サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう 著者:秀章
イラスト:R_りんご 角川スニーカー文庫 2016年
とても現代的なコミュニケーションを、ラノベ的な物語世界で描いた作品。作品舞台は、20年前に起きた人類対魔族間の大戦争で活躍しながらも、突如姿を消した七氏族が残した莫大な富を探すべく、人々がダンジョンを旅するというものだ。その中でも、主人公ユーリが所属するのは、「軍資に一番近い旅団」と呼ばれる最強の旅団(サークル)だった。男4女1で構成される最強のサークルに、謎の美女、クリスティーナが加入することで、徐々にサークルの人間関係が破壊されていく。
とことん仮想的な世界で、とことん現代的なコミュニケーションが描かれる、なかなかに挑戦的な作品だと思う。無意識に集団の人間関係をめちゃくちゃにするという、とんでもない能力を持ったクリスティーナは、4人の男たちを惚れさせ、そのせいで女1人を退団に追い込む。やがて真実を知った男たちによるお互いを罵る会話劇は、蚊帳の外にいる者にとっては抱腹絶倒。
美女に翻弄された男たちをどうにかしようと、ユーリが選択した手段は、さすがにラノベ世界でなければ実現しえないものだが、目指すべき着地点としては、現実世界でも十分にあり得る。架空の世界で極めて現実的なコミュニケーションを描いた傑作だ。
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