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# 『亡国の中学受験』
2009/12/19 12:14
亡国の中学受験 瀬川松子 光文社新書 2009年



『中学受験の失敗学』の続編に当たる本。
「公立の学校は、いじめ、学級崩壊、教師の指導不足など、問題が山積している。その点、私立学校は充実した教育環境を提供することができる。豊かな人間性を育むとともに、高い進学実績を誇る私立学校は…」世間の中学受験を勧める宣伝文句には、このような言い分が溢れているように思える。しかし、本当にそうなのだろうか?本書は、中学受験界、そして私立中高一貫校の実態に精通した筆者による、夢のような学校、私立中高一貫校の現実に迫ったものである。

本書で、筆者は予め自分の立場はやや私立の価値を貶める方向に偏っていることを明言している。それは、これまで私立学校の良さを強調する物言いが多数を占める中、負の側面を語るメディアが非常に少ないという筆者の実感による。筆者は、中学受験がここまで加熱するのは、それに関わる利益団体が徒に公立学校への不信を煽っている側面があるからだとする。有名な上位の私立学校の中には、成績不良の生徒に対して圧力をかけようという雰囲気が存在することがある。進学校化を狙う偏差値の低い私立では、上位の一握りしか着いて行きようのない難問をシャワーのように浴びせ、できないのは個人の責任と居直っているところがある。いじめはどんな学校でも発生する可能性はあり、私立独特の特徴である、塾や家庭教師業者との癒着という問題もある。それでも、そのような実態はあまり表沙汰にならない。それは、私立学校特有の隠蔽体質があるのとも関係している。

本書は本書で、逆に私立学校への不安を煽っているとして、物議を醸すことはあろう。しかし、それでも本書の役割は重要であろう。少しでも、中学受験の負の側面を知ることで、受験生やその両親などの中学受験に関わる人々が冷静に私立中学を選ぶようになってくれば、世の中が少しは変化するかもしれない。
また、本書の問題は、中学受験に留まらない。そもそもいじめが発生する日本社会の問題、私立への助成も含めた私立学校のあり方の問題、生徒のことを本気で考えるほど、採算が取れなくなる塾業界の実態など、一筋縄ではいかない難問が提示される。
このような問題に向き合うことこそ、日本の教育、ひいては社会について考えることなのであろう。
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