危ない私立大学 残る私立大学 木村誠 朝日新書 2012年
著者の予想によると、今後10年で私立大学100校以上が消えてしまうという。受験生の心情としては、自分の受験する大学がそう簡単に消えてなくなってしまっては困るであろうし、大学のOB・OGの立場からしても、母校の消える寂しさは想像に難くない。学生数や教育研究費といった、筆者なりの分析指標を用いたサバイバル度ランキングに、高校のお薦めなども加味し、私立大学の生き残り可能性について議論する。
どんな場合であっても、評価するには基準が必要であるし、その基準が妥当であるかの検討は必要であろう。例えば、本書でも結局のところは大都市圏にキャンパスを構えた大きな大学ほど上位にランクインする傾向がある。しかし、それを言っていては始まらない面もある。筆者なりの基準で選ばれた数値を受け入れ、分析をじっくりと読んでこそ、本書の価値があると言える。
また、本書で注目すべき点は、地方で頑張っている私立大学を評価している点である。元々、募集には苦労する地方私立大学にも、優れた取り組みをして、受験生の信頼を得ている大学が存在する。地元志向が高まる現在、地方の元気印にも頑張ってもらいたい。
絶えず変化する社会のニーズに対応しつつ、どこまで社会に媚びすぎずに自分達の姿勢を貫いていくか。私立大学の直面する問題は、我々国民に対する問いかけでもある。
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