GOSICK Ⅱ ―ゴシック・その罪は名もなき― 桜庭一樹 富士見ミステリー文庫 2004年/角川文庫 2009年
舞台は1924年のヨーロッパ、架空の小国ソヴュール王国。その王国の領土内、アルプス山脈沿いに、聖マルグリット学園があった。学園の図書館で、東方からの留学生、九城一弥は少女ヴィクトリカと出会う。彼女は、退屈しのぎに謎を解くのが好きであった。一弥がヴィクトリカに振り回され、共に冒険し、謎を解き明かすというミステリーの第2弾。今回は、ソヴュールの領土内にある名もなき村が舞台。ヴィクトリカの出生の謎とも関わる事件が起こる。果たして事件の真相とは・・・
一弥とヴィクトリカの掛け合いが魅力的なのが、本シリーズの特徴。それは、本書でも存分に展開される。本当は一弥のことを大事に思いながらも、素直に接することのできないヴィクトリカと、そんな彼女に対して時にがっかりし、時に怒りを感じつつも、やはり気になる一弥は、事件に巻き込まれていくことで、互いの絆を深めていく。物語の最後でヴィクトリカが一弥にある言葉をかけるシーンが微笑ましい。
ミステリーの内容としては、事件の謎はもちろんのこと、その他の複線も、物語の最後に近付くにつれ、確実に回収されていく。エンターテインメントとしての様相を完璧に呈している。
本シリーズの特徴は、様々な語り手によって展開される物語である。第三者の視点から語られることが最も多いけれども、時に一弥の視点から語られることもある。そして、各章の間には、monologueという挿話があり、これらは犯人の視点で述べられる。
『GOSICKⅡ』における重要テーマとしては、少数民族の迫害と、権威によって定められた自分の運命にどう抗うかという問題がある。謎解きだけでない要素が含まれているのも、本書の魅力。
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