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# 『リスクにあなたは騙される』
2014/10/08 23:43
リスクにあなたは騙される ダン・ガードナー ハヤカワ文庫 2014年



人間はリスクを正しく理解せず、非合理的な行動に陥りがちである。これが、本書があらゆる事例と心理学的実験を通して伝えようとしていることである。人間は物事を判断するときに、直感的で素早い「腹」と論理的で時間をかけた「頭」の2つを利用するが、現代社会においては「腹」の判断はしばしば間違う。「腹」による判断は人類の進化の中で身につけてきた大切な機能なのだが、現代社会の発展が速すぎてそれに適応できていないからだ。

そんなわけで、原始的な直観で、それに不釣り合いなほど進化した社会を生き抜くには相当な注意を払わなければならない。現代の先進国でテロに遭う可能性は非常に高いと言えるのか? 食品添加物にどれほどの関心を払うべきなのか? 重大な病気になる可能性はいかほどか? 現代に限らず、人はリスクに遭わずに生きることはできない。しかし、リスク判断に「腹」だけを使う習慣を身につけてしまうと、とんでもないことになる。

本書は、メディアの報道、企業の戦略、政府の予算配分など、現代社会がリスク判断に関して抱える問題を鮮やかに描き出す。きちんとした判断根拠を与えずに恐怖だけを増長する一方のメディアは問題ではあるが、感情に訴えかける話を好む人間の性を考えれば、一方的な批判もできない。きっと、筆者の言うように立ち止まって疑ってみるという姿勢こそが何よりも大切なのであろう。また、筆者は盛んに「じっくりと「頭」で考えればわかるものを…」と述べているが、案外我々は「頭」を使えるだけの正確な情報を持っていないのではないだろうかと思った。筆者は「実はこの可能性はこんなに小さいのに」という言い方を多用するが、その計算は「頭」を働かせるだけの情報なしには不可能だ。そう考えると、メディアは判断の根拠となる数値を示す責任があるし、リスクを捉えるための統計を見極める方法や、統計にアクセスするための方法を知るためのリスク教育というようなものも必要なのではないだろうかと思った。

巻末にある、訳者とサイエンスライターによる解説がまた、素晴らしい。本書の魅力を余すところなく伝えてくれる。
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