大学入試 担当教員のぶっちゃけ話 櫻田大造 中公新書ラクレ 2013年
多様化を極める大学入試。AO入試、指定校や公募の推薦入試、一般入試の何とか方式… 今や、1つの大学を何回も受験するチャンスがあるのは常識となりつつある。しかし、そんな日本の常識は海外には当てはまらず、日本の入試はガラパゴス化しているというのが、筆者の論である。海外との比較、試験監督の裏話、入試作問の事情など、大学教授ならではの視点から語られる入試の裏事情満載の本。
かつて、石渡嶺司・大沢仁著『就活のバカヤロー』が、疲弊する就職活動の状況をレポートし話題となったが、本書もまさにそれに匹敵するような、「入試のバカヤロー」と叫んでしまいたくなるような現状を、大学教授の視点から語っている。受験生はもちろんのこと入試に苦しむわけだが、大学教員だって、入試業務の辛さに弱音を吐きたくなっているのだろう。確かに、働けど働けど収入は増えず、ギリギリの生活をしている人から見れば、何を甘いことを言っているという批判はあるかと思うが、やはり研究と教育を本職とする大学教員が入試の雑務に追われる現状は好ましくない。このままでは、入試制度に嫌気の差した優秀な教員の海外流出が危ぶまれる。ここは何とかしなければいけない。
一方、入試に苦しむ大学ではあるが、だからこそ、入試をどのように工夫して乗り越え、入学してきた学生を責任を持っていかに育て上げるかといった大学側の努力は、受験生からすると大学選びの基準にもなりえる。入試会場での対応から、各大学による合格発表の工夫まで、自らのお子さんを大学に入学させた保護者でもある著者ならではの視点が活きる。入試は確かに疲労困憊を強いられる制度かもしれないが、だからこそ、工夫の余地があり、大学生き残りの鍵にもなるのかなと思った。
作問・試験監督・採点といった業務の裏話が大学教員の視点から活き活きと語られる部分は、なるほどとうならされたり、思わず笑いたくなるような事態が描かれていたりで、自然と次々とページをめくっていた。誰が読んでも、世の中に新たな視点を得られると思う。
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