日本人はなぜシュートを打たないのか? 湯浅健二 アスキー新書 2007年
なかなか刺激的なタイトルで、前から気になっていた本。
それでも、正直言って、内容は日本人の文化がどうだといったようなものである気がして、読んでいなかった。
だが、読んでみて驚き。確かに全体の根底にあるのは、日本人よリスクを冒せというメッセージである。しかし、書かれている内容自体は、サッカーがいかに有機的な個々の動きの上に成り立っているかということ、ボールのないところで動き回ることや守備に奔走することの大切さである。それが、筆者がドイツ留学し、選手として感じ取ったことや、指導者になって実感したことを中心に、初心者にもわかりやすく書かれている。読んでみると目から鱗で、サッカーの見方が変わる。
サッカーを見るとき、我々はともすると、シュートした選手や、華麗なスライディングでボールを奪った選手のみに目が行ってしまう。しかし、その裏では他の選手がシステマティックに相手を翻弄し、チャンスを創り出しているのだ。よくよく考えれば当たり前のことだ。それでも、どのような見方をすればよいのかは、私を含めて初心者にはわかりにくい。その部分が、本書では至るところで示されている。
また、本書は優れたコーチングとは、という視点でも読むことができる。本書における監督やコーチを、上司、教師、親などに置き換えれば、たちまち本書が立派な教育書へと変身する。
タイトルは、それ自体目を引くものだが、語られる内容が濃い良書である。
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