桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ 集英社 2010年
スクールカーストを描いた作品として有名になり、映画化もされた本作。タイトルにもなっている「桐島」という人物は、地方の進学校でバレー部の主将を務める生徒で、その桐島がバレー部を辞めることによって大小何らかの影響を受けた5人の高校2年生達それぞれの物語が作品を紡いでいる。物語の中で、桐島は一切直接的には登場せず、各々の人物の頭の中にだけ現れる。
作品の中で描かれる高校2年生の5人は、それぞれ同じクラスに所属しているが、部活が違えば属するカーストも違う。そして、それぞれが自分なりの高校生活を謳歌している部分と、言葉にし難い負の感情を抱えて生きている。下の人間が、当たり前のように上の人間から受ける手厳しい仕打ちに憤りを感じつつも自分なりの道を進もうとする描写があれば、欲しいものすべてを手に入れているように見える上の人間がふと感じる、得も言われぬ空虚な気持ちも描かれる。
世の中に対する一種の諦めや、人間関係を器用にこなしていくだけの力がないのに、周囲の大人達からは、「未知の無限の可能性」を説かれ、どこか生きづらさを感じながら日々を過ごすのが高校生達だ。彼らの感性が、これでもかというほどに刻まれた筆致に、学校という周囲から閉ざされた小社会で生きていく上で抱えるチクチクとした感情を抱かずにはいられない。
PR