GOSICK Ⅳ ―ゴシック・愚者を代弁せよ― 桜庭一樹 富士見ミステリー文庫 2005年
1924年のヨーロッパ、架空の小国ソヴュール王国を舞台に、極東からの留学生、九城一弥と聖マルグリット学園の捕らわれの姫、ヴィクトリカが繰り広げるミステリーの第4弾。今回は、聖マルグリット学園に隠された錬金術師の謎を巡る物語。夏休みを目前に控え、浮かれた雰囲気の学園内の時計塔で死者が見つかる。その事件と錬金術師との関係とはいかに。
前巻までの、学園の外に出て冒険を繰り広げる形式とは異なり、今回の謎は学園内の謎。舞台はほぼ学園内に固定され、一同は謎の解明を目指す。派手な設定がない分だけ、今後の話に繋がる重要な人物や、鍵となる過去の歴史に触れられる。ヴィクトリカの出生の謎、彼女と一弥の今後にのしかかる暗い影。錬金術師の秘密を暴く過程で、隠されていた事実が徐々に明るみに出される。
この巻で、ヴィクトリカとアブリルが初のご対面となる。これまで一弥の心を鷲掴みにしてきたヴィクトリカのご登場に、アブリルもたじたじ。アブリルの淡い恋心も見所。
謎の錬金術師、リヴァイアサンは、思いの外、悲しい死を遂げた人物であった。背景にあるのは、ヨーロッパの植民地主義。相変わらず、ヨーロッパの歴史の闇を扱った、重さのある設定である。
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