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# 『4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する』
2010/02/13 12:23
4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する 杉山茂樹 光文社新書 2008年



1993年のJリーグ発足以来、常に人気スポーツであり続けてきたサッカー。日本代表の試合ともなれば、多くのサポーターが集まる。スター選手の話題が尽きることはない。しかし、その反面、戦術、特にフォーメーションについて語られることは案外少ないのではないだろうか。本書は、サッカーの戦術について、フォーメーションの観点から解説した本。「サッカーは戦術でするのもではない」という意見に対し、年間300試合の取材経験を基に、筆者が疑問を呈する。

日本では、サッカーのフォーメーション(グラウンドにどのように選手を配置するか)については、4-4-2や3-5-2など、3列表記を用いることが多い。少なくとも、新聞などのメディアの書き方は、そのようになっている。これは、単に左からDF, MF, FW登録の選手が何人いるかということを示しているに過ぎない。しかし、実際はそれほど単純なものではなく、ポジションの名前以上に、全体として選手をどこに置き、どのような戦術の下に動かすのかが、大変重要になる。また、ある戦術を実現させるには、それに見合ったフォーメーションで試合を運ばなければならない。見事な戦術が実現した時、ダヴィデがゴリアテを倒すような番狂わせが起こる。一見ただの数字の羅列にしか見られないものの中に、とんでもなく奥が深い世界が詰まっているのである。

本書は、サッカーのフォーメーションについて、歴史的な流れを概観しながら検討していく。そして、素晴らしい戦術ゆえの名勝負の紹介が間に挟まれる。名勝負の裏には、名監督の采配がある。そのような事例を知ることで、フォーメーションというものへの見方が変化する。「攻撃は最大の防御」という表現がなぜサッカーにはぴったりと当てはまるのかも、少しわかったような気がする。

ただし、本書は、相手のフォーメーションの崩し方については、それほど取り上げていない。筆者の言う「古典的な」フォーメーションの弱点や崩し方はよくわかる。しかし、反対に現在流行のフォーメーションにだって、弱点があって然るべきだと思うのだが、それについては触れられていない。個人的には、スポーツにおいては、どんな戦術も長所と短所を持っているのだと思うのだが。

ちなみに、本文の前にある、フォーメーションの紹介図は、非常に参考になる。
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