、それを「グルグル思考」と定義し、物事を柔軟に考える秘訣だと言う。

難関大学の学生との対決を見るにしかり。その思考力は確実に力を発揮する。すイエんサーガールズが東大や京大の学生相手の勝負に勝っていく姿はなかなか爽快であり、彼女らの柔軟でかつ優れた思考に驚かされるばかりである。ここから筆者は、たった1つの答えを求めたり、知識を覚えさせるだけに偏りがちな現代の教育の問題点にも言及していく。

もちろん、これらの勝負の結果を受けて、難関大学の教育が間違っていると言うことはできないであろう。ただ、組織の中に多様な思考があった方が、組織としてプラスなことが多いのではということは思った。すイエんサーガールズが大切にしているのは、とにかく手を動かして思考錯誤を繰り返すということ。つい理論面だけで動こうとしてしまう難関大生のやり方とは対照的である。きっと、両者の思考がうまく融合した先に、独創的で希望に満ちた知性があるのではないかと思う。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
# 『早慶MARCH 大学ブランド大激変』
2016/08/28 12:40
早慶MARCH 大学ブランド大激変 小林哲夫 朝日新書 2016年



首都圏の難関大学を括る用語としてすっかり定着している、「早慶」と「MARCH」。「MARCH」の呼び名は1960年代に生まれたもので、まだまだ年配の方々には馴染みがないかもしれないが、大学受験の経験者の間では徐々に常識にまでなりつつあるように思う。首都圏の進学校では早慶やMARCHにそれだけ合格者を出すかということが、学校の実力を表す指標となっている部分もある。また、早慶MARCHレベル以上の大学に受かって一定レベルの学歴を手に入れたいと望み、頑張って勉強する受験生も多いのではないだろうか。本書は、これだけのネームバリューを獲得した早慶MARCHについて、様々な観点から迫り、その実態を明らかにしようとしたものである。教育内容・強い分野など、各校を特色づけると言える要素がずらりと並び、比較対照されている。

実は、早慶MARCHの各校に息づく伝統や特徴はかろうじて残っている部分もあるが、現実的には各校の差はどんどんなくなっているようにも思えてしまう。年配の世代がMARCHという言葉にあまり馴染みがないのと同じくらい、現代の受験生は「バンカラ」といった言葉に馴染みがないのではないだろうか。また、総じてどこの大学でも国際系学部は同じ大学の中でも異次元の様相を呈しているようで、同じ「○○大学」と一括りにすることに意味を感じられなくなっている面もあろう。

もちろん、親世代としたら、当時の常識が通用しないほどの学部・教育内容・校風の変化があるだろうが、その変化はどうも均一化の方に向かっているような気がする。間違いなく日本の中でも大きな地位を占めている大学だけに、早慶MARCHという集団の中で勝負するのではなく、もっと大きな世界に目を向け、独自の路線を模索してもらいたいなと思ってしまった。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
| HOME |NEXT

忍者ブログ [PR]