セクシィ古文 田中貴子・田中圭一 メディアファクトリー新書 2010年
学校の教科書では絶対に取り上げられないような、古文のエロティックな世界が次々と紹介される。原文、くだけた現代語訳、状況を描写した絶妙な漫画とともに、古文に描かれるエロを楽しめる本。
古文に描かれたエロを読む。本書を一言で表現するなら、このような言葉が適切だと思う。エロという言葉は、小中学生が興味本位で知ろうとすることにも使えるし、大人の真面目な性的な問題についても用いることができる。本書の内容は、まさにそのような幅広いエロなのだ。
『源氏物語』が、やはり古文とエロのキーワードを結ぶ作品としては最も有名どころであろう。しかし、本書で扱われる作品には、『宇治拾遺物語』や『今昔物語集』など、教科書でも定番の説話集からの出典も多い。実は、性的な話題が好まれていたという現実がわかるとともに、教科書からはわからない、奥深い世界が広がっているかがわかる。
ただし、当時の時代背景ゆえに、男尊女卑の世界が描かれているのは、れっきとした事実。実質的にはレイプに当たってしまうであろう話も載っていて、その辺りに不快な思いを抱く人がいるであろう。その点では、万人にはお勧めできない。笑い話として読める話も多いだけに、残念。もちろん、現実は現実として知らなければいけないという考え方もあろうが。
それでも、本書の価値は大いにある。とにかく原文を読んでほしいという著者の願いから、すべての話には原文が付いている。作品の解説も、案外真面目。それでいて歯に衣着せぬ物言いも魅力的。1度目の読みでは、原文や解説までは印象に残りにくいかもしれないが、2度、3度と読めば、本当の意味で古文ができるようになるのではないかと思う。
もし、自分が男子校の国語教師だったら、10冊くらいまとめ買いして、生徒にいつでも貸し出しできるようにしたかもしれない。
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