なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか 中井俊已 学研新書 2010年
男女は、育つ過程が違えば、興味の対象も違う。教師との関わり方も違う。男女別学には、男女それぞれの特性を活かし、能力を開花させる秘密がある。日本の男子校女子校の進学指導や生徒指導の態勢に、欧米での別学事情、近年の脳科学の成果も合わせて紹介し、別学の意義を問いかける。
男女平等の観点から、戦後日本では共学が広く普及した。しかし、共学のみが望ましいとは言えないのではないか。男女別学の良さもあるのではないか。そのような主張を筆者は展開する。筆者はあくまで、男女は平等であるべきだと考えているし、共学の良さも認めている。それでも、各々の成長過程を考えると、両者を同じ教室で指導するのはどうも難しいのではないかということを、豊富な事例を基に考察する。
本書の内容に反論できる点は、2つある。実は、本書のデータは、完全とは言えない。例えば、男女校を目指す保護者に対する意識調査が、共学校を望む保護者のデータと比べることなく掲載されていることがある。2つ目として、個人差の問題があろう。男女の境界とは、ホルモンの量によるものであり、連続的で、曖昧だ。男子との方が気が合う女子がいれば、その逆もあろう。
しかし、全体としては非常に示唆にとんだ内容である。特に、共学の環境では発達障害に分類されてしまうような男子生徒が、別学の環境では活き活きと能力を発揮したという事例は、感動的でさえある。海外の事例も紹介されていて、日本でも真剣に議論すべき課題かもしれない。
男女別学の是非は、男女平等とはいかなる状態を指すのかという、一筋縄ではいかない問題を内包している。これまで以上に、脳科学・教育学、政治学・社会学・心理学・現場の実践が手を結び、考えていくべきテーマだ。
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