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# 『最下層女子校生 無関心社会の罪』
2016/09/03 22:15
最下層女子校生 無関心社会の罪 橘ジュン 小学館新書 2016年



精神的、肉体的虐待に性的虐待、教育虐待、いじめ、そしてそれらの結果として生じる貧困状態… 10代や20代の女子が抱える生きづらい現実についてまとめたルポルタージュ。

いつの時代も、社会のゆがみや矛盾は弱い者のところにしわ寄せとなって現れる。本書で紹介される若い女性も、皆そのような社会の中で苦しい立場に押し込められた人である。各々のケースについて読み進めていくと、「なぜこのようなことに」という衝撃と怒りを感じられずにはいられない。

また、このような女子の受け皿となっている児童相談所、自立支援ホーム、婦人保護施設の現状がまとめられているが、このような施設に対する支援は手薄で、婦人保護施設に至っては拠りどころとなる法律が60年間ずっと変わっていないという有り様である。施設で働いている方々は、何とかしたいという切実なる思いで仕事に向かっているのだが、それだけでは限界を感じる。

ラストには、著者と漫画家、沖田×華の対談がある。沖田氏は、これまた本書に登場する女子達に引けを取らないほどに苦しい人生を歩んできたにも関わらず、その境遇をしたたかに乗り越えてきた。その強さに圧倒されるばかりだ。今苦しんでいる女子が真似できる生き方とは言えないが、苦しみからどう抜け出そうとするか、どう考えて生きるか、そして生き抜いた先に何が待っているか、といった問いに対する1つの答えを示してくれているように思う。
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# 『東京どこに住む? 住所格差と人生格差 』
2016/08/07 17:02
東京どこに住む? 住所格差と人生格差 速水健朗 朝日新書 2016年



かつてないほどに、都市、特に東京への一極集中が続くと言われる世の中において、東京での暮らしはどうなっているのかを分析してみると、今までにない新たな法則が打ち出されてくる。それはすなわち、23区の皇居から5km圏内への人口集中と、そこから外れた地区の没落傾向である。そのような傾向が生まれた背景を分析するとともに、住む場所探しの最新トレンドに迫る。

「西高東低」と言われる東京の居住地人気は、長きにわたってのトレンドである。収入のある人々は武蔵野台地に開発された西側地区に高級住宅地を形成し、郊外の暮らしを謳歌した。しかし、近年、新たな暮らし方がトレンドとなりつつある。それは、都心への通勤負担の少なく、都心生活を謳歌しやすい地域、具体的には港区・千代田区・中央区といった、あまり住宅地としてのイメージがなかった地域や、山手線のやや東側にある通勤至便の地域に人が住み始めていることである。

本書では、そのような都市型生活を選択した人々や、あえて郊外生活を選択した人々の事例を紹介することを通して、住む場所の選択が生活に及ぼす影響についてまとめている。ここで紹介されるのはあくまで世の中の「強者」であろう。望めば高いお金を払っても住居を選べる人々だ。だから、これが世の中全体の傾向とは言えない部分もあるが、少なくとも世の中の上位階層の人々は、このようにして住居を選択しているということはわかる。

本書を読んでいると、住居による新たな格差社会を想像せずにはいられない。都市部への移動が不可能な人々は、地元を愛し、地元で十分と考える「ヤンキー経済」的な考えでもって自分の生活に納得していくしかないのか。

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# 『アニメやマンガが地方を救う!! ~「聖地巡礼」の経済効果を考える~』
2016/07/03 19:24
アニメやマンガが地方を救う!! ~「聖地巡礼」の経済効果を考える~ 酒井亨 ワニブックスPLUS新書 2016年



アニメ・漫画作品の舞台となっている土地を訪れることを、ファンの間では「聖地巡礼」と呼んでいる。近年、聖地巡礼を通して活力を取り戻す商店街が出てくるなど、その効果はバカにできないほどになっている。本書は、政治学が専門の筆者が、聖地巡礼の実態について各地域に取材した記録をまとめ、そこから聖地巡礼を通した地域の活性化について考察をめぐらせたものである。

聖地巡礼を機に活性化し、アニメファンとの良好な関係を築いている地域では、アニメファンの特長として次の点を共通して挙げている。それは、マナーが良いのと、何年にもわたって訪れてくれるという点だ。これは、地域活性化のために利用しない手はないのではないかと思うのだが、現実はなかなか厳しい。作品の評価が低ければファンが押し寄せることは期待できず、地元が一致して取り組まなければせっかくの客を取り込めず、だからといって行政が出過ぎるのはファンが白けてしまう。本書には一応、経済効果について数字も紹介されているが、どこまで正確なものであるのかはわからない。まだまだ可能性に満ちている一方で、開拓の難しい面も多い分野なのだ。

それでも、本書で紹介されているように、地域が自らの存在意義を見直し、元気を取り戻していくという、数字化されにくい利点もある。まだまだ開拓の余地ある分野だけに、これをどう活用していくか、議論される地盤ができあがっていくことに意味があるのではないかと思った。

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# 『23区格差』
2016/02/12 23:00
23区格差 池田利道 中公新書ラクレ 2015年



様々な分野が東京、特に23区に集中し、地方の未来が憂える中、あえて東京23区内の格差に言及し、一人勝ちしたものとして今後の都市生き残り戦略を先導していくためのヒントを得ようとしたのが本書である。裕福な層が郊外に大きな家を構え、都市部には貧しい人々が集まるという傾向を持ったアメリカとは異なり、23区の山の手地域には極めて裕福な人々が暮らす。これは本書内で指摘されることであり、言われてみてふと気付いたことである。確かに、東京は他の都市とは異なった独特な進化の道を辿っているのかもしれない。本書の一貫した姿勢は、常識を覆すことである。多くの人が各区に対して持っている一般的なイメージや、誰もが注目する数字に関してどうこう言うのではなく、新たな視点を得られるようなデータに重点が置かれている。テーマは23区の格差ではあるが、ここから都市の在り方について考えをめぐらすことは十分可能だ。定住者が増えればよい街になるのか。子どもの数が増えれば少子化は解消するのか。いずれも、意外な結論が待っている。

ちなみに、「23区の通信簿」という形で、各区に関するコメントが述べられている。AランクからDランクまで格付けされていて、特に23区民は気になるところであろうが、この格付けは、ある雑誌で行った区の知名度ランキングをもとにしたものに過ぎない。必ずしも区の実力とは一致しないので安心されたい。筆者はもとは地方の創生にも関わってきた人物だけに、弱い区に甘く、強い区に厳しいという立場でコメントしていると明言している。

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# 『エヴァンゲリオン化する社会』
2016/02/03 21:12
エヴァンゲリオン化する社会 常見陽平 日経プレミアシリーズ 2015年



エヴァンゲリオンの放送開始20周年、そして作品が舞台となる年である2015年に発売された本書は、エヴァンゲリオンを通して現代社会の労働について語ろうという意欲作である。いわゆる「セカイ系」に分類される作品と労働という、いかにも無関係そうなテーマだが、この視点はなかなかに興味深い。

決して報われることのない労働に対して、自分なりの価値を見出して逃げずに必死に戦い続ける14歳の少年少女、最も出世したと思われるキャリアウーマンの宿命を体現しているかのようなアラサー女性などは、現代の社会が生み出した過酷な労働条件のもと生きる人々を描いているようだと筆者は語る。なるほど、他より優れた特別な力を持った人間であることを期待され、それでいて自分の代わりはいくらでもいると言われ、日々プレッシャーに怯える人々、明らかにブラックな労働環境でもそこに意義を見つけて逃げ出さずに働くことを求められる人々、女性の社会進出が推進される社会でバリバリ働く女性など、作品の登場人物達とシンクロするような環境で働く人々は少なからずいるように思える。

おそらく、当時の制作者達にそのような意図があったとは思えないが、エヴァンゲリオンにこんな読み方もあったのかと思わせてくれた。

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# 『女子学生はなぜ就活で騙されるのか 志望企業全滅まっしぐらの罠』
2015/12/01 22:01
女子学生はなぜ就活で騙されるのか 志望企業全滅まっしぐらの罠 石渡嶺司 朝日新書 2015年



「女性総合職は実質まだ10年」―これが、本書の序盤で指摘されている点である。まだまだ日本社会に定着したとは言いづらいのが女性総合職であり、それゆえに女性の就職活動においては総合職をめぐる誤解や悩みが多く存在するようだ。キャリアを考えるうえで選択肢が多くなったように思えても、実は企業が期待する人物像とは程遠い人間になっていたり、結婚や子育てとの両立で悩んだりと、現状は依然として厳しい。

本書では、実際のところ男性であっても当てはまるような就職活動の成功体験や失敗談を扱っている。それを通して、就職活動の実態や大学生の多くが持つ勘違いについて、企業や大学への取材に裏打ちされた分析を試みている。最終章の内容は女性ならではの就職活動、その後のキャリアの難しさについて扱っているが、全体的には就職活動を控えている人なら読んで損のない内容である。

読んでいて思ったのが、日本企業の伝統である総合職採用という方式が、今後どこまで生き残るのかということだ。「何でもやります。どこへでも行きます」の精神を基本とした採用方式は、企業が社員のキャリア決定に大きく関わるものである。専門を活かして自らキャリアを形成することを基本とする欧米の視点からするとあり得ないとよく言われる。女性の活用を大々的に掲げるのであれば、総合職の概念自体見直しが必要なのかもしれない。

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# 『京王線・井の頭線沿線の不思議と謎』
2015/10/08 07:22
京王線・井の頭線沿線の不思議と謎 岡島建 監修 じっぴコンパクト新書 2015年



新宿を起点として、東京都の西部へ伸びていく京王線と、渋谷を起点として吉祥寺まで走る井の頭線。本書は、これらの沿線の名所を紹介したり、沿線の歴史、駅名の謎などを解き明かしていく。また、昔考えられていた京王線の延伸計画についても触れられていて、「なるほど」と思える情報に富んでいる。

私自身、生まれてから就職するまでずっと京王線沿線で育った生粋の京王線ユーザーであっただけに、本書の発売は待望であった。「はじめに」で監修者が語っている、「地味」や「堅実」といった言葉が京王線の印象として納得できる。沿線にはあまり派手な施設があるわけでもなく、主に沿線住民を都市部に運ぶという役割を担っているに過ぎない。それでも、かつて運賃に上乗せしていた工事費を返還するために運賃の値下げを行ったことや、いまだ特急料金が別に必要な列車を運行していないことも(今後そのような計画があると聞いているが)、庶民に対して堅実な鉄道である証である…うっかり本書に書かれていないことまで触れてしまったが、思い入れの強さとしてご容赦いただきたい。

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# 『新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動』
2015/09/21 20:09
新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動 原田曜平 朝日新書 2015年



メディアにおけるオタクイメージとは異なり、現在の若者(10代から20代)には、おしゃれでコミュニケーション力に長けて恋人までいる「リア充オタク」なる人々も出現している。また、若者の消費低迷が言われて久しいことを表すように、1人1人のオタク商品に対する消費額は減っている一方で、全体としてオタク市場は急成長している産業である。すなわち、これまでよりも多くの人がオタクになれる条件が整い、さらにオタク文化を気軽に楽しむ層まで出現しているのだ。本書の副題が示すように、現在オタクの世界には地殻大変動が起きている。

オタクの世代比較や、現代のオタクの実態調査に基づいたオタク論は、実際のところ私の肌感覚とも合っている部分もあり、納得がいった。さらに、本書で提案されている、現状に合ったサービスを生み出すビジネス戦略いかんによっては、まだまだ成熟しきっていない市場に好機を見出す企業も出てくるであろう。文化面、経済面の双方において知的好奇心を刺激される、読み応えのある本である。

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# 『若手社員が育たない。―「ゆとり世代」以降の人材育成論 』
2015/09/09 15:30
若手社員が育たない。―「ゆとり世代」以降の人材育成論  豊田 義博 ちくま新書 2015年



現在の新入社員は、「ゆとり世代」と括られ、真面目であるが戦力にはならないと嘆かれていることも多いという。あるいは、就職活動時には優秀であると評価されながらも、入社後に不適応に悩む社員も多いらしい。これは、決してその年代の若者の問題というわけではなく、そもそも日本の職場環境が悪化し、若者を育てる社会システムが崩壊していることによるというのが本書の主張である。ならば、人材を育て、組織の劣化を防ぐためには、今後どのような社会の姿が求められるのか。

本書が語る、ポテンシャル採用の後に社内で新入社員を教育していくというかつての職場が崩壊し、人材育成が劣化した様子はかなり納得のいくものである。通信手段が電話からメールへと移行していけば、先輩のしゃべりに耳を傾けて参考にする機会は奪われ、個人情報保護が厳しくなれば、机の上に散乱した書類をふと見ることもない。管理職がプレイング・マネージャーと化してしまえば、管理職の多忙さは以前とは比べものにならない。そのような状態では、若手は以前と同じような規模の教育を受けるのが困難であり、見よう見まねで行う学習さえも十分な機会が用意されない。

本書では、成長の鍵は勉強会や大学での学びにあると結論する。就職活動の現状について語った本でもよく見られるが、社会人として成長するためには、異質な他者との交流が大切であることが多い。現在考えられる、学びの場を提供できる組織が、勉強会や大学のゼミであるというのだ。ごく少数のエリートであれば、自ら世界を広げるだけの力を持っているだろうが、圧倒的多数を占める「ごく普通の」人間が学びの場を得ていくには、確かにこの辺りが最良の場と考えられそうだ。

もちろん、筆者は企業そのものが変わっていくという解決策も視野に入れている。大卒人口が増加し、もはや一握りのエリートではなくなった今、欧米で見られるような職種別の専門に従った採用を実施し、「どこへでも行きます。何でもやります」が一般的な雇用形態は幹部候補のみにしていくという提案は、迷える若者を救う手段となるであろう。

社会に大きな変革をもたらす提案も多いが、下手な経済政策より長期的でいて有効な視座を持っているように思う。ゆとり世代の1年上である私にとっては、未来が見えにくい世の中の現状打破へ向けた希望を感じる1冊であった。

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# 『京急沿線の不思議と謎』
2015/08/16 13:13
京急沿線の不思議と謎 岡田直 監修 じっぴコンパクト新書 2015年



川崎大師への観光客の輸送を目的としたことから始まり、京浜工業地帯の発展とともに成長し、神奈川県の三浦半島開発の推進力となってきた京浜急行。その歴史を紐解くと、相次ぐ駅舎の移動や軌条の変更に直面し、苦労してきた過程がよくわかる。特に、川崎や横浜といった神奈川県の大都市に京急の駅を作るに当たっては様々な紆余曲折があったとわかった。また、横須賀という関東地方の中では類稀なほどに米軍関連の施設が置かれた地域を通る路線ゆえの特殊事情などもわかって面白い。米軍関係者用の出入口を持った駅など、なかなか見られないと思う。

その他、駅名の謎や、沿線の観光地案内も含めた豆知識が満載で、読めばちょっと得した気分になれる1冊だ。


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