言語発達ってみんな同じ?
言語獲得の多様性を考える C.M.ショアー 佃一郎
監訳 岩田光児・岩田まな
訳 学苑社 2009年
一般的に、言語発達は、一語だけを発話する段階から、徐々に単語数を増やし、最終的には文の形式に到達すると考えられている。その考え方が主流であるゆえに、言語発達の指標は、名詞をどれだけ知っているかという観点に絞られやすい。しかし、実際、言語発達はそれほど単純には語れない。本書では、もうひとつの言語発達のパターンについても触れ、言語発達の個人差に迫る。
言語発達には、様々な要因が関係していて、個人差を生むのだということがわかる。特に、名詞を並べて発話するタイプだけでなく、典型的な形式を真似して覚えようとするタイプもいるというのは興味深い。思えば、第二言語の習得においても、単語の並べ替えによって何とか意味を伝えようとするタイプと、幅広く使える典型表現を少し改変して多くの状況に適用しようというタイプがある。それと似たように考えればよいのだろうか。
しかし、言語発達の個人差に関する諸相は、それほど単純には語れないとするのが、本書の立場。子どもによって、おおまかには2つのタイプがあるとはいえ、状況や学習内容によってはひとりの子どもが両方のタイプをうまく取り入れるケースもあるという。また、たとえ遺伝的にはまったく同じといえる一卵性双生児であっても、言語発達の過程は同一とは到底言えない現実があるそうだ。カオス理論に従えば、ほんの少し初期値の違いがあるだけで、まったく予想もつかない結果が生まれることも考えられるという。
原書は1995年発行と、やや古い本ではあるが、訳者が言っているように、そこで言われていることには古さは感じられない。現在、最新の理論では、言語発達の個人差がどのように説明されているのかについての興味もそそられる。
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