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# 『残念な教員 学校教育の失敗学』
2015/04/24 16:46
残念な教員 学校教育の失敗学 林純次 光文社新書 2015年



本書における「残念な教員」とは、決してお茶の間を騒がせている暴力教員や破廉恥教員ではなく、授業がきちんとできなかったり、生徒を成長させるという使命感に欠けていたり、生徒とのコミュニケーションがきちんと取れない教員のことを指す。筆者によれば、そのような教員は全体の8割を超えており、非常に憂慮すべき問題である。本書では、このような事態を打開するための方法や、教員が持つべき心掛けが述べられる。

現職の教員にとってはとても耳の痛くなる、それでいて本質を突いた内容である。授業や生徒指導ができなくても、教員という特権的な立場を武器にして教育の現場に居座り、教育に対する不信感を抱かせてしまうような教員の姿の描写は、学校という場に少しでも身を置いたものであれば心当たりがあるのではないだろうか。筆者は、一般企業に勤務した後、約10年間の教員経験を積んでいて、教員として必要な心構えについて厳しい視点から指摘し、現場の教員の奮起を促している。美談を語るだけでなく、実際に高い理想に向かって日々努力を惜しまない筆者の姿勢に感化される教員は多いはずである。板書やプリント作り、課題返却に至るまで、プロとして何を考えどう実践するべきなのか考えさせられる話題も多い。

しかし、本書は教員の意識向上のみを解決策とはしない。そもそも教員という職は教室という閉鎖的な空間を活動の場とするゆえに、お互いの姿が見えにくい。これは、問題教員の検出に不具合をきたすだけでなく、意識のある教員が優秀な教員から学び取るという機会も減らしてしまう。教員が成長する場をどう確保するかという構造的な問題についても言及しているのは、さすが現職教員によって書かれた本の為せる業であるように思う。
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# 『就職力で見抜く!沈む大学 伸びる大学』
2014/01/24 22:15
就職力で見抜く!沈む大学 伸びる大学 木村誠 朝日新書 2014年



大学選びにおいて、就職力という視点は今や欠かせないものになっている。低成長の時代だからこそ、そんな現状に適応しようと奮闘した大学が、2000年代前半までの就職氷河期以降、急速に就職率を伸ばしている。本書は、そのような旬の大学を紹介し、大学を見る目を養ってもらおうというものである。ごく簡単にではあるが、就職率を伸ばした上位100校の取り組み例が案内されていて、興味深い。

また、最終章では離職率などの問題に触れ、卒業生の受け入れ先である企業の実態を示し、安易に数値を鵜呑みにして情報に飲まれないように注意を促している。大学は現在就職率に拘っているわけだが、世間が表面的な数値に囚われる限りは、大学も表面的な数値の獲得に勤しむことになる。しかし、これでは就職活動、ひいては働くことの本質を見失ってしまうのではないだろうか。本書は大学生の就職に関する実態を知る意味でも役に立つ。特に、女子大の就職状況に関する分析や、業種ごとの離職率の捉え方は、なるほどという点が多々あった。

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# 『大学入試 担当教員のぶっちゃけ話』
2013/11/19 10:27
大学入試 担当教員のぶっちゃけ話 櫻田大造 中公新書ラクレ 2013年



多様化を極める大学入試。AO入試、指定校や公募の推薦入試、一般入試の何とか方式… 今や、1つの大学を何回も受験するチャンスがあるのは常識となりつつある。しかし、そんな日本の常識は海外には当てはまらず、日本の入試はガラパゴス化しているというのが、筆者の論である。海外との比較、試験監督の裏話、入試作問の事情など、大学教授ならではの視点から語られる入試の裏事情満載の本。

かつて、石渡嶺司・大沢仁著『就活のバカヤロー』が、疲弊する就職活動の状況をレポートし話題となったが、本書もまさにそれに匹敵するような、「入試のバカヤロー」と叫んでしまいたくなるような現状を、大学教授の視点から語っている。受験生はもちろんのこと入試に苦しむわけだが、大学教員だって、入試業務の辛さに弱音を吐きたくなっているのだろう。確かに、働けど働けど収入は増えず、ギリギリの生活をしている人から見れば、何を甘いことを言っているという批判はあるかと思うが、やはり研究と教育を本職とする大学教員が入試の雑務に追われる現状は好ましくない。このままでは、入試制度に嫌気の差した優秀な教員の海外流出が危ぶまれる。ここは何とかしなければいけない。

一方、入試に苦しむ大学ではあるが、だからこそ、入試をどのように工夫して乗り越え、入学してきた学生を責任を持っていかに育て上げるかといった大学側の努力は、受験生からすると大学選びの基準にもなりえる。入試会場での対応から、各大学による合格発表の工夫まで、自らのお子さんを大学に入学させた保護者でもある著者ならではの視点が活きる。入試は確かに疲労困憊を強いられる制度かもしれないが、だからこそ、工夫の余地があり、大学生き残りの鍵にもなるのかなと思った。

作問・試験監督・採点といった業務の裏話が大学教員の視点から活き活きと語られる部分は、なるほどとうならされたり、思わず笑いたくなるような事態が描かれていたりで、自然と次々とページをめくっていた。誰が読んでも、世の中に新たな視点を得られると思う。

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# 『キャリア教育のウソ』
2013/10/09 23:37
キャリア教育のウソ 児美川孝一郎 ちくまプリマー新書 2013年



自分のやりたいことを思い描き、そこから職業調べを行い、自分の就きたい職業を見つける。極め付けには、職場体験やインターンシップに臨み、現場を体験する。そんな過程を通じて「職業観を養う」ことや「勤労の尊さを学ぶ」ことを目指すのが、キャリア教育の一般的な方法である。筆者は、そのようなキャリア教育を一刀両断し、表面的ではない真のキャリア教育を提案する。

近年、急速に勢いを増しているのが、キャリア教育である。混迷を極める世の中で、どう生きるのかを考えるのは、とても大切なことだが、本質を見極めた教育を受けなければ、あるいは自分の頭をしっかりと働かせなければ、せっかくの試みも無意味に終わってしまうだろうというのが、筆者の見方である。筆者の指摘は、かなり納得がいく。例えば、いざ非正規雇用になってしまった場合の生き方については何も示唆を与えない教育、「やりたいこと」を中心に据え、社会経験の少ない学生の知識から職業を選ばせる教育、先の見えにくい現代を生きる若者に「キャリア・プラン」を作らせようとする教育… これらの取り組みにはキャリア教育のほころびが感じられる。

ただし、本書は現場のキャリア教育の実践をただ批判するだけではない。現実的な取り組みの中で、優れたものはしっかりと紹介しているし、定番のキャリア教育も、向き合い方を工夫すれば、とても有益になるというアドバイスもしてくれている。そもそも、キャリア教育の発生には、若者の就労支援や就職率アップといった社会の要請も大きく関わっている。

キャリア教育は、一部の人間が担うものではないと、本書を読んで強く感じた。学校現場のスタッフや現役の学生以外にも、本書に目を通す人が増えれば、世の中のキャリア観に変化が生まれるであろう。

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# 『先生!』
2013/09/11 21:36
先生! 池上彰 編 岩波新書 2013年



「先生!」という言葉から思いつくエピソードとはという質問をぶつけ、集められた27人からの回答。様々な職業・境遇の人々が縦横無尽に語る先生の姿は、それぞれの人物にとっての教育観を映し出す鏡のようだ。27人の語る先生像はまちまち。プラスの印象もあれば、マイナスの印象もあり、人生に大きな影響を与えた場合もあれば、大して記憶に残っていない場合もある。教師の鑑とも言うべき素晴らしい先生の話もあれば、結果的に反面教師という形で生徒の人格形成に関わった先生の話もある。

どんな教師が良いのかという問いに対して、明確な解答を示すことはできない。本書を読み終えた後に抱いた率直な感想だ。27人のエピソードの中には、学ぶ喜びによって人間が変わっていく姿を描いた教育の根幹に触れるような珠玉のエピソードもあり、心動かされるものがいくつもあった。反面、最後の池上氏と大田光氏の対談で話題になったように、教育に期待しすぎることに対する批判と思える文章もあり、教育の難しさを改めて実感した。

ただ1つ言えることとしては、自分なりの信念を持って教育に当たる先生は強いということである。確固たる信念を持ってすれば、たとえ正の方向であっても負の方向であっても、学んだ生徒は確かに自分の道を見出して歩いていけるような気がする。

今、まさに教育という世界で学ぶ立場にいる者や、その保護者にとっては、少し離れた視点から教育を眺め、本書を心にゆとりを持つ契機としてもらいたい。そして、現役の先生には、自らの進む道を考える参考にしてもらいたい。

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# 『教師の資質 できる教師とダメ教師は何が違うのか?』
2013/09/04 23:52
教師の資質 できる教師とダメ教師は何が違うのか? 諸富祥彦 朝日新書 2013年



疲弊した空気に包まれる教育現場。その実態は、教師の中で鬱病になる者の割合が他の業種と比べて2.5倍という数値からも窺える。それでいて、現場はいじめなど、子ども達が活き活きと学校生活を送る場とは言い難い惨状に見舞われ、それに追い討ちをかけるような、保護者、教師、地域社会の関係の崩壊など、現代の教育が抱える問題はあまりにも大きい。本書は、熾烈を極める教育現場で前線に立つ教師に求められる資質について述べ、教師、保護者、地域社会など、教育に関わるおよそすべての人々に教育のあり方について正しい認識を持って行動して欲しいという願いから生まれたものである。

「教師の資質」というタイトルから推測されるとおり、本書の大半を占めるのは、現代の教員に求められる能力、思考法、知識についての筆者の持論である。特に、困難さを極める人間関係の問題について、多くの紙面が割かれている。そこでは、時に現場の教員にとっては耳の痛くなるような話さえある。しかし、筆者があとがきで述べているように、それは教師以外の人間にも教師を正しく理解してもらい、教師が無用のクレームや批判に晒されるのを防ぎたいという筆者の思いあってのこと。筆者は、9割方の教師は熱心で情熱を持って仕事に取り掛かっていると、経験から感じているのだ。長年カウンセリングに携わってきた筆者だけあり、その視点からの提言には説得力がある。子どもに関わるすべての人間が、それぞれの立場で本書に触れたら、きっと今の教育現場に温かみが生まれるのではないかと思わせてくれる。

ちなみに、教科指導を通した教育という観点からは、あまり多くのことは語られていない。本書が焦点を置いているのは、あくまで「心」の面である。それが現代の教育においてとても大切なのは事実だが、教科指導の意義、教科指導の専門家としての教師の役割は、現代社会においては、むしろ大きくなっているように思う。特に高校では、教科指導を通した全人教育という視点が欠かせないであろう。その点は、むしろ近年ブームの熱い予備校教師から学んだほうが良いのだろうかと思ってしまった。

現場の悩める教師にとっては、随所に書かれた懸命に働く教師へのエールが、心に響くことだろう。教師としての仕事に疲れた時に、是非紐解いてもらいたい本でもある。自分だけが悩んでいるのではないと知るだけで、随分と気が楽になるものだから。

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# 『女子校力』
2013/05/04 22:51
女子校力 杉浦由美子 PHP新書 2013年



「女子校離れ」あるいは「共学志向」という言葉が囁かれて久しい。中学受験をするお嬢様方は、どうも女子校に対するイメージが悪く、共学校を志望する傾向が強いらしい。そんな世の中だからこそ、女子校の実態を解明する本があっても良いのではないか。本書は、78名の女子校卒業生と在校生に取材した成果を纏め上げ、女子校出身者の特徴について考察したものである。

以前本ブログでも取り上げた『女子校育ち』が、女子校の実態をざっくばらんに語ったものだとすれば、こちらは分析的な視点も加えた内容になっている。たとえば、女子校の雰囲気とスクール・カーストとの関係、共学校の出身者との本質的な違い、職場での様子などだ。特に、スクール・カーストに関する記述は、さすがオタク関係の書物も出版している筆者だけあり、鋭い視点から詳細に論じている。

本書を読んで、女子校も捨てたものではないのではないかと思った。男性の目を気にしなくてすむ分、思う存分に自分の好きなことに没頭できるし、何部に所属しようと周囲からとやかく言われることはない。多少男性との付き合い方が不器用でも、その姿を可愛いと思ってくれる男性はきっと少なからずいるのではないかと思う。「空気を読まない」と揶揄されようと、これからの時代に必要なのは、むしろ思い切って出る杭になることだと割り切れば良い。本書を読み進めていくと、タイトルの「女子校力」という意味が少しずつわかってくる。女子校出身者よ、今こそ立ち上がれ!そんなメッセージを発したくなった。

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# 『危ない私立大学 残る私立大学』
2012/08/12 10:55
危ない私立大学 残る私立大学 木村誠 朝日新書 2012年



著者の予想によると、今後10年で私立大学100校以上が消えてしまうという。受験生の心情としては、自分の受験する大学がそう簡単に消えてなくなってしまっては困るであろうし、大学のOB・OGの立場からしても、母校の消える寂しさは想像に難くない。学生数や教育研究費といった、筆者なりの分析指標を用いたサバイバル度ランキングに、高校のお薦めなども加味し、私立大学の生き残り可能性について議論する。

どんな場合であっても、評価するには基準が必要であるし、その基準が妥当であるかの検討は必要であろう。例えば、本書でも結局のところは大都市圏にキャンパスを構えた大きな大学ほど上位にランクインする傾向がある。しかし、それを言っていては始まらない面もある。筆者なりの基準で選ばれた数値を受け入れ、分析をじっくりと読んでこそ、本書の価値があると言える。

また、本書で注目すべき点は、地方で頑張っている私立大学を評価している点である。元々、募集には苦労する地方私立大学にも、優れた取り組みをして、受験生の信頼を得ている大学が存在する。地元志向が高まる現在、地方の元気印にも頑張ってもらいたい。

絶えず変化する社会のニーズに対応しつつ、どこまで社会に媚びすぎずに自分達の姿勢を貫いていくか。私立大学の直面する問題は、我々国民に対する問いかけでもある。

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# 「教える技術」の鍛え方」 人も自分も成長できる
2012/05/04 16:55
「教える技術」の鍛え方」 人も自分も成長できる 樋口裕一 筑摩書房 2009年



学校教育の場に限らず、教えるという行為の難しさに直面する場合は案外多い。どうすれば良い教師になれるのかという疑問に対して、長年予備校で教壇に立ってきた著者なりの解答を示した本。

少人数を教えるための技術から、大人数を教える場合の注意点まで、幅広くまとめられていて、多くの人にとって参考になるであろう。また、説明の方法だけでなく、相手が学ぼうとする意欲を引き出すための方法についても語られていて、本当の意味での教師になるにはどうすれば良いのか、考えるための材料が充実している。筆者自身の失敗例も紹介されているので、まずい場合をしっかりと実感しながら、自分の方法を確立する術が提供されているのも良い(実は、失敗談を示すこと自体、筆者が持つ教える技術の1つなのだ)。

大人数を教える場合には、照準の設定やクラスのコントロールなど、ある程度教える側が注意しないといけないことがある。最終的に良い結果を得るために、厳しく接さなければならない局面もあろう。そんな面についても触れている点でも良書と言える。

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# 『女子校育ち』
2011/05/03 15:55
女子校育ち 辛酸なめ子 ちくまプリマー新書 2011年



自らも女子校出身という著者が、取材を重ねてまとめあげた、女子校の実態をつまびらかにした本。学校ごとのカラーは? 恋愛の実態は? 男性教師の処遇は?…誰もが気になる女子校の秘密を明らかにする。

女のすなる女子校生活というものを男もしてみんとてするなり。なんてことができればいいものの、現実には不可能だ。男に育った以上、女子校の教師にでもならない限り、経験不可能な女子校の世界。いわば、禁断の園だ。その実態を、様々なキーワードを基に、縦横無尽に語り尽くしたのが本書だ。著者の筆致は非常に滑らかで、浮世離れしたお嬢様方に対しても、中堅校に通うギャル系の生徒に対しても、ユーモアと機知に富んだ素晴らしいコメントの数々を残す。

恋愛事情や男子校との関係、卒業後の様子など、取材の成果が如実に現れているトピックが興味深かったのは事実だが、意外と印象に残ったのが、男性教師の扱いだ。世間からすれば、女子校の教員である男性は、何かとうらやましがられる立場にありそうだが、それは違うらしい。教員によっては、日々生徒からのからかいのネタにされたり、教員同士の関係でも肩身が狭い思いをしたり、挙げ句の果てには生徒からのいじめに遭ったり… 女子校の男性教員よ、負けるなというメッセージを送りたくなってしまった。

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