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# 『人の心は読めるか? 本音と誤解の心理学』
2017/09/09 16:55
人の心は読めるか? 本音と誤解の心理学 著/ニコラス・エプリー 訳/波多野理彩子 ハヤカワ文庫 2017年



本書では、まず人間の心を読むという行動について、様々な心理学実験の成果を通して考察が行われる。親しい人のことならよくわかるか、他人のことならともかく自分のことならよくわかっているか、相手の立場に立とうとすると他人の気持ちを想像しやすくなるか…これらの疑問に対する答えは、残念ながらノーである。主に社会心理学の分野で行われてきた実験の成果から考えるに、人間は自分が思っている以上に他者の心理を理解できないもので、直感的な能力は信用できないというのが、筆者の結論だ。この結論に至るまでに紹介されている数々の実験結果は非常に興味深く、知的好奇心を刺激するものばかりだ。しかし、それで終わりにならないのが本書の素晴らしいところだ。このような研究結果を踏まえて、どうすれば他者との行き違いや誤解を減らし、可能な限り円滑なコミュニケーションを行えるのかについて、筆者なりの解決策(あるいは他者とのコミュニケーションで生じやすい傾向を理解して行動する方法)が提示されているのだ。

人間の認知に関する問題に迫っていく内容は純粋に知的刺激に満ちた内容ではあるが、実験心理学という基礎研究の成果を、社会の問題解決に活かそうという意欲に満ちた内容であるという点においても素晴らしいのが本書の特徴だ。臨床心理学と比べて実用性が見えにくく、脳科学と比べてメディアへのインパクトも小さいのが認知心理学や社会心理学の現状であるが、そのような基礎研究も、問題意識次第でこれほどまでに重要なメッセージを発することができるのだということがわかる(もちろん、基礎研究を「役に立つ」という視点で語ろうとすることに対する批判もあるだろうが)。
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