音楽の聴き方 岡田暁生 中公新書 2009年
優れた芸術評論に贈られるという、第19回吉田秀和賞受賞作品です。
音楽がわかるとは、どのような状態のことを言うのか、また、どんなことに注意することで、音楽を理解できるのかについて述べようとした本。
筆者は、「音楽は語ることはできない」「音楽は国境を越える」といった言説には、極めて懐疑的である。筆者によれば、そのような言い分は、西洋近代社会において創られた幻想である。
音楽を語る言葉を知り、音楽の歴史的背景を理解することで、音楽の聴き方が変わるというのが、筆者の主張である。
しかし、タイトルから推察するに、音楽を理解するための方法論が縦横無尽に展開されるものかと思えば、そうではない。音楽を聴くにあたって、意識すべきことや、曲の背景を無視した演奏への批判は語られていても、音楽の理論面に関する説明は、驚くほど少ない。その点が、私のように音楽初心者にとっては、結局のところ音楽はよくわからないという印象を壊すまでに至らない。
詰まるところ、音楽の背景について豊富な知識を持った筆者が、現代の音楽文化を批判的に見て、「~すべき」という論を展開しているだけのように思えてしまう。
やはり芸術の理解は難しいのかという感想が、残ってしまった。
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