読むだけですっきりわかる国語読解力 後藤武士 宝島文庫 2009年
一般に流布している国語問題に対する誤解を正し、解答に必要なテクニックを伝授すると同時に、そもそも文章を読むときに気を付けるべきことも解説し、読解力自体も伸ばそうという目標も掲げた本。
本書の大元は受験参考書。それだけに、入試問題が求める国語力や、入試問題の解法に関する記述必要である。しかし、解答の根拠を得るためには、そもそも論説文がどのように構成されているのか、文学的文章では登場人物の心情がどのようにして描写されるのか、などの知識を欠かすことはできない。そこで、本書はそのような基本的な事項にきちんと遡った丁寧な説明を付けている。抽象と具体、主観と客観など、どうしても読解に必要な概念をできるだけ噛み砕いた言葉で説明し、読者が理解できるよう努めている。
対象は、難関中学を受験する小学生向きである。それでも、実際の対象はもっと幅広く、読解力・解答力を身に付けたい者と言えるだろう。「国語には学年がない」と言われる。国語や読解に不安を抱えているのであれば、大学受験生、社会人であっても得るものは大きい。ベストセラーとなっている現代文参考書でも、苦手な人が本当に知りたいと思っている基礎の基礎に当たる部分は、意外と書かれていないことがある。本書は、そのような根本の部分で躓いていたり、いまいち納得のいかない思いをしている人にとっては、疑問を解決する糸口となるであろう。例えば、「どんなことか」という問いに対して、問題文を変形させて「~こと」という文末に変形させる手順について段階的に説明した解説は秀逸。また、どのようにして難しい問題ができあがっていくかについての解説も必見。
但し、本1冊を読んだだけですぐに身に付くのではないところが、読解の難しい点。知識として持っていることを、実際にできるようにするには、ひとつ壁を乗り越える必要がある。本書で漠然とでも国語問題に対する向き合い方を把握できたなら、いよいよ実践練習あるのみだ。
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