先生! 池上彰 編 岩波新書 2013年
「先生!」という言葉から思いつくエピソードとはという質問をぶつけ、集められた27人からの回答。様々な職業・境遇の人々が縦横無尽に語る先生の姿は、それぞれの人物にとっての教育観を映し出す鏡のようだ。27人の語る先生像はまちまち。プラスの印象もあれば、マイナスの印象もあり、人生に大きな影響を与えた場合もあれば、大して記憶に残っていない場合もある。教師の鑑とも言うべき素晴らしい先生の話もあれば、結果的に反面教師という形で生徒の人格形成に関わった先生の話もある。
どんな教師が良いのかという問いに対して、明確な解答を示すことはできない。本書を読み終えた後に抱いた率直な感想だ。27人のエピソードの中には、学ぶ喜びによって人間が変わっていく姿を描いた教育の根幹に触れるような珠玉のエピソードもあり、心動かされるものがいくつもあった。反面、最後の池上氏と大田光氏の対談で話題になったように、教育に期待しすぎることに対する批判と思える文章もあり、教育の難しさを改めて実感した。
ただ1つ言えることとしては、自分なりの信念を持って教育に当たる先生は強いということである。確固たる信念を持ってすれば、たとえ正の方向であっても負の方向であっても、学んだ生徒は確かに自分の道を見出して歩いていけるような気がする。
今、まさに教育という世界で学ぶ立場にいる者や、その保護者にとっては、少し離れた視点から教育を眺め、本書を心にゆとりを持つ契機としてもらいたい。そして、現役の先生には、自らの進む道を考える参考にしてもらいたい。
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