国際人の英会話学習法 スティーブ・ソレイシィ 角川oneテーマ21
英会話の、特にアウトプットに向けた学習法について述べた本。
本書の画期的な点は、日本人の英会話学習法について、外から眺めてみた視点が取り入れられていることである。筆者は、初めにエジソンの「達成のための三大要素」を挙げる。それはすなわち、
1.努力
2.継続性
3.常識
である。筆者は、日本人は決して努力や継続性が劣っているのではなく、常識(common sense)が欠けているのだとする。では、「常識」とは何か?
筆者によると、国際的には英会話学習は圧倒的に発信重視である。しかし、日本の英会話学習は発信を前提としたものではないため、往々にして、失敗に終わっているというのだ。また、細かいことや多様な表現にこだわりすぎてしまい、がんじがらめになっている現状をも指摘する。そこで、筆者は自分の得意とするフレーズを徹底的に使えるようにし、会話の名人になることを提案する。本書の後半は、筆者お薦めの表現"May I have...?"を使いこなす練習に割かれる。
筆者の指摘は、非常に面白い着眼点から為されていて、それでいて、なるほどと納得させるものがある。いわゆる受験英語から、英会話教室の教え方まで、おかしな点に次々と切り込んでいく。
大学受験の英文は、内容が非常に難しいものも多い。それなのになぜ、いざ何か英語を口にしようとすると、簡単なことさえうまく言えないのか。それは、自分の言いたいことを伝えるための言葉が実になっていないからである。
今までの英語学習に着いて行けないと思っていた人、矛盾点を感じていた人にとっては、朗報である。しかも、これはただの励ましでも何でもない。筆者の語る論理は極めて明晰で、説得力がある。
それでも、最後に欠点を挙げるなら、1つ。本書は発信に重点を置いた本であり、リスニングの向上に必要な事項には一切触れていない。自分が話す英語は定型パターンで構わないかもしれないが、相手の話す英語は、多種多様。それを確実に聞き取ることが、応答の大前提である。
もちろんのこと、そのような欠点を補って余りある内容ではある。自らの英語観が変わる。
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