「分かりやすい教え方」の技術 「教え上手」になるための13のポイント 藤沢晃治 講談社ブルーバックス 2008年
「分かりやすい教え方」とは、どんなものなのだろうか。この答えに迫るべく、そもそも教えるとはどのような行為なのかに始まり、具体的な心構えや技術を簡潔に示した、教えるためのハンドブック。教えることは案外身近に溢れている。突如先生役になった場合でも、教え上手になれる方法を伝授する。
痒いところに手が届く構成。「分かりやすい教え方」を定義するために、まずは「分かりにくい」教え方について考え、どこがいけないのかを探る。さらに、教える立場にある者が持つべく心構え、教えるための技術が紹介されていて、そのどれもが納得のいくものである。特に、技術については具体的な場面の例または比喩が必ず提示されていて、なるほどと思える。上司が部下に仕事を任せる状況を示した会話例と、その改善例。目標を示すことは、先にジグソーパズルの完成例を示すこと。などなど。本書で、比喩や例示は分かりやすく教えるための技術であると筆者は説明している。「教える」ことを語るために、筆者は自らの教える技術を存分に発揮しているのだ。この辺りが、感嘆すべきところである。
教える機会は身近に転がっている。あまり気張らずに取り組み、ついでに自分も成長してしまおう。それが、筆者が主張する姿勢。やはり、楽しむことも大切だ。
本書の高度な利用法としては、本書で述べられた教える技術を、相手と自分に用いることである。すなわち、人にものを教える場面で実践しつつ、自分の教える技術や心構えの達成度を評価するときにも、本書の内容を活用してしまおうという方法である。そもそも、相手を伸ばすために有効な技術は、自分を伸ばすためにも利用できるはずだ。自分が達成できたこと、今ひとつなところを分析し、褒めるべきところは褒め、悪いところは改善点を指摘する。定着させるために繰り返す。自分で説明してみる。問いを発してみる… 相手を教える技術の中には、自分を「教える」ためにも使えそうなネタがてんこ盛りである。そうやって自らも成長できれば、一石二鳥だ。
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