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# 『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』
2010/07/03 16:05
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 岩崎夏海 ダイヤモンド社 2009年



まさにタイトルのごとく、高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読み、その内容を野球部の運営に活かしたら、どうなるのかを仮定して描いた物語。都立程久保高校に通う川島みなみは、野球部のマネージャーを務める親友の宮田夕紀が入院したことをきっかけに、2年生の途中から野球部のマネージャーに就任。『マネジメント』の記述を参考にしながら、部員達を甲子園へと導くべく奮闘する。

経営学、マネジメントという言葉を聞いて即思い浮かべるのは、企業の経営や戦略といったところであろう。しかし、本書はその考え方が間違っているということを示してくれる。マネジメントとは、人が集まるところ、組織があるところにおいて、どうすれば皆が満足しつつ、全体としての成果を得られるかという課題について考えることなのだということが、ひしひしと伝わってくる。人がいるところにマネジメントありなのだ。だから、部活という非営利団体にも、マネジメントの理論は当てはまる。

この部活という材料こそが、本書の肝である。部活は、中学校・高校で誰もが1度くらいは経験した可能性が高いゆえに、企業の経営といった材料と比べて、非常に親近感を感じられる。だから、社会に出たことのない高校生や大学生でも、大いに楽しめるのだ。また、野球部が甲子園に挑戦するという設定自体、多分に青春小説の要素を含んでいる。マネジメントと高校野球という2つのテーマをうまく組み合わせた筆者のセンスには脱帽である。

組織というものには、人を幸せにする面もあれば、人を悩ませる面もある。組織の中に自分の存在意義を見いだせずに、やり場のない思いを抱く人もいるし、苦手な人がいて、何となく人付き合いを敬遠してしまう人もいるであろう。本書から滲み出てくるのは、人と人が繋がって組織ができることによって得られる喜びや、生きがいである。マネージャー、野球部員、監督の交流を通して、組織の中で自分の役割を発揮し、責任感を持ち、結果を出していくことの素晴らしさを疑似体験することができる。

もちろん、うまくいき過ぎだという批判もあろう。選手がやる気を出し、目に見える結果が現れ、作戦が奏功し… しかし、組織は変わるということ、不可能が可能になる奇跡が起こることは、ワールドカップ南アフリカ大会での日本代表の戦いを見て、誰もが心の中で思ったことではないだろうか。そんなこともあるかもしれないと思わせるリアリティは維持する。作者のさじ加減の見事さが、ここにはある。

本書を野球本として読んでも、興味深い。程久保高校野球部が採用した作戦の一部は、セーバーメトリックスという、野球を統計的に分析して、戦略や選手選びを考える取り組みの提案と一致する。送りバントの禁止、ボール球を振らないで球数を稼がせるという作戦は、その代表格である。程久保高校が採用した作戦は、決して突飛なものでもないのだ。もちろん、盗塁の推進という面など、セイバーメトリックスの提案と反対の作戦もあることにも注意。野球本としての評価も気になる。


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