世界カワイイ革命 櫻井孝昌 PHP新書 2009年
今や、日本語の「かわいい」は、"KAWAII"の形でもって、世界に通用する言葉へと変化した。日本のファッション誌を読み、ゴスロリや制服ファッションについて研究し、原宿に行くことを夢見る海外の少女たちが、急増しているという。本書は、そのような現状を海外の現地で行った取材を通して伝えるとともに、今後日本が、どのような戦略で「カワイイ」文化と向き合っていくべきかの方針を示す。
筆者は、外務省のアニメ文化外交に関する有識者会議の委員である。ヨーロッパやタイでの取材に基づき、日本のファッションがいかに世界で熱狂的に受け入れられているかを、これでもかという豊富な事例で示す。フランスやイタリアで日本のポップカルチャーに関するイベントを開けば、何万人もの人が集う。ゴスロリや制服ファッションを身に纏う海外の少女は、日本人に近づこうと努力する。しかも、このような現象は、日本人が意識しない間に、勝手に広がって行った現象なのであるという。日本のソフトパワーもここまで来たのかという驚きを隠せない。
意外なのが、海外では、漫画やアニメの世界とファッションとの結びつきが非常に強いということである。すなわち、日本の秋葉原と原宿の距離は、海外の人々にとってはそう遠いものではないというのだ。フランスやイタリアで日本のポップカルチャーに関するイベントを開けば、何万人もの人が集う。そこでは、漫画やアニメに関するコーナーとファッション関連のブースが平然と並ぶ。日本の感覚からすると、非常に珍しい光景ではないだろうか。
これほどまでに熱狂的な様を見せるカワイイ事情だが、それに対して日本人は、積極的に対応できていない。例えば、原宿などに店を構えるブランド店は、規模が小さく、海外での展開に対する負担が大きすぎず、踏み出せないのだという。このような現状を克服すべく、筆者は官の力を使いつつ、ファッションビルごと海外展開することを提案する。他にも、現地事情に通じた人間の存在は大きくなるだろう。
他にも、現地事情と言語に通じた人間の存在は大きくなるだろう。現在、外国語が使える日本人は、結構いるにもかかわらず、その才能を持て余している人材がいるのも現状であろう。一方、アパレルブランドは、海外向けの通信販売用に、外国語表記のHPをやっとこさ作成しているといった現状である。このような需給バランスのズレを考えると、何とも歯がゆくなる。本書が、多くの人のアイデアを結集するきっかけになったら、今後カワイイ業界の勢力がとんでもなく拡大するかもしれない。
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