理系志望のための高校生活ガイド 理系をめざしたら何をすればいいのか? 鍵本聡 講談社ブルーバックス 2000年
何となく、進路というと文系を選択するのが普通で、理系は難しい、大変そうだ、特殊だ、という印象が持たれている。それゆえ、理系の生徒がどのように受験に向かえば良いのかという情報は、案外少ない。理数専門の塾を経営する筆者が、豊富な指導経験から理系の生徒を主眼にして執筆した、高校生活のススメ。
そもそも、理系にはどのような世界が広がっているのかという点から、志望学部選び、実際の受験勉強の進め方、偏差値の仕組み、塾・予備校の利用法まで、おおよそ理系の受験にとって必要なことはすべて載っているのが、本書最大の売り。文理の選択で迷っている者から、実際の受験勉強に取り掛かっている者まで、幅広い高校生に対応できる。
本書の弱点は、大まかに言えば、2点だ。1点目は、平均以上に勉強のできる高校生が主眼に置かれていることだ。勧められている勉強法やペースは、ある程度勉強のできる高校生でないと、とても消化できないように思う。それに、中学校から高校1年生レベルの数学の計算で躓くレベルの高校生に対して、安易に「迷ったら理系」などと言えたものではない。2点目は、コーチングやカウンセリングの知見が活かされていない点。これは、10年前という出版の時期を考えれば、いた仕方ないことだとは思うが、「気の持ちよう」という言葉で片付けてしまっている部分が散見される。メンタル面の管理については、近年の書籍を参考にされたい。
弱点はあれど、本書の存在意義は大きい。世の中の高校生の6割から7割位が文系を選択する状況から考えると、理系の勉強法などといった本の需要は小さい。この本は、そんな社会に対して理系を見直させる役割も果たしているのではないだろうか。
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