アニメやマンガが地方を救う!! ~「聖地巡礼」の経済効果を考える~ 酒井亨 ワニブックスPLUS新書 2016年

アニメ・漫画作品の舞台となっている土地を訪れることを、ファンの間では「聖地巡礼」と呼んでいる。近年、聖地巡礼を通して活力を取り戻す商店街が出てくるなど、その効果はバカにできないほどになっている。本書は、政治学が専門の筆者が、聖地巡礼の実態について各地域に取材した記録をまとめ、そこから聖地巡礼を通した地域の活性化について考察をめぐらせたものである。
聖地巡礼を機に活性化し、アニメファンとの良好な関係を築いている地域では、アニメファンの特長として次の点を共通して挙げている。それは、マナーが良いのと、何年にもわたって訪れてくれるという点だ。これは、地域活性化のために利用しない手はないのではないかと思うのだが、現実はなかなか厳しい。作品の評価が低ければファンが押し寄せることは期待できず、地元が一致して取り組まなければせっかくの客を取り込めず、だからといって行政が出過ぎるのはファンが白けてしまう。本書には一応、経済効果について数字も紹介されているが、どこまで正確なものであるのかはわからない。まだまだ可能性に満ちている一方で、開拓の難しい面も多い分野なのだ。
それでも、本書で紹介されているように、地域が自らの存在意義を見直し、元気を取り戻していくという、数字化されにくい利点もある。まだまだ開拓の余地ある分野だけに、これをどう活用していくか、議論される地盤ができあがっていくことに意味があるのではないかと思った。
PR