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# 『GOSICK Ⅴ ―ゴシック・ベルゼブブの頭蓋―』
2010/08/20 14:48
GOSICK Ⅴ ―ゴシック・ベルゼブブの頭蓋― 桜庭一樹 富士見ミステリー文庫 2005年



夏休みが終わる頃、一弥はいつものようにヴィクトリカを迎えに行くが、彼女は見当たらない。一弥は、ヴィクトリカを探して汽車に乗り、「ベルゼブブの頭蓋」と呼ばれる場所へと向かう。謎の建物の中で立て続けに事件が起こる中、一弥とヴィクトリカは無事学園まで戻ることができるのか。

気丈に振る舞い続けてきたヴィクトリカが、初めて弱さを見せることになる。助けに来た一弥に対し、素直に寂しさを見せる。2人の仲が深まったなと思わせる名シーンだ。

名もなき村の事件以来、物語中に登場しては消え、また現れては姿を消していたブライアン・ロスコー、ヴィクトリカの母に当たるコルデリア・ギャロの秘密がとうとう明かされる。コルデリア・ギャロに至っては、初めてご本人の登場となる。また、ソヴュール国内における、オカルト省と科学アカデミーの対立構造という、重要な設定も詳しく明かされる。

ソヴュール国内の対立には、ヴィクトリカの父、アルベール・ド・ブロワが大いに関わっていて、ヴィクトリカの存在そのものが鍵であった。彼女がこれまで、なぜ世の中の人間に対して時に非常に冷酷な態度を取ってきたのか、なぜ世間を震わせる怪奇事件や心霊現象に極めて懐疑的であったかの謎は、彼女の生い立ちに隠されていたのだ。自分の存在意義について悩むヴィクトリカに対して一弥がかけた言葉は、胸を打つ。

ベルゼブブの頭蓋で起こった事件については、一応の解決を見た。しかし、本当の事件はまだまだこれからだった。不吉な建物を何とかぬけ出した一弥とヴィクトリカが乗り込んだ列車で、再び殺人事件が起こる。真の意味での安らぎが訪れるのは、次作まで待たなければならない。本作はまた、次の物語の序章でもあるのだ。


△過去の記事△
『GOSICK Ⅱ ―ゴシック・その罪は名もなき―』
『GOSICK Ⅲ ―ゴシック・青い薔薇の下で―』
『GOSICK Ⅳ ―ゴシック・愚者を代弁せよ―』
『GOSICK s Ⅱ ―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車―』
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# 『GOSICK s Ⅱ ―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車―』
2010/05/31 21:03
GOSICK s Ⅱ ―ゴシック・夏から遠ざかる列車― 桜庭一樹 富士見ミステリー文庫 2006年



聖マルグリット学園は、2ヶ月の夏休みに入る。学校は休みでも、事件は休んでくれない。相変わらず、ヴィクトリカに振り回されつつ、一弥は日々を過ごす。夏の間に起こった事件をまとめた全6話の短編集。

いつもの長編と比べると、非常にのどかな事件や微笑ましい事件も多く、ほっとできる内容。一弥の兄とヴィクトリカとの謎かけ勝負が展開される、「仔馬のパズル」、イタリア人少年の淡い恋心が事件の核心となる「花降る亡霊」、過去にあった2人の少女の物語と現在がパラレルに描かれ、やがて2つの物語が交差する「夏から遠ざかる列車」、男嫌いの一弥の姉と軍人の武者小路との物語である「怪人の夏」、街に出た一弥が偶然遭遇した盗難事件を扱った「絵から出てきた娘」、ブロワ警部が幼馴染の女性、ジャクリーヌのために奮闘する「初恋」と、バラエティに富んだ展開。

過去の長編で触れられていたことが再び出てくるなど、長編を読んでいた読者には嬉しい箇所もある。また、ついに本格的に登場した一弥の姉の瑠璃は、一弥の性格や生い立ちを語る上で欠かすことのできない人物になりそうだ。瑠璃の設定一つ一つが巧い。

第五話の「絵から出てきた娘」の最後には、ヴィクトリカが普段は生徒でいっぱいのベンチで過すシーンがある。彼女にとって、夏休みは学園内を比較的自由に歩き回れる数少ない機会なのであろう。彼女にとっての長いようで短い、儚いひとときが演出されていた。


♦過去の記事♦
『GOSICK Ⅱ ―ゴシック・その罪は名もなき―』
『GOSICK Ⅲ ―ゴシック・青い薔薇の下で―』
『GOSICK Ⅳ ―ゴシック・愚者を代弁せよ―』

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# 『GOSICK Ⅳ ―ゴシック・愚者を代弁せよ―』
2010/04/04 14:20
GOSICK Ⅳ ―ゴシック・愚者を代弁せよ― 桜庭一樹 富士見ミステリー文庫 2005年



1924年のヨーロッパ、架空の小国ソヴュール王国を舞台に、極東からの留学生、九城一弥と聖マルグリット学園の捕らわれの姫、ヴィクトリカが繰り広げるミステリーの第4弾。今回は、聖マルグリット学園に隠された錬金術師の謎を巡る物語。夏休みを目前に控え、浮かれた雰囲気の学園内の時計塔で死者が見つかる。その事件と錬金術師との関係とはいかに。

前巻までの、学園の外に出て冒険を繰り広げる形式とは異なり、今回の謎は学園内の謎。舞台はほぼ学園内に固定され、一同は謎の解明を目指す。派手な設定がない分だけ、今後の話に繋がる重要な人物や、鍵となる過去の歴史に触れられる。ヴィクトリカの出生の謎、彼女と一弥の今後にのしかかる暗い影。錬金術師の秘密を暴く過程で、隠されていた事実が徐々に明るみに出される。

この巻で、ヴィクトリカとアブリルが初のご対面となる。これまで一弥の心を鷲掴みにしてきたヴィクトリカのご登場に、アブリルもたじたじ。アブリルの淡い恋心も見所。

謎の錬金術師、リヴァイアサンは、思いの外、悲しい死を遂げた人物であった。背景にあるのは、ヨーロッパの植民地主義。相変わらず、ヨーロッパの歴史の闇を扱った、重さのある設定である。

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# 『GOSICK Ⅲ ―ゴシック・青い薔薇の下で―』
2010/01/10 14:20
GOSICK Ⅲ ―ゴシック・青い薔薇の下で― 桜庭一樹 富士見ミステリー文庫 2004年



両対戦間のヨーロッパ、架空の小国ソヴュール王国を舞台に、極東からの留学生、九城一弥と、聖マルグリット学園の捕らわれの姫、ヴィクトリカが繰り広げるミステリーの第3弾。今回は、一弥が出掛けた先の首都ソヴレムのデパートで起こった奇怪な事件に対し、一弥が謎の解明を目指す。ところが、肝心のヴィクトリカは風邪引きで学園内の自室に籠もりきり。一弥は電話でヴィクトリカの助けを借りながら、事件解決に向かって奔走する。

本編は、デパートから人が消えてしまうといった噂の流れる首都ソヴレムに一弥が独りで向かう話。ヴィクトリカは風邪で寝込んでいるため、普段の犯人によるMonologueに代わって、ヴィクトリカの様子がBedroomという挿話で描かれる。謎解き以外にも、前巻で存在の確認された謎の人物、ブライアン・ロスコーの姿が出たり、ブロワ警部の髪型の由来がわかったりと、本作の世界に広がりをもたらす話もあるのが魅力。そしてもうひとつ、一弥とヴィクトリカのすれ違いが最もよく描かれているのが特徴。もちろん、恋人同士のすれ違いのような重大なものとは言えないまでも、2人のやり取りは面白い。風邪にうなされるヴィクトリカが一弥からの電話に期待して出ると、一弥は事件の謎についてばかり話し、ヴィクトリカを怒らせる。また、ヴィクトリカは一弥からの電話が嬉しいのに、一弥の話の内容に腹を立て、冷たい態度をとってしまう。真面目で優しく、しかし鈍感な一弥を傍から見ている教師セシルの気持ちに共感できる。
相変わらず、1924年のヨーロッパを舞台にしつつ、現代社会に対する問題を投げかけるような内容もある。今回は、科学が進歩するにつれて、かえって人間は科学では説明できないような、わからない領域を求めるということ。まさに、現代の過剰な心理学、脳科学人気、そしてスピリチュアル信仰に警鐘を鳴らすような教訓であろう。

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# 『GOSICK Ⅱ ―ゴシック・その罪は名もなき―』
2010/01/03 10:46
GOSICK Ⅱ ―ゴシック・その罪は名もなき― 桜庭一樹 富士見ミステリー文庫 2004年/角川文庫 2009年



舞台は1924年のヨーロッパ、架空の小国ソヴュール王国。その王国の領土内、アルプス山脈沿いに、聖マルグリット学園があった。学園の図書館で、東方からの留学生、九城一弥は少女ヴィクトリカと出会う。彼女は、退屈しのぎに謎を解くのが好きであった。一弥がヴィクトリカに振り回され、共に冒険し、謎を解き明かすというミステリーの第2弾。今回は、ソヴュールの領土内にある名もなき村が舞台。ヴィクトリカの出生の謎とも関わる事件が起こる。果たして事件の真相とは・・・

一弥とヴィクトリカの掛け合いが魅力的なのが、本シリーズの特徴。それは、本書でも存分に展開される。本当は一弥のことを大事に思いながらも、素直に接することのできないヴィクトリカと、そんな彼女に対して時にがっかりし、時に怒りを感じつつも、やはり気になる一弥は、事件に巻き込まれていくことで、互いの絆を深めていく。物語の最後でヴィクトリカが一弥にある言葉をかけるシーンが微笑ましい。
ミステリーの内容としては、事件の謎はもちろんのこと、その他の複線も、物語の最後に近付くにつれ、確実に回収されていく。エンターテインメントとしての様相を完璧に呈している。
本シリーズの特徴は、様々な語り手によって展開される物語である。第三者の視点から語られることが最も多いけれども、時に一弥の視点から語られることもある。そして、各章の間には、monologueという挿話があり、これらは犯人の視点で述べられる。

『GOSICKⅡ』における重要テーマとしては、少数民族の迫害と、権威によって定められた自分の運命にどう抗うかという問題がある。謎解きだけでない要素が含まれているのも、本書の魅力。

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