〈できること〉の見つけ方― 全盲女子大生が手に入れた大切なもの ― 石田由香理・西村幹子 岩波ジュニア新書 2014年

「周囲の人を引き付ける不思議な人間力を持っている」とは、大学の先生が著者の石田さんについて推薦状の中で書いた文言であるそうだ。本書を読んでいると、その言葉にも納得がいく。教育熱心な家庭に生まれ、優秀な兄、姉と比較されて何もできないと言われ続けた家庭での日々、中高時代の思い出、辛かった浪人時代、大学入学後に感じた周囲との壁、そして、フィリピンへの渡航をきっかけに手にした、必要とし、必要とされることの価値といった、著者の半生(というよりも現時点での全人生)を形作るに至ったことを語る筆致には、読む者を掴んで離さない魅力がある。
障害を持つと、どうしても周囲の人に頼らざるを得ない場面が多くなる。石田さんがずっともどかしさを感じていたことは、周囲に助けられる代わりに、自分には何ができるのかという問いに対する答えが見つからないことであった。しかし、互いに支え合う、必要とし必要とされる関係を築く経験を重ねるにつれ、石田さんという人間に変化が生まれた。
障害に限らず、社会に生じる不平等を扱うのに必要な視点は、援助や支援といった、いわば上から目線のものでは不十分で、皆が相互に与え合う関係を作れる環境を整え、不平等を生じさせている社会の仕組みを見直していくことであると、共著者の西村先生は結ぶ。真の意味での平等、対等、公平とは何か。すぐには答えの見出せない問いへと向かっていかなければならないと意識させられる。
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