クリティカル進化論 ぶん/道田泰司&宮元博章 まんが/秋月りす 北大路書房 1999年
クリティカル・シンキングとは何か、物事を批判的に見られるようになるには、どのようなことに気を付ければ良いのか。本書はこのような疑問に答える、クリティカル・シンキング入門の書。見開き2ページで1つの項目が説明されるというわかりやすい形式で、項目ごとに、そのテーマに合った『OL進化論』の4コマ漫画が登場する。タイトルの「進化論」は、OL「進化論」と、クリティカル「シンカー」をかけたもの。
「傘を忘れたときに限って雨が降る」「あの占いは本当によく当たる」等と思うことは、誰にとっても経験があろう。しかし、本当にそうなのだろうか?別の可能性はないのか?本書は、物事を批判的に考える方法ついて、主に心理学の知見を取り入れながら、楽しくわかりやすく述べていく。途中、「スキーマ」など、心理学の用語が出てくるが、心理学や統計に関する用語は必要最小限に留めてある。
特に参考になるのが、「四分割表」の考え方。例えば、ある化粧品について、「それを使ったからきれいになった」という印象があるとする。このとき、「化粧品を使う/使わない」「きれいである/ない」の2×2の表を考える。このとき大切なのが、「化粧品を使う×きれいでない」と「化粧品を使わない×きれいである」の可能性を十分検討すること。このような人たちが結構いる場合には、化粧品の効果は疑わしい(これは、カイ自乗検定という、れっきとした統計法である。本書では触れられていない)。ここで、「化粧品を使う×きれいでない」の事例はあまり入手しにくいということも重要な点である。
他にも、原因と結果の考え方、事実の偏りを考える方法など、クリティカル思考がどのようなものであるのかが、よくわかる。
ただし、「違う角度から見てみる」など、意外と抽象的な説明のみで終わっている箇所があるのは残念。ここからは、自分で考えてみよということなのか。
本書は『OL進化論』の魅力も存分に伝えることができていて、そちらにも興味が湧いてくる。
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