キャラクター小説の作り方 大塚英志 星海社新書 2013年
まだ「ラノベ」という言葉が登場していない時代、筆者はそれを「スニーカー文庫のような小説」あるいは「キャラクター小説」と呼んだ。そして、前半はラノベ業界志望者に対して、しっかりとした作品を書くためのノウハウ(例えば、キャラクター設定とストーリのかみ合わせ方や物語の法則)を教え、後半に行けば行くほど、ラノベが文学の世界に対して持つ可能性について語っていく。
ラノベ批判に対する筆者なりの反論を試みたり、現代小説における「私小説」という概念へ疑問を呈してみたりと、後半の展開はなかなかに興味深い。また、やや唐突に語られた、イラク戦争とハリウッド映画の物語論とは同じ物語構造を持っているという分析からは、文学や芸術という分野が社会に与える影響について無自覚ではいられないという強いメッセージが感じられる。
徐々にだが、ラノベと一般文芸との境界は薄くなり、現在その両方を行き来できる評論家も増えてきたのではないだろうか。それでもまだ、2つの世界には上下関係があるように思う。それゆえの自由でアンダーグラウンドな雰囲気がラノベの魅力なのかもしれないが、ラノベが不当な評価を受けないように、発信し語る言葉をラノベ読者が身につけていくのが大切なのかもしれない。
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