スクールカーストの正体 キレイゴト抜きのいじめ対応 堀裕嗣 小学館新書 2015年
もはや人口に膾炙した感のある「スクールカースト」という言葉だが、それが具体的に何を指し、何を基準にして決定されていくのかについては、あまり語られない。本書は、ずばり決定要因はコミュニケーション力であるとして、スクールカーストという視点を抜きにして語ることのできない教育現場の問題点に迫っていく。
現在、学校で起こるいじめや暴力事件などの問題行動は、スクールカーストという視点を通さなければ本質的な解決策を講じることができないというのが、筆者の意見である。本書で議論の題材となる、筆者が現場経験を基に独自に作った事件は、いずれも「なるほど」と思える事例で、いかにスクールカーストへの理解がなければ解決からほど遠い対応になってしまうかという怖さを感じざるを得ない。
現場の教員の手による本だからこその画期的な点は、これまでの著作が見逃してきた、教員も自らスクールカーストの一員として学級の序列に組み込まれるという視点と、現場の教員がどのようなことを意識して協力体制を敷いていくかという視点である。
筆者によれば、教員自らも、生徒と同じようにコミュニケーションの力によって8タイプに分類され、分類の序列によってスクールカーストに組み込まれるからこそ、教員のカースト次第でクラスの規律が維持されることもあれば、学級崩壊につながる恐れもあるという。教員の立場からすれば恐ろしい話であるが、教員が日々生徒と接する際にどのようなことに気を付ければ良いのかがなるほどと見えてくる点では目から鱗の話である。
また、教員の性格を父性型・母性型・友人型の3タイプに分け、学校あるいは学年全体でバランスを取った指導をしていくという提案は、非常に納得のいくものであった。父性型の教員は、コミュニケーション力において大事な要素である自己主張を持って指導を行う分、いじめや生徒指導において無類の力を発揮するが、カースト下位の生徒に対する対応が必ずしも得意ではない。それに対して、優しすぎる先生になりがちな母性型や友人型の教員は、カースト上位の生徒の扱いに苦労することが多いが、カースト下位の生徒の指導を得意とする。このような教員の特徴を活かしつつ、皆で一丸となって指導に当たることが大切だという意見に共感した。
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