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# 『音楽嗜好症──脳神経科医と音楽に憑かれた人々』
2014/12/02 20:18
音楽嗜好症──脳神経科医と音楽に憑かれた人々 オリヴァー・サックス著 大田直子訳 ハヤカワ文庫 2014年



「音楽嗜好症」とは、英語のmusicophiliaの訳語。ただの音楽好きというよりは、音楽に対して常軌を逸した偏愛ぶりを見せたり、音楽の分野で特異な才能を発揮したりする人々の総称として、本書では用いられている。人は、事故などで脳に損傷を受けることで、演奏や作曲など突如音楽に目覚めることがある。また、認知症やウィリアムズ症候群のように、他の認知的な面が時に日常生活に支障をきたすレベルであるにもかかわらず、音楽に関しては素晴らしい才能を見せる人々もいる。その一方で、頭脳明晰で他の能力に関しても問題のない人が、なぜか音楽だけはまったく理解不能で、音楽を苦手としていることもある。

とかく、音楽は不思議に溢れたものなのだが、その謎に対して脳神経科学の分野で蓄積された知を結集して挑もうというのが、著者のオリヴァー・サックスである。著者は医学者でありながら数多くのエッセイで知られる人物で、本書をはじめ、実際の臨床で出会った患者や、読者からの手紙に基づいた豊富な事例をもとにした読み応えある著書を執筆していることで有名だ。それゆえに、摩訶不思議な音楽の世界に迫るべく、時に様々な仮説を立て、人間と音楽の関係を解き明かそうとする。その思考の過程を楽しむのも、本書ならではの読み方と言えよう。

音楽は、人間の心を豊かにする可能性を秘めたものであろうが、科学的な分析に馴染むのか疑問に思ってしまうほど、捉えどころのない面もある。著者によると、人間や社会について優れた論考を残した哲学者の中には、音楽についてまったく触れていない人物もいるという。それだけ、音楽とは神秘的で、わからない人にはわからないものなのだろうか。音楽を科学で分析しようという試みは、人間の謎に迫る営みなのかもしれない。

巻末の訳者と成毛眞による解説も、本書の素晴らしさや魅力を存分に伝えているので、是非一読されたい。
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