やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6.5 渡航 小学館ガガガ文庫 2014年

TVアニメシリーズの番外編、「だから、彼らの祭りは終わらない」の裏を描いたストーリーと、9巻直後のクリスマスパーティーの様子を収録した巻。文化祭が終了後、奉仕部は悩み相談のホームページを作成した。そこに来た依頼は生徒会長の城廻めぐりからのもので、「体育祭を盛り上げたい」というものだった。しかし、生徒会役員と各部活の代表で構成されている体育祭実行委員会は、委員長も決まっておらず、体育祭を盛り上げるための目玉企画も未定のままというのが現状であった。奉仕部の提案で委員長に推薦されたのは、文化祭実行委員長を務めた相模南だった。体育祭の準備を進めていく中で、奉仕部と各部活、委員長の相模との間に緊張関係が生まれ、事態は悪化していくのだった。
毎回のことではあるが、作者が描く学校の風景というのは、恐ろしいまでにリアリティがある。クラス内での序列、生徒間の微妙な距離感など、高校生が過ごす空間の息苦しさを描かせたら、渡氏に肩を並べるものはライトノベル業界ではそういないように思える。作者も「なかがき」で書いているが、今回委員長になった相模という人物は、いかにもクラス内にいそうな人物である。トップカーストにはなれず、かといって、下位カーストでもない。上からの視線に耐えつつ、カースト上位として生きる苦しさも持っている。そして、人間的には甘いところがあり、能力や人心掌握力にはやや欠ける。どこまでも身近な人物として描かれた。そんな相模に対して少しは光の当たるラストが描かれた本作は、他とは違う力を持った奉仕部の面々以外でも学校でうまく生きる方法はあるのだと伝えてくれているのだろうか。
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