憲法への招待 新版 渋谷秀樹 岩波新書 2014年
24の問いに答えながら、日本国憲法の根本にある思想や、憲法の規定する人権や統治機構について述べた本。安倍政権で憲法改正に向けての論議が活発化している中、日本国憲法に与えられた本来の意味や役割について考えることは、とても大切なことになるであろう。そんな時代だけに、本書が新版となって刊行された意味は大きい。
本書で一貫して主張するのは、憲法は1人1人の権利を守るためにあるという根本思想である。「憲法には権利ばかりが書いてあって国民に対する義務がほとんど書かれていない」などといった、憲法の意味を根本的に取り違っている主張が為されるのが日本の現状である。本書は憲法制定の背景や憲法の存在意義について述べた個所が多く、憲法を語るために知っておきたい事項がよくわかるようになっている。憲法改正について考える前に是非読んでおきたい項目だ。
また、本書を読んで痛感するのは、憲法上の権利が問題になったときの司法権の弱さである。一票の格差問題に表れているように、違憲の判決があっても、注意に留める判断をすることがあるし、場合によっては判断を差し控えるということさえある。権利が侵害されたときの最後の砦が裁判所の違憲審査権であると思うので、もう少し裁判所は積極的であっても良いのではないかと思ってしまう。
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