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# 『訴えてやる!大賞 本当にあった仰天裁判73』
2010/08/28 00:14
訴えてやる!大賞 本当にあった仰天裁判73 ランディ・カッシンガム 鬼澤忍 ハヤカワ文庫 2006年



訴訟社会、アメリカ。人々は、些細なことで訴訟を起こし、被告から多額の賠償金が支払われる。都市伝説などではなく、実例を紹介し、アメリカ社会の裁判のあり方を問うた作品。

今や訴訟の濫用が起こっていると主張する筆者。その根拠を挙げるべく、実際の裁判例を探し(それは、苦労せずとも見つかったらしい)、紹介する。呆れる事例、思わず笑ってしまう事例、などなど。ファースト・フード店が、注意せずに自分に対して商品を売り続けたから肥満になったと訴える男性、クレジットカード会社から、たった18セントを巡って訴えられた女性、薬の副作用に対して賠償が認められたのに乗じて、虚偽の申請をする男…

しかし、笑って済ませてはいけないというのが、筆者の最も強調したいところ。訴訟の濫用によって、本当に重大な事件の裁判手続きが遅れたり、必要な人に必要な額の賠償が為されなかったりと、被害は大きいというのだ。また、各企業が、訴訟のリスクを恐れれば、その分商品の値段を上げざるを得ないであろうし、いつ訴訟が起きてもおかしくない状況では、月々の保険料も値上がりする一方になる。もちろん、連邦や州が設置した裁判所で取られる正式な手続きには、市民の血税が用いられている。他人事ではなく、結局は一般大衆がどうしようもない裁判の負担を背負うことになるのだ。筆者によると、2002年現在、アメリカGDPの2.33%が民事訴訟に使われているという。

本書で扱われている73例の中には、読者が読んでみて、それほど馬鹿げたという印象を受けないものもあると思う。単なる呆れる訴訟と言って片付けてしまうにしては、難しい問題もある。個人の価値観や思想が大きく反映される問題だからこそ、片やくだらないと笑われる裁判の裏にも、大真面目で訴えを起こしている原告がいるのだ。

一方、日本はどうだろうか。周知の通り、日本はアメリカほどの訴訟社会ではない。しかし、モンスター・ペアレンツの理不尽な要求に悩まされる学校など、案外訴訟という形は取らなくとも、本書の現状と似たり寄ったりの場面があるとも言える。また、裁判員制度が始まった以上、市民が賠償の決まる場面に居合わせることになる可能性も、無きにしも非ずだ。アメリカの二の舞にならないようにするためにも、本書から得られる教訓は大切にしたい。
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