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# 『ドロップ』
2009/12/08 16:12
ドロップ 品川ヒロシ リトルモア 2006年



信濃川ヒロシは、小学校時代は優秀な成績を修め、全寮制の私立中学へ進学する。しかし、親元を離れたことによって生活は怠惰になり、学校の勉強はサボっていた。高校受験をしたいという口実を繕い、ヒロシは地元の公立中学への転入を決める。転校してすぐ、ヒロシはその学校では名の知れた不良に呼び出された。そこで根性焼きを見せたヒロシは、達也、森木、山崎ら不良の仲間に入り、中学校生活を送ることになる。ヒロシは持ち前のしゃべりで周りを笑わせる役を担い、喧嘩はそれほど強くなくとも、仲間との関係を維持し続けた。高校に入学するも、中学校の頃と変わらぬ素行を見せ、退学になる。兄のように慕っていたヒデ君の死をきっかけに、地元の不良仲間と別れることを決める。文体は、三人称でありながら、主人公ヒロシの心情を時折混ぜながら展開するという形式になっている。

読んでいて思うことは、不良をやるのにも、並外れたパワーが必要であるということである。憧れの不良となったヒロシは、必死になって不良の道を歩もうとするが、どこかその世界にどっぷり浸かることができない。食うか食われるか、すなわち、いじめるかいじめられるかの二択のみが存在する世界に飛び込んだヒロシは、どこか自分の矛盾を感じながら、食う側になることを決め、周りの仲間に流されつつ、日々を過ごしていた。けれども、親への反抗から、親の前では弱い自分を見せないように、暴言を吐く。一方、元不良というヒデ君や、暴走族入りを決めた赤城は、非常に礼儀正しい一面を持ち、自分の将来に対する考え方も、思いの外真面目だ。ヒロシはいつしか、不良としての体裁を保つことに精一杯になり、自分の将来について真面目に考えることから逃げ出していた。それを悟ったヒロシが、少し前に進もうとしたところで締めくくられるストーリーは、青春ものとして感動的である。
とはいっても、物語の中で、ヒロシは最後まで母親に対する謝罪と感謝の気持ちも持つには至らなかった。少し遅れた思春期の反抗期を迎えたヒロシにとって、母親の存在をストレートに受け入れることはできなかった。そこには、まだまだ幼いヒロシの心情が滲み出る。
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