職業は武装解除 瀬谷ルミ子 朝日文庫 2015年
著者は、紛争地帯で兵士の武装解除(DDR)に取り組んでいる。20代の頃からNGO、国連の職員として働き、奮闘してきた軌跡の記録である。
戦争や内戦で日常生活が脅かされた人々を救いたいと言っても、そこには大きな壁が立ちはだかる。政府が実質的には機能していなかった地域では、社会制度を構築しなければならないし、市井の人々が自立していくためには、経済や教育の支援が欠かせない。また、2度と悲しい争いが起こらないようにするには、兵士がきちんと社会復帰できなければならない。著者は、兵士の社会復帰を通して紛争地域の支援を行うことを専門としている。兵士から武器を取り上げ、戦闘以外の仕事ができるように就業の支援を行うことがどれほど重要なことなのか、私は本書を読むまで知らなかった。このような仕事の専門家は日本ではなかなかおらず、世界でもこのような分野を学べる大学はほとんどないらしい。著者は、人がやっていないことで自分が貢献できる分野はどこか探し続け、このような専門にたどり着いた。
紛争の現場では、きれいごとでは済まないことも多く、平和と一言で言っても、その実現には気の遠くなるような手間と時間と人々の思いが必要である。当たり前のことだとは思うが、本書を読んでいると、それを嫌というほど実感してしまう。それでも、著者はきっと今日も平和の実現のために、紛争地に立っているのだろう。
国際平和について考えたいと強く願う人はもちろん、進路について悩む高校生や大学生にも一読の価値がある本だと思う。
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