四コマ漫画 清水勲 岩波新書 2009年
既に葛飾北斎の時代から存在していたと言われる四コマ漫画。本書は、その歴史を紐解き、四コマ漫画の変遷を追う。
四コマ漫画には、こんなにも豊かな歴史があるのかと驚かされる。明治期の作品の中にさえ、現代から見ても面白い作品がある。
また、四コマ漫画の歴史は、世の中の流れと密接に関わっているということが、とてもよく伝わってくる。それは、そもそも明治時代に与えられた、時代の風刺という役割を、時代が変化しても四コマ漫画が担い続けてきたということなのかもしれない。例えば、高度経済成長期には、サラリーマンを主人公に据えた四コマ漫画が生まれた。他にも、明治・昭和の時代は、新聞四コマが非常に盛んであったのが、新聞離れが進むとともにその勢いを失うという流れは、世相をよく反映していると思う。
本書は内容の特性上、多くの資料が載せられているのも魅力である。資料を見ると、漫画の描き方の変化もよくわかり、興味が沸く。例えば、昔の漫画には、吹き出しを用いないでコマの外に台詞を示しているものがある。コマ割りも、現在最もポピュラーと思われる縦に4コマ並べたものだけでなく、2×2コマで描いているものもある。巻末には、代表的作家についての紹介、主な出来事の年表もまとめられていて、非常に親切。過去から現代を見つめ直すという、歴史を勉強する醍醐味を得られる。
近年は、四コマ漫画の雑誌が数多く出版される空前の四コマブームであるといえる。本書で取り上げられている「らき☆すた」だけでなく、2009年にアニメ化されて大ブームになった「けいおん」も記憶に新しい。本書は、そんな時代に相応しい教養を身に付けさせてくれる本ではないだろうか。
ちなみに、本書の筆者は今年で70歳を迎える。それでも昔の作品に固執せず、現代の作品にも興味を持ち続けている姿勢には感服してしまう。
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