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# 『英語学習は早いほど良いのか』
2015/09/06 20:29
英語学習は早いほど良いのか バトラー後藤裕子 岩波新書 2015年



日本をはじめとした東アジア圏で、どこまでも過熱していくように思える英語教育。日本でも、小学校での英語が必修化され、高校の英語の授業は英語で行うことが基本とされ、スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)の指定という取り組みも始まり、英語英語と叫ばれる世の中になったと非常に強く感じられる。それでは、第二言語習得理論に関する実践的な研究成果に鑑みたとき、現在の取り組みはどのような意味を持っているのだろうか。

ともすると、英語教育は実践研究の成果云々ではなく、理念優先で語られることが多い。例えば、子どもが言語を獲得する過程を考えたら、英語は英語で教えるべきだという意見や、文法の重要性を訴えて、訳読形式の授業こそ最良の方法と主張する意見などだ。前者に対しては、子どもの言語獲得の環境をそのまま外国語学習に応用可能なのか。後者に対しては、訳読形式において、アウトプットの練習はどうするのか。そういった疑問が浮かぶ。また、果たして様々な授業形式に対して、どのような効果がどれだけあったのか、検証されていることはあまりないように思う。

本書が取り扱うのは、このような具体的な授業方法に関することではないが、実証的な立場からわかっていること、わかっていないことを取り上げて、外国語教育研究の現状がまとめられているのは、大いに参考になる。音声の習得1つとっても、各研究で用いられた手続きを細かく批判的に検討すれば、まだまだ確実なことは少ないのだな、というのが正直なところの感想である。また、他のヨーロッパ語と比べて、日本語は英語との違いの多く、日本は外に出れば自然と英語が聞こえてくる環境でもない。欧米での第二言語習得研究をどこまで日本に応用できるかすらも定かではない。現在わかっていることを基にした筆者なりの見解も併せて、言語教育の政策立案に関わる人々をはじめ、英語教育に躍起になっている人々にも広く目を通してもらいたい。

「自分は何年間も英語を勉強してきたのに一向に英語が喋れなかった。だから、日本の英語教育は変えるべきだ。」などという意見が平気でまかり通ってしまうのが、今の日本のように思える。同じロジックで、音楽、スポーツ、数学などの教育について語る人がいるだろうかと考えると、いかに英語教育に関する議論が感情的で個人的な意見に大きく左右されたものであるかがわかる。ここで1度冷静な視点で英語教育について考えてみることが、結果的に日本の英語教育の進むべき道を模索するヒントになるのではないだろうか。
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