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# 『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』
2017/01/22 16:14
サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう 著者:秀章
イラスト:R_りんご 角川スニーカー文庫 2016年



とても現代的なコミュニケーションを、ラノベ的な物語世界で描いた作品。作品舞台は、20年前に起きた人類対魔族間の大戦争で活躍しながらも、突如姿を消した七氏族が残した莫大な富を探すべく、人々がダンジョンを旅するというものだ。その中でも、主人公ユーリが所属するのは、「軍資に一番近い旅団」と呼ばれる最強の旅団(サークル)だった。男4女1で構成される最強のサークルに、謎の美女、クリスティーナが加入することで、徐々にサークルの人間関係が破壊されていく。

とことん仮想的な世界で、とことん現代的なコミュニケーションが描かれる、なかなかに挑戦的な作品だと思う。無意識に集団の人間関係をめちゃくちゃにするという、とんでもない能力を持ったクリスティーナは、4人の男たちを惚れさせ、そのせいで女1人を退団に追い込む。やがて真実を知った男たちによるお互いを罵る会話劇は、蚊帳の外にいる者にとっては抱腹絶倒。

美女に翻弄された男たちをどうにかしようと、ユーリが選択した手段は、さすがにラノベ世界でなければ実現しえないものだが、目指すべき着地点としては、現実世界でも十分にあり得る。架空の世界で極めて現実的なコミュニケーションを描いた傑作だ。
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# 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑩』
2014/12/06 18:26
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑩ 渡航 小学館ガガガ文庫 2014年



生徒会主催のクリスマスイベントも終わり、それを機に関係に変化が生じた奉仕部の面々だった。年末は大きな事件もなく過ごしたところでの年明け、学校中では新たな噂が広まっていた。葉山隼人と雪ノ下雪乃が付き合っているという噂だ。それをきっかけに、クラス内の雰囲気がピリピリする中、奉仕部に依頼が舞い込んでくる。依頼主は女子のスクールカーストのトップに君臨する三浦であった。同じクラスの葉山の進路が知りたいという内容であったが、その真意とは…

いよいよ物語も終盤に向かうと宣言されている本作だが、作者によると10巻がちょうど終わりの始まりと言える位置づけであるという。今回の内容は、葉山や三浦といったトップカーストに位置する人間の願いや気持ちに迫るといったところ。葉山といえば、表向きの印象はイケメンにして頭脳明晰、それでいて周りへの気配りもできる学校中の人気者である超人で、八幡とはまるで真逆の世界に住む人物であるが、その柔和な笑顔の裏には、彼なりの悩みも抱えている。周囲の期待に応えることが自らの使命と考え、行動する葉山が最も嫌い、それでも意識せざるを得ない存在が八幡なのだということが伝わる内容だった。また、八幡と葉山は完全な二項対立で語れるほど真逆の存在ではない。似ているが別の世界に暮らし、周囲から期待される行動が真逆であるがゆえ、絶対に仲良くなれない。そんな運命に晒された2人なのである。

9巻の事件を通して、「本物」を得たいと願い、「偽り」の関係に終止符を打とうとしたのが、八幡、雪ノ下、由比ヶ浜の奉仕部面々だった。それに対して、関係を続けることに意味があると考えるのが、葉山や三浦の選択であるようだ。最後に雪ノ下陽乃が問いかけるように、果たして「本物」とは何であろうか。そのような疑問を抱えつつも、本書の第9章のタイトルが語るように、過去の関係の蓄積と未来への望みをつなぐ線の間にある現在を、人はそれぞれ選択しながら生きていくのだ。

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# 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6.5』
2014/08/08 17:24
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6.5 渡航 小学館ガガガ文庫 2014年



TVアニメシリーズの番外編、「だから、彼らの祭りは終わらない」の裏を描いたストーリーと、9巻直後のクリスマスパーティーの様子を収録した巻。文化祭が終了後、奉仕部は悩み相談のホームページを作成した。そこに来た依頼は生徒会長の城廻めぐりからのもので、「体育祭を盛り上げたい」というものだった。しかし、生徒会役員と各部活の代表で構成されている体育祭実行委員会は、委員長も決まっておらず、体育祭を盛り上げるための目玉企画も未定のままというのが現状であった。奉仕部の提案で委員長に推薦されたのは、文化祭実行委員長を務めた相模南だった。体育祭の準備を進めていく中で、奉仕部と各部活、委員長の相模との間に緊張関係が生まれ、事態は悪化していくのだった。

毎回のことではあるが、作者が描く学校の風景というのは、恐ろしいまでにリアリティがある。クラス内での序列、生徒間の微妙な距離感など、高校生が過ごす空間の息苦しさを描かせたら、渡氏に肩を並べるものはライトノベル業界ではそういないように思える。作者も「なかがき」で書いているが、今回委員長になった相模という人物は、いかにもクラス内にいそうな人物である。トップカーストにはなれず、かといって、下位カーストでもない。上からの視線に耐えつつ、カースト上位として生きる苦しさも持っている。そして、人間的には甘いところがあり、能力や人心掌握力にはやや欠ける。どこまでも身近な人物として描かれた。そんな相模に対して少しは光の当たるラストが描かれた本作は、他とは違う力を持った奉仕部の面々以外でも学校でうまく生きる方法はあるのだと伝えてくれているのだろうか。

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# 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑨』
2014/06/18 15:56
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑨ 渡航 小学館ガガガ文庫 2014年



生徒会選挙の一件以来、すっかりこれまでの関係にひびが入ってしまった奉仕部。そんな中舞い降りた依頼の主は、八幡の策略のもと生徒会長に当選した一色いろはであった。雪ノ下と由比ヶ浜を巻き込まない方法を選択した八幡は1人で案件を解決しようとするが、他校との合同クリスマスイベントという企画には想像以上のハードルがあることに加えて、相手の海浜総合高校側の生徒会長、玉縄の性格もあって、事態は暗礁に乗り上げる。

1度失ってしまったものはもう戻らないかもしれないが、また別の形で取り戻すこともできるのではないか。本書を読んでいてそう思った。以前の生徒会選挙では、今のこの環境を守るために策を講じたが、結果的にはそれが奉仕部を嘘と欺瞞に満ちた集まりにしてしまった。八幡は、春から巻き込まれる形で入部して続けてきた奉仕部に対して、初めて本気で自らの気持ちを伝え、雪ノ下と由比ヶ浜はそれに応えようと踏み出していく。場の雰囲気を優先して、実のない議論を続けようとする玉縄に対して語気を強める八幡と雪ノ下の姿は、まるでわだかまりがあったときの自分たちに対して話しているようで、後半のシーンは心熱くなる。

筆者のあとがきによると、このシリーズもそろそろ最終巻を迎える様子だ。次か、その次なのかはわからないが、彼らの青春物語にもうすぐ終止符が打たれると思うと寂しい気がする。

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# 『ゴールデンタイム8 冬の旅』
2014/04/16 12:08
ゴールデンタイム8 冬の旅 竹宮ゆゆこ 電撃文庫 2014年



リンダとともに過ごした高校時代の記憶を卒業式の翌日に喪失し、大学入学後は加賀香子出会い、切なくも楽しく輝かしい大学生活を送ってきた万里だったが、高校時代の記憶が戻るにつれて、思い悩む日々が続く。そんな万里のことを思い、香子は万里と別れるという決断を下すのだった。2人の恋の行方、そして、万里の大学生活の行方は? 物語は結末を迎える。

テレビアニメ化もされ、2クールでフィナーレを迎えた本作。アニメも素晴らしかったのだが、原作を読むことで、アニメでは簡略化されてしまった部分も補完でき、より大きな感動を得られる。特に、万里が大学時代の記憶を今まさに忘れ去ろうとしていると実感しながら、学園祭での踊りを精一杯楽しもうとするシーンは迫力があった。また、最大の目玉は、万里が実家で香子と再会する場面であろう。文字情報だけが与えられている読者は、万里のセリフと、万里の実家を訪れた人物描写の食い違いに何となく違和感を覚えながらも読み進め、後にその人物は香子であったことを確信するというサスペンスを楽しむことができる。映像を通してでは、この感動はなかなか得られない。

高校ではなく、大学を舞台に設定したことが珍しいと話題になった本作。主要な読者となる高校生にとっては実感が湧きにくいであろうが、大学生活を経験したことのある読者にとっては、高校時代とは違った、大学時代特有の楽しさ、辛さ、甘酸っぱさが蘇ってくるようであった。

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# 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑧』
2013/12/01 18:02
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑧ 渡航 小学館 ガガガ文庫 2013年



季節は秋から冬に移ろうという時期、総武高校は生徒会選挙を迎えようとしていた。生徒会長の立候補者、一色いろはは、実はクラスメイトの勝手な行動で立候補させられただけで、何とか会長にならずにすむ方法を探しに、奉仕部を訪れる。この依頼に対して、奉仕部の3人は、それぞれ別の案を提示し、対立してしまう。

宝島社刊、「このライトノベルがすごい!2014」で見事総合1位に輝いた本作。勢いづいていたところにアニメ化も重なり、今年は大フィーバーとなった。ブログ管理人のように、アニメから原作を知った人も一定数はいたはずだ。

そして、8巻はまたもや大きな転換点となる巻であった。文化祭、修学旅行と大きな行事のたびに舞い降りてくる奉仕部への依頼。その中で主人公、八幡の働きはあまりに大きかったが、それは同時に自らの犠牲を伴うものであった。本人は、孤高を貫いてきたゆえ、それを犠牲とも思っていないのだが、彼のことを心配する人間ほど、彼の自己犠牲精神に疑念の念を抱いていた。そして迎えた生徒会選挙では、またもや八幡の犠牲を伴う作戦が提案されるが、雪ノ下、由比ヶ浜はそれを許さなかった。2人が出した解答は、自ら生徒会会長に立候補するという結論だった。会長の激務と部活の両立は困難を極めるゆえ、奉仕部は解体の危機に晒される。そんな中、八幡が作戦を変更する。今までの1人で悩み、1人で解決する方法から、知り合いに相談し、一緒に解決策を探り、誰も傷つかない作戦を実行しようとするのだった。

6巻、7巻に続いて長編となった8巻だったが、これまでと変わらず、読み出すと止まらない展開であった。奉仕部解体の危機の中で、八幡が奉仕部の日常を守り抜くために奔走する姿は感動的ですらある。まさかのどんでん返しで、一命を取り留めた奉仕部の日常だったが、八幡は自分の選択肢が間違っていなかったか最後まで思い悩む。明らかに違う八幡になった瞬間であろう。

相変わらず、多感な高校時代の心情の機微を表現するのが巧い。一挙手一投足に気を使い、人間関係に翻弄されながら生きる彼らの一生懸命さに心動かされる。また、本シリーズの中で一貫して繰り返される、このような日常にも終わりが来るだろうという記述に、確実に時間は過ぎ去っていく厳しい現実を感じ取っている彼らのしたたかさも感じられる。

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# 『俺の教室にハルヒはいない』
2013/09/18 23:49
俺の教室にハルヒはいない 新井輝 角川スニーカー文庫 2013年



学園モノアレルギーの男子高校生、ユウの席は「涼宮ハルヒの憂鬱」のキョンと同じ位置。しかし、現実にハルヒに出会うはずはなく、ハルヒの席に当たる真後ろの席はずっと空席のままであった。ある日、ユウは幼馴染みのカスガが声優を目指していることを告白され、カスガを応援することを誓う。カスガを送ったユウは、偶然出会ったアニメ脚本家のマコトに食事に誘われる。そして、そこからユウの生活は変化していくのだった。オタク仲間との出会い、アイドル声優であるアスカとの出会い… これらの出来事は、確実にユウの心を変えていく。

「涼宮ハルヒの憂鬱」10周年の記念の年に発売されたのは、衝撃のタイトルの作品だった。しかも、タイトルの通り、作中に宇宙人や未来人や超能力者は出てこない。むしろ、「ただの人間」に関心を示すアスカに、学園モノすなわち特別な高校生活に憧れる気持ちなど一切持たない主人公と、まるで正反対な人間が描かれる。

波戸岡景太『ラノベの中の現代日本』によると、2000年代以降のライトノベルの特徴は、かつてはオタクだったが今ではそんな自分の過去と決別した人物を主人公に据えている点にあるという。しかし、本作の主人公はそれを超えて、もはやオタク的なものとは無縁の人物である。「ハルヒ」発売から10年の月日が流れた今、ラノベの主人公像には新たな波が生まれつつあるのかもしれない。もちろん、なんだかんだで主人公の男が様々な女性に好かれていくというハーレム設定は本作でも継承されている気はするが。

果たして、本作はライトノベル界に新たな旋風を巻き起こす作品となるのか。今後の行く末を見守っていきたい。

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# 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』
2013/06/05 20:50
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 渡航 小学館ガガガ文庫 2011年



青春、友情、恋愛…夢の高校生活とは縁遠い学校生活を送り、ひたすら「ぼっち」を貫くひねくれ高校生、比企谷八幡が、担任の教師、平塚静に連れてこられたのは、学校一の美少女である雪ノ下雪乃が所属する「奉仕部」であった。謎の部活動の正体は、たまに訪れる依頼者の願いを聞き入れ、叶えるお手伝いをすること。依頼人として奉仕部を訪れたことをきっかけに、個性豊かな生徒達が、八幡の周囲に集まるようになる。現在アニメ放映中の作品の原作。

近年、すっかり定着した感のある言葉、「スクール・カースト」。本作は、いわばそのカーストの最下層に位置する人々、「ぼっち」を主人公に据えた物語である。主人公の比企谷八幡は、独りでいることを恐れない。周囲に対してとても卑屈な態度を取るが、その裏には人間関係を巧みに読み取り、適した行動を選択する賢さと、同じぼっち系の人々や人間関係に悩む者への優しさがある。

本作の1番の魅力は、スクール・カーストの最下層から述べた、カーストのくだらなさ、辛さ、そしてそれを斜め下からの視点で見つつ独自の視点で乗り越えている八幡の存在そのものであろう。彼の独白は、卑屈な態度を呈しているが、カーストが下の者からすれば、それはまさに魂の叫び。カースト制度に苦しむ者は、八幡の言葉に生き抜くヒントをもらい、勇気付けられるのではないだろうか。そして、本作のヒロイン、雪ノ下雪乃の存在も欠かせない。彼女もまた、完璧な美少女ゆえに背負わされた孤独な運命を抱えている。2人の独りぼっちが関わることで生まれる相互作用が作品の核である。

ちなみに、登場人物には、雪ノ下雪乃や由比ヶ浜結衣、葉山隼人など、苗字と名前で同じ音が繰り返される独特なネーミングが多い。そういえば、作者名自体、「わたりわたる」と、同じ音が続いている。

作者は1987年生まれと、管理人と同年代。それだけに、数々のネタの元ネタが、面白いくらいによくわかってしまう。アニメではカットされているものも多く、「これ、今の高校生や中学生には理解できるのかな?」と思いつつ、笑わせてもらった。

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# 『E'S Unknown Kingdom』
2010/09/06 10:30
小説版E'S(2) E'S Unknown Kingdom 結賀さとる エニックス 2000年



世界の中で支配力を増す巨大企業「アシュラム」の任務中に事故に遭ったところ、戒は勇基と明日香に助けられる。居候する戒は、勇基とともに仕事に出掛けることに。しかし、その仕事には思わぬ秘密が隠されていた。しかも、明日香が2人について来てしまい、ますます危険な状況に。過去に閉鎖された地下の工場で繰り広げられるサスペンス。

小説版の『E'S』第2弾。今回は、ガルドで暮らす3人に焦点が当てられる。3人が向かった先は、かつての軍事工場。そこで、3人は、アンドリューというロボットに出会う。人間対超能力者という対立が漫画版の大きなテーマになっているのに対して、小説版の第2弾では、そこに人工知能を搭載したロボットという新たな対立項を入れることによって、生命とは何か、人間とその他のものの境界線はどこにあるのかという問いに深みが増すようになっている。

エピローグでは、コミカルなやり取りもあり、『E'S』の世界を存分に楽しめるようになっている。


◇過去の記事◇
『E'S The Time to Baptisma』

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# 『E'S The Time to Baptisma』
2010/08/26 15:25
小説版E'S(1) E'S The Time to Baptisma 結賀さとる エニックス 1999年



3度目の世界大戦を経験した後の近未来。そこは、人間と少数の超能力者が混ざって暮らす世界だった。しかし、両者の関係は、共存とはかけ離れたものだった。人間は超能力者に対して恐怖の念を抱き、超能力者は人間に対して憎しみを感じていた。世界を支配しつつある巨大12企業の1つである「アシュラム」は、超能力者を保護の名目の下集め、何かを企んでいる。「アシュラム」に所属する超能力者達に焦点を当てたストーリー。

今年の2月に最終巻が発売され、完結した作品である『E'S』の小説版。ただし、一般的なノベライズとは異なり、漫画の原作者自身が文章を書き、表紙絵や挿絵も担当するという、珍しい手法。元から、作者の作品を読んでいると、語彙の豊富さを感じることはあった。それは小説版においても健在。小説としても特に違和感なく読み進むことができた。

ところどころ原作の隙間を埋めるようなエピソードも盛り込まれているけれども、パラレルな展開も多い。原作でもテーマの1つになっている、能力者差別の状況を克明に描写したり、小説版オリジナルの大樹という「アシュラム」の脱走兵を用意したりすることで、超能力者達が抱える苦悩を大きく取り上げている。企業の利益のために能力者が売買されているなど、人種問題のような能力者差別の現状を扱うなど、本作の抱えるテーマは案外重いのだ。

原作では、ゲリラ掃討作戦中に負傷して以来、人格の改造を施されてしまった神露も、本作では元気な姿を見せる。戒に恋する神露を見ることができる、貴重な作品だ。

漫画の場合、台詞以外では、絵で示される表情や動作などしか、人物の心情を推測する手掛かりがない。それが小説になると、心情が文章で明示的に書かれる場合もある。そんなとき、一見すらすら理解できるように思える漫画や映像も、解釈には独自の高度な力が必要なのだと思ってしまう。

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