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# 『ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く』
2017/09/09 16:27
ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く 金成隆一 岩波新書 2017年



昨年の11月に誕生した新アメリカ大統領、トランプ氏。選挙前から彼の言動は世界の注目を集め、世の多くの人々の予想に反して大統領に就任した。本書は、多くの人が抱えたであろう疑問「なぜトランプ氏は支持されるのか」に対する1つの答えを提示する。

筆者がトランプ支持者の多い地域に精力的に赴き、取材を重ねていった結果わかったのは、トランプ支持者は、普通に真面目に働きながらも暮らし一向に良くならず、将来のへの不安感を抱く、ごく一般的な労働者であった。トランプ氏が繰り返す侮蔑的な発言に対して心から賛同するかというと、そんなわけではない。ただ、トランプ氏は自己資金で選挙戦に臨み、富裕層ではなく自分たちミドルクラスに関心を向け、何かを変えてくれるのではないかという期待感から、これまで当たり前のように支持してきた民主党を捨てトランプ支持へと鞍替えしてきた人々だ。グローバル化、中国やインド、ラテンアメリカの台頭が進む中で、かつてのように学歴がなくても真面目に働いていれば家族旅行を毎年するくらいの給料は当然のようにもらえるというアメリカンドリームを信じることができた世代とは異なり、将来が見えにくい生活に不安を覚える人々は、やり場のない不安を解消してくれる期待を込めて、トランプに投票した。

本書でも繰り返されていることだが、このような事態は対岸の火事と言える問題ではなく、日本、ひいては先進国全体が抱える根の深い問題に起因する。グローバル化に加えて、かつての発展途上国の台頭による労働集約型の雇用の減少、先進国の中流家庭の賃金は伸びず、先行き不透明な生活を余儀なくされている。トランプ氏の発言を批判し、あのような大統領を当選させたアメリカは何だと言うことは簡単だが、それで終わらせていてはいけない。アメリカで起こっている問題は、そのまま日本にも当てはまる部分が多く、差別や暴力も厭わない権威主義的な政治指導者の当選は、将来の日本にも起こり得ることである。アメリカを通して先進国は何を学び、何を考えていくのか。そのようなことが問われているように思えてならない。
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CATEGORY [ 社会・経済 ] COMMENT [ 0 ]
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