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# 『予習という病』
2010/01/13 21:45
予習という病 高木幹夫+日能研 講談社現代新書 2009年



自分が予想できる範囲のことにしか対応できず、未知の物、既存の枠組みでは捉えきれない物に遭遇すると、まったく対応できなくなってしまうことを、筆者は「予習病」と名付け、現代社会において憂慮すべき問題であるとする。では、その予防には、どんなことが有効なのか。現代の教育のあり方に問題意識を投げかけ、日能研における教育実践から、現代社会において求められる教育スタイルや社会の仕組みを提言する。

タイトルの割には、本書で扱っている内容は幅広い。学力を、身に付けた知識や計算力によってのみ測り、「学力低下」の懸念の下、総合的な学習の時間を批判するという社会情勢に対する反駁は頷ける。そして、生きていく上で問題解決力が必要な今、教育でもそれを重点課題としていくべきだという姿勢には納得がいく。
本書で提唱されている学習は、90年代から徐々に影響を増してきたconstructivismという思想に影響を受けているものだ。この考え方によると、知識は他者との交流の中で身に付くものである。そして、教科や科目といった枠組みに囚われず、幅広い知識を統合していく姿勢を重視する。ひとつの専門分野からでは解決できない問題が目白押しの現代社会において、大変注目されている教育である。

しかし、著者に日能研が含まれていることからも分かるように、日能研や私立中学の魅力をやや強調している印象を持たざるを得ない。私立学校贔屓の事情については、『亡国の中学受験』という本が批判している。実はこの2冊、出版社は異なるものの、形態は同じ新書であり、発売時期もほぼ同時。中学受験、受験産業、私立の教育実践、そこに通う生徒、公立学校の実態などに対する記述で好対照をなしている2冊を読み比べることで、多角的な視野を持てる事柄は多い。

最後に、「予習病」は、一見分かりやすく目を惹く単語だが、筆者はこの言葉をあまりに多くの問題に適用しすぎているように思える。その分、言葉の定義が曖昧になってしまっているのが問題。


■追記■
朝日新聞2010年1月31日の書評で本書が取り上げられました。
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