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# 『東京郊外の生存競争が始まった! 静かな住宅地から仕事と娯楽のある都市へ』
2017/07/27 20:49
東京郊外の生存競争が始まった! 静かな住宅地から仕事と娯楽のある都市へ 三浦展 光文社新書 2016年



東京23区への一極集中が話題となる現代、かつてのニュータウンを中心とした首都圏郊外は人口の減少や高齢化といった問題に直面している。本書のデータからもその事実は如実に表れていて、団塊ジュニアの定住率の低さが問題となっている。本書は、まず年収や性別、正社員・非正社員といった指標を基にして、若者が住みたいと思う街の特色を探り、続いて郊外が生き残り、より魅力的な街へと変貌していくための策を探る。

本書を読むと、都心一極集中の時代であっても、郊外の魅力は存在するということを改めて知ることができる。究極的なところでは、筆者は日本の都市計画はほとんど成功していないという意見である。かつて自ら「ファスト風土化」と名付けた、日本の都市がどこも皆同じような面白みのない街へと変わっていく現象を指摘した筆者らしい見方である。在宅勤務が広がるなど、働き方改革が進み、現代ブームの「職住近接」または「食住近接」とも言える暮らし方を、郊外にも持ち込む環境が整えば、それが郊外復活の鍵になるのではないか。そう思えてくる。
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CATEGORY [ 社会・経済 ] COMMENT [ 0 ]
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# 『大学受験勉強法 受かるのはどっち?』
2017/05/28 18:01
大学受験勉強法 受かるのはどっち? 笠見未央 角川書店 2016年



大学受験は、それを経験する者にとっては、とても大きく感情を揺さぶるものである。受験生時代の苦労や喜び、不安、挫折感に、受験後も付いてまわる学歴社会など、生々しい感情とともに語られることが多い。それだけに、カリスマ性を持った教師がもてはやされ、大逆転物語から大きなカタルシスを得る受験生や大人がいて、受かる勉強法や教育法は大々的に取り上げられる。

しかし、ここで1度冷静な目で受験勉強法を見つめ直してみるのも良いのではないか。大学受験に関しては、様々なところで別々の勉強法が勧められていることが多く、迷う受験生や指導者がいるのは容易に考えられる。そこで、本書のように時に両極端とも言える勉強法を示し、自分のタイプや目標に応じて優れた点を取捨選択していく助けになる本の存在意義がある。スケジュールの立て方や各教科の勉強法といったオーソドックスな疑問から、受験生はTwitterをやっても良いのか、逆転合格に才能の差は影響するかなど、受験生としてはぜひ知りたいと思える論点が満載である。

一部、筆者のきわめて個人的な体験から勝負の判定が決められている、惜しいとしか言いようのない項目もあるが、多くは参考になる分析がなされている。また、最新の参考書や受験勉強法の研究に余念のない人たちの議論なので、現代の受験生にとって非常に有益な情報に富んでいる。勉強に迷ったら、一読の価値ある本であろう。

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
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# 『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』
2017/01/22 16:14
サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう 著者:秀章
イラスト:R_りんご 角川スニーカー文庫 2016年



とても現代的なコミュニケーションを、ラノベ的な物語世界で描いた作品。作品舞台は、20年前に起きた人類対魔族間の大戦争で活躍しながらも、突如姿を消した七氏族が残した莫大な富を探すべく、人々がダンジョンを旅するというものだ。その中でも、主人公ユーリが所属するのは、「軍資に一番近い旅団」と呼ばれる最強の旅団(サークル)だった。男4女1で構成される最強のサークルに、謎の美女、クリスティーナが加入することで、徐々にサークルの人間関係が破壊されていく。

とことん仮想的な世界で、とことん現代的なコミュニケーションが描かれる、なかなかに挑戦的な作品だと思う。無意識に集団の人間関係をめちゃくちゃにするという、とんでもない能力を持ったクリスティーナは、4人の男たちを惚れさせ、そのせいで女1人を退団に追い込む。やがて真実を知った男たちによるお互いを罵る会話劇は、蚊帳の外にいる者にとっては抱腹絶倒。

美女に翻弄された男たちをどうにかしようと、ユーリが選択した手段は、さすがにラノベ世界でなければ実現しえないものだが、目指すべき着地点としては、現実世界でも十分にあり得る。架空の世界で極めて現実的なコミュニケーションを描いた傑作だ。

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# 『桐島、部活やめるってよ』
2017/01/15 16:42
桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ  集英社 2010年



スクールカーストを描いた作品として有名になり、映画化もされた本作。タイトルにもなっている「桐島」という人物は、地方の進学校でバレー部の主将を務める生徒で、その桐島がバレー部を辞めることによって大小何らかの影響を受けた5人の高校2年生達それぞれの物語が作品を紡いでいる。物語の中で、桐島は一切直接的には登場せず、各々の人物の頭の中にだけ現れる。

作品の中で描かれる高校2年生の5人は、それぞれ同じクラスに所属しているが、部活が違えば属するカーストも違う。そして、それぞれが自分なりの高校生活を謳歌している部分と、言葉にし難い負の感情を抱えて生きている。下の人間が、当たり前のように上の人間から受ける手厳しい仕打ちに憤りを感じつつも自分なりの道を進もうとする描写があれば、欲しいものすべてを手に入れているように見える上の人間がふと感じる、得も言われぬ空虚な気持ちも描かれる。

世の中に対する一種の諦めや、人間関係を器用にこなしていくだけの力がないのに、周囲の大人達からは、「未知の無限の可能性」を説かれ、どこか生きづらさを感じながら日々を過ごすのが高校生達だ。彼らの感性が、これでもかというほどに刻まれた筆致に、学校という周囲から閉ざされた小社会で生きていく上で抱えるチクチクとした感情を抱かずにはいられない。

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# 『沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿』
2017/01/09 18:22
沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿 首都圏鉄道路線研究会 SB新書 2016年



流行りの格差ものだが、本書が扱うのは題名の通り首都圏鉄道路線の格差である。具体的には、利用者数や収益、ブランド感や沿線の発展度合いなどを指標に、首都圏の主要路線間のランキングを作成し、各路線に評価を下そうというものである。

多くの指標から分析してみると、一般的なイメージと合致した傾向から意外な傾向まで、路線の様々な顔を知ることができる。沿線のブランド感では東急が圧倒という図式は何となく想像のつく一般的なイメージであろうが、通勤通学時の混雑率や遅延発生頻度、沿線の開発状況など、少し異なった視点から見てみることで、また新たな魅力を持った路線や、自分に適した路線を発見することもできる。格差があるからこそ、自分に合ったものは何かを選択する余地が生まれるとも言える。もちろん、そもそも自らが暮らす環境を選ぶための選択肢が多い人間と少ない人間がいることは事実であり、地域や経済の格差を見て見ぬ振りするのは決して望ましいわけではないが、そのような議論を行うためにも、まずは鉄道沿線における格差を知っておくのは悪いことではない。また、自分が沿線に住んでいる路線の新たな魅力を発見することにもつながるのではないだろうか。

そうした視点で本書を読むと、新たな発見がいっぱいあって面白い。

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# 『難民高校生─絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル 』
2017/01/04 20:44
難民高校生─絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル  仁藤 夢乃 ちくま文庫 2016年



家庭にも学校にも居場所がなく、渋谷を彷徨う中高時代を過ごした筆者が、やがて社会の中に居場所を見出し、自らと同じような境遇を経験する若者に居場所を作る活動に至るまでの半生を綴った本。

高校時代の筆者の周りには、居場所をなくして渋谷の街を徘徊する若者が多かった。その多くは、劣悪な家庭環境などのせいで、高校中退、虐待、妊娠、中絶、DV、リストカット、自殺未遂といった問題を抱えていた。そのような人々と日々を過ごしながらも、どこか空虚な気持ちでいた筆者は、高校中退後に高認取得を目指す予備校に通い、そこでの授業やゼミでの出会いを通して徐々に大人への信頼と自己評価を回復していく。大学進学後、目標を失いかけていた筆者に希望を与えたのはボランティア活動だった。そして、在学中に起きた東日本大震災。現地の若者との交流を通して、彼らの「何かしたい」という思いに触れることで、筆者は被災地域の若者、大人、企業を巻き込んでの復興支援立ち上げに関わる。その活動を通して、地域に居場所をなくしていた高校生が、やがて地元での信頼を勝ち得るまでになった。まさに過去の筆者と同じような境遇の若者が、社会とのつながりを見出していく過程を作り出すことができたのだ。

筆者が本書を著したきっかけは、若者から大人へと向かいつつある自分が、かつての若者としての記憶をしっかりと残っている間に、問題を抱えた若者の姿を伝えたかったということにあるそうだ。筆者は、こうした若者と大人との間に大きな断絶があることに問題意識を持っており、「私だから」こそ、普段彼らがうまく言葉にできない内面を伝えられると思ったそうだ。この「私だから」という言葉の持つ意味は大きい。多くの人にとって「私だけに」できることなど、限られていても、各々がその時その時を悩みながら生きてきた人生があるのだから、「私だから」できることならある。それを通して社会とつながることができれば、きっと居場所が見つけられる。

若者が抱える悲痛な叫びは、時に声という形ではなく、ファッションや態度、行動に現れる。それを理解不能という言葉で片付けたり、勝手に心情を理解した気にならずに、いかに個々の人間に寄り添って考えられるかが、大人に求められていると、筆者は言う。

なぜか大人になるにつれて忘れていく、かつて自分が若者の時に感じた生きづらさや大人への不満を、忘れずにいられる大人でありたいと、私自身も思ったものだ。しかし、気付けば大人の論理で物事を見て語る自分がいる。そんな自分に、若者として感じていた怒りや悩みや不満を強烈に思い出すきっかけを与えてくれた本だと思う。

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# 『キャラクター小説の作り方』
2016/12/26 13:35
キャラクター小説の作り方 大塚英志 星海社新書 2013年



まだ「ラノベ」という言葉が登場していない時代、筆者はそれを「スニーカー文庫のような小説」あるいは「キャラクター小説」と呼んだ。そして、前半はラノベ業界志望者に対して、しっかりとした作品を書くためのノウハウ(例えば、キャラクター設定とストーリのかみ合わせ方や物語の法則)を教え、後半に行けば行くほど、ラノベが文学の世界に対して持つ可能性について語っていく。

ラノベ批判に対する筆者なりの反論を試みたり、現代小説における「私小説」という概念へ疑問を呈してみたりと、後半の展開はなかなかに興味深い。また、やや唐突に語られた、イラク戦争とハリウッド映画の物語論とは同じ物語構造を持っているという分析からは、文学や芸術という分野が社会に与える影響について無自覚ではいられないという強いメッセージが感じられる。

徐々にだが、ラノベと一般文芸との境界は薄くなり、現在その両方を行き来できる評論家も増えてきたのではないだろうか。それでもまだ、2つの世界には上下関係があるように思う。それゆえの自由でアンダーグラウンドな雰囲気がラノベの魅力なのかもしれないが、ラノベが不当な評価を受けないように、発信し語る言葉をラノベ読者が身につけていくのが大切なのかもしれない。

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# 『東京23区教育格差』
2016/12/26 13:06
東京23区教育格差 昼間たかし・鈴木士郎 マイクロマガジン社 2016年



近年一気に火が付いた東京23区の格差議論の中で、教育の分野に絞った分析をしたのが本書である。筆者は語る。本当なら、出身地域によって教育水準に格差があったり、教育環境に差があったりするのは問題であるが、先行きの見えにくい世の中で子育てする者にとって、子どもの教育は待ったなしの問題であると。だからこそ、自分の子どもを育てるのに適した環境を見つけるためにも、23区の現状について理解しておこうというのが、本書がそのそも持っているコンセプトなのだ。だから、本書を読んで徒に踊らされるのも、地域の格差を公表し、よりよい地域を選択することを勧めるとはけしからんと怒るのも、執筆の意図に反した行動であろう。もちろん、本書には登場してこない東京多摩地区、神奈川県、埼玉県、千葉県に居住するという選択だってあり得るのだ。結局のところ、保護者がどんな子育てをしたいと思うかという軸が重要なのだと思うばかりだ。

結構な数の取材に基づいている本書は、教育熱心な地域に潜む危険さと、教育環境として厳しいと言われる地域独自の努力を同時に取り上げ、判断材料としてバランスを保てるようにしている。大学進学までのルート別シミュレーションから、どこで節約し、どこでお金をかけるかについて考えられるようなヒントも多く提示されている。

一般的に言われる「住みたい街」の人気と、教育環境の良さは必ずしも比例するわけではないのがよくわかる。様々なメディアを通して、どこに住むかが重要な選択だと聞かされる今、教育という軸も加えて居住地を考えることで、また新たな街選びができることだろう。


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# 『少女には向かない職業』
2016/11/26 16:32
少女には向かない職業 桜庭一樹 創元推理文庫 2007年



山口県下関市の沖合に浮かぶ島を舞台に、中学2年生の少女2人過ごした夏休みから大晦日までを描いた物語。その期間に、2人は2度殺人を犯す。島という狭い世界に閉じ込められ、DV父親と自分のことを気に掛けてくれない母親のいる家に育つ大西葵は、まだ自立して家を飛び出せるわけでもなく、閉塞感に満ちた思いとともに日々を暮らしていた。そんな葵が夏休みに仲良くなったのは、地元の名だたる家柄育ちの宮乃下静香だった。そして、葵と静香は引き返せない犯罪者の道へと歩んでいくのだった。

田舎の中学生女子を描いたら天下一品という評価の桜庭一樹による名作だ。世の中において最も非力な立場にあるのが、非成人女性である。それゆえに、社会の矛盾といった目をつぶりたくなるような現実からの皺寄せを最も受けるのも彼女達である。悲痛な叫びを声にも出せない彼女達が選んだ結果が殺人という犯罪であった。1度目の殺人は葵の父親、2度目の殺人は静香の育ての親と、肉親に向かって怒りの刃を向ける彼女達は、社会的には到底許されない罪を犯すわけだが、出口のない迷路を彷徨うような思春期の不安定で行き場のない思いを綴った表現に、共感したり、かつての自らの思春期に引き戻されたような感覚を持つ人は多いのではないかと思う。

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# 『英単語の世界 多義語と意味変化から見る』
2016/11/26 16:09
英単語の世界 多義語と意味変化から見る 寺澤盾 中公新書 2016年



英語に限らず、言葉を学んでいく上でやっかいなのが、多義語の存在だ。本書は、多義語が生じる背景を、語の歴史的な変遷を軸に、メタファーとの関連にも注目して紐解いていくものだ。帯に書かれている"a hand of banana"とは、人間の手とバナナの房が類似していることから生まれた表現である。時にsuitはそれを着ている人物の代わりに用いられることもある。多義語が発生するメカニズムの説明は、それだけで十分に興味深いものではあるが、そのメカニズムを明らかにし、単語の学習に役立つようにという意図も本書にはあるようだ。

また、本書のもう1つの側面は、ある意味領域を表すためにどんな単語が使われてきたかという研究領域である名義論や、メタファー研究についての入門書でもあるという点だ。特に名義論の分野からは、トイレを表す表現や、義務を表す表現の変遷を見ることができ、英語教育の点からも非常に有益な情報が多かった。現在の英文法教育で教えられている事柄の中には、現在の使用から考えると頻度が低かったり、他の表現に移り変わりつつある文法事項が多々あるそうだ。最新の状況をコーパスなどのデータを用いて分析した研究に敏感であることの重要さに気づかされる。

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