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# 『英文読解完全マニュアル』
2010/09/18 14:46
英文読解完全マニュアル 澤井繁男 ちくま新書 2002年



決して英文が読めないわけではない。基本的なことはわかっている。だけど、その先が… というような人向けに書かれたのが、本書。大学受験で出題された文章の中でも、英検準1級レベルと言えるような読み応えのある文章を題材にし、英語上級者への道筋を示す。

本書で扱われているは、上位の大学を出た人であっても、十分には身に付いていない可能性のある事項だ。名詞構文のような、大学受験用の参考書でも見かけるような事項は元より、なかなか受験用の参考書ではお目にかかれない内容も散見している。特に、訳し方のポイントなど、深く突っ込まれると、案外理解できていない領域があるのだなと、自分の英語力に対する反省が促される。

本書の初めでは、現在の学校で行われる英語教育に対する、筆者の批判的な見解が述べられる。生徒の論理的思考力を無視した、辞書を引かせない授業、英文の背景にある文法事項や語法などの要素を解説できない教師(特に公立校)の能力の低さなど、なるほどなと思わせる批判もある。

筆者は現場の痛いところを突いてきていると言えるだろう。しかし、それでは、筆者が英語教育を通して伝えたいことは何か。それは、今後中学生・高校生が社会に出て行く上で、どのように活かされるのか。筆者が盛んに主張する「論理的思考力」は、英文読解・和訳を通さなければ身に付かないのか。あるいは、英語は論理的思考力を身に付けるための道具で良いのか。英語の面白さとは、語学的な面だけで十分なのか。言語を実際に使用する楽しさについてはどう考えるのか。

辞書指導についても、検討すべき点はある。確かに辞書が素晴らしい英語教材であるのはわかる。しかし、右も左もわからない中学1年生が、辞書から様々なことを学ぶことは可能なのか。ある程度知識が身に付いてから辞書を引いて整理していく、というやり方だってあるのではないだろうか。

このような点について考えさせられるという点では、本書は英文読解法を題材としつつも、英語教育論のあり方について考えるきっかけも与えてくれる。
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