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# 『難民高校生─絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル 』
2017/01/04 20:44
難民高校生─絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル  仁藤 夢乃 ちくま文庫 2016年



家庭にも学校にも居場所がなく、渋谷を彷徨う中高時代を過ごした筆者が、やがて社会の中に居場所を見出し、自らと同じような境遇を経験する若者に居場所を作る活動に至るまでの半生を綴った本。

高校時代の筆者の周りには、居場所をなくして渋谷の街を徘徊する若者が多かった。その多くは、劣悪な家庭環境などのせいで、高校中退、虐待、妊娠、中絶、DV、リストカット、自殺未遂といった問題を抱えていた。そのような人々と日々を過ごしながらも、どこか空虚な気持ちでいた筆者は、高校中退後に高認取得を目指す予備校に通い、そこでの授業やゼミでの出会いを通して徐々に大人への信頼と自己評価を回復していく。大学進学後、目標を失いかけていた筆者に希望を与えたのはボランティア活動だった。そして、在学中に起きた東日本大震災。現地の若者との交流を通して、彼らの「何かしたい」という思いに触れることで、筆者は被災地域の若者、大人、企業を巻き込んでの復興支援立ち上げに関わる。その活動を通して、地域に居場所をなくしていた高校生が、やがて地元での信頼を勝ち得るまでになった。まさに過去の筆者と同じような境遇の若者が、社会とのつながりを見出していく過程を作り出すことができたのだ。

筆者が本書を著したきっかけは、若者から大人へと向かいつつある自分が、かつての若者としての記憶をしっかりと残っている間に、問題を抱えた若者の姿を伝えたかったということにあるそうだ。筆者は、こうした若者と大人との間に大きな断絶があることに問題意識を持っており、「私だから」こそ、普段彼らがうまく言葉にできない内面を伝えられると思ったそうだ。この「私だから」という言葉の持つ意味は大きい。多くの人にとって「私だけに」できることなど、限られていても、各々がその時その時を悩みながら生きてきた人生があるのだから、「私だから」できることならある。それを通して社会とつながることができれば、きっと居場所が見つけられる。

若者が抱える悲痛な叫びは、時に声という形ではなく、ファッションや態度、行動に現れる。それを理解不能という言葉で片付けたり、勝手に心情を理解した気にならずに、いかに個々の人間に寄り添って考えられるかが、大人に求められていると、筆者は言う。

なぜか大人になるにつれて忘れていく、かつて自分が若者の時に感じた生きづらさや大人への不満を、忘れずにいられる大人でありたいと、私自身も思ったものだ。しかし、気付けば大人の論理で物事を見て語る自分がいる。そんな自分に、若者として感じていた怒りや悩みや不満を強烈に思い出すきっかけを与えてくれた本だと思う。
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