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# 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6.5』
2014/08/08 17:24
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6.5 渡航 小学館ガガガ文庫 2014年



TVアニメシリーズの番外編、「だから、彼らの祭りは終わらない」の裏を描いたストーリーと、9巻直後のクリスマスパーティーの様子を収録した巻。文化祭が終了後、奉仕部は悩み相談のホームページを作成した。そこに来た依頼は生徒会長の城廻めぐりからのもので、「体育祭を盛り上げたい」というものだった。しかし、生徒会役員と各部活の代表で構成されている体育祭実行委員会は、委員長も決まっておらず、体育祭を盛り上げるための目玉企画も未定のままというのが現状であった。奉仕部の提案で委員長に推薦されたのは、文化祭実行委員長を務めた相模南だった。体育祭の準備を進めていく中で、奉仕部と各部活、委員長の相模との間に緊張関係が生まれ、事態は悪化していくのだった。

毎回のことではあるが、作者が描く学校の風景というのは、恐ろしいまでにリアリティがある。クラス内での序列、生徒間の微妙な距離感など、高校生が過ごす空間の息苦しさを描かせたら、渡氏に肩を並べるものはライトノベル業界ではそういないように思える。作者も「なかがき」で書いているが、今回委員長になった相模という人物は、いかにもクラス内にいそうな人物である。トップカーストにはなれず、かといって、下位カーストでもない。上からの視線に耐えつつ、カースト上位として生きる苦しさも持っている。そして、人間的には甘いところがあり、能力や人心掌握力にはやや欠ける。どこまでも身近な人物として描かれた。そんな相模に対して少しは光の当たるラストが描かれた本作は、他とは違う力を持った奉仕部の面々以外でも学校でうまく生きる方法はあるのだと伝えてくれているのだろうか。
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# 『日本語スケッチ帳』
2014/07/09 18:06
日本語スケッチ帳 田中章夫 岩波新書 2014年



言葉は生き物であり、時間とともに変化する。本書は、日本語の現在について様々なトピックを交えながら縦横無尽に語ったものである。そこにはただの誤用や勘違いという言い方では表しきれない、生きた言葉ならではの現象が溢れている。

特に外国語や古語の表現を多く引用し、外国語との比較や現代の日本語の歴史的な変遷について扱っている点が興味深い。案外、一方の専門家にとっては真新しくないような事柄であっても、他方にとっては新しい発見であったりする。この点が、諸外国の日本語学科で教鞭をとり続けた著者ならではの個性かもしれない。

本来、言語学の世界は純粋に言葉の現象を追いかける学問であって、誤用だ変だなどど言って「正しい」用法を教えようとする学問ではない。著者も説教臭く誤用に関して嘆くのではなく、あくまで現象として論じている。そのため、東京語と方言の違いや意味の変遷などの記述は大変興味深い。

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# 『「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー』
2014/07/06 18:27
「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー 高橋秀実 新潮文庫 2014年



今年の4月から放映されていたドラマの原作。東大合格者数では有名な開成高校も、野球部に至っては悲惨な状況だ。まともにキャッチボールができないやら、守備をやらせてもエラーを連発するわで、とても試合で勝てそうなチームではない。ところが、2005年夏の大会では、東東京ベスト16進出という大躍進を遂げた。本書は、そんな開成高校野球部の取り組みについて、選手や監督への取材を通してまとめたものである。

ドラマ化し、そこから知った作品ではあったが、非常に興味深い記述に溢れた内容で、一気に読んだ。強豪校の常識が通用しない開成高校において、大切なのは「ドサクサに紛れて勝つ」ことだそうだ。高校野球における様々な戦術は、結局は強豪校同士の逼迫した試合を前提としたもので、ごく普通の学校、はたまた普通以下の実力の学校ではまったく意味を為さない。これが、開成高校野球部監督、青木先生の考えである。エラーを前提として、取られた分以上に取り返す攻撃野球、練習を仮説と検証の場とする練習法など、開成高校の実情に合った戦略の数々は、不思議と説得力に満ち溢れている。また、ドラマについても、本書の内容を最大限に活かして制作されていたのだなとわかり、本書の素晴らしさを伝えてくれたドラマのスタッフにも感謝したくなった。

終わりにある桑田真澄による解説もまた、素晴らしい。野球以外のあらゆるものを絶ち、練習時間が長ければよいと考える風潮や、体罰はあって当たり前という高校野球の姿勢に疑問を持ちながらも、プロの世界まで駆け上がった彼ならではの開成高校野球部への愛情に満ちた言葉は、心に響く。

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# 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑨』
2014/06/18 15:56
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑨ 渡航 小学館ガガガ文庫 2014年



生徒会選挙の一件以来、すっかりこれまでの関係にひびが入ってしまった奉仕部。そんな中舞い降りた依頼の主は、八幡の策略のもと生徒会長に当選した一色いろはであった。雪ノ下と由比ヶ浜を巻き込まない方法を選択した八幡は1人で案件を解決しようとするが、他校との合同クリスマスイベントという企画には想像以上のハードルがあることに加えて、相手の海浜総合高校側の生徒会長、玉縄の性格もあって、事態は暗礁に乗り上げる。

1度失ってしまったものはもう戻らないかもしれないが、また別の形で取り戻すこともできるのではないか。本書を読んでいてそう思った。以前の生徒会選挙では、今のこの環境を守るために策を講じたが、結果的にはそれが奉仕部を嘘と欺瞞に満ちた集まりにしてしまった。八幡は、春から巻き込まれる形で入部して続けてきた奉仕部に対して、初めて本気で自らの気持ちを伝え、雪ノ下と由比ヶ浜はそれに応えようと踏み出していく。場の雰囲気を優先して、実のない議論を続けようとする玉縄に対して語気を強める八幡と雪ノ下の姿は、まるでわだかまりがあったときの自分たちに対して話しているようで、後半のシーンは心熱くなる。

筆者のあとがきによると、このシリーズもそろそろ最終巻を迎える様子だ。次か、その次なのかはわからないが、彼らの青春物語にもうすぐ終止符が打たれると思うと寂しい気がする。

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# The Piano Man
2014/05/12 22:10
The Piano Man, Tim Vicary, Oxford Bookworms Library Stage 1, 2013



海岸に流されてきた謎の男性は、無事に保護されて病院に運ばれたが、素性は何もわからない。ある時、病院の一室でピアノを弾いたことをきっかけに、「ピアノマン」と呼ばれるようになる。謎の男、ピアノマンの実話に基づいたストーリー。

謎が少しずつ解決していく構成の絶妙さが良い。各章の始まりには、ピアノマンの立場からした心情が綴られているのも読者が引き込まれていくポイントで、後から読み返すと、なるほどと納得がいくようになっている。400語レベルでありながらも充実の内容だ。ただし、文法は関係副詞や付帯状況のwithが入っているなど、高校レベルなので、その点は注意が必要か。

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# 『ゴールデンタイム8 冬の旅』
2014/04/16 12:08
ゴールデンタイム8 冬の旅 竹宮ゆゆこ 電撃文庫 2014年



リンダとともに過ごした高校時代の記憶を卒業式の翌日に喪失し、大学入学後は加賀香子出会い、切なくも楽しく輝かしい大学生活を送ってきた万里だったが、高校時代の記憶が戻るにつれて、思い悩む日々が続く。そんな万里のことを思い、香子は万里と別れるという決断を下すのだった。2人の恋の行方、そして、万里の大学生活の行方は? 物語は結末を迎える。

テレビアニメ化もされ、2クールでフィナーレを迎えた本作。アニメも素晴らしかったのだが、原作を読むことで、アニメでは簡略化されてしまった部分も補完でき、より大きな感動を得られる。特に、万里が大学時代の記憶を今まさに忘れ去ろうとしていると実感しながら、学園祭での踊りを精一杯楽しもうとするシーンは迫力があった。また、最大の目玉は、万里が実家で香子と再会する場面であろう。文字情報だけが与えられている読者は、万里のセリフと、万里の実家を訪れた人物描写の食い違いに何となく違和感を覚えながらも読み進め、後にその人物は香子であったことを確信するというサスペンスを楽しむことができる。映像を通してでは、この感動はなかなか得られない。

高校ではなく、大学を舞台に設定したことが珍しいと話題になった本作。主要な読者となる高校生にとっては実感が湧きにくいであろうが、大学生活を経験したことのある読者にとっては、高校時代とは違った、大学時代特有の楽しさ、辛さ、甘酸っぱさが蘇ってくるようであった。

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# 『女子読みのススメ』
2014/04/02 12:38
女子読みのススメ 貴戸理恵 岩波ジュニア新書 2013年



若手の女性の書き手による、女性が主人公の小説を、女性の目線で読み解くことをテーマにした本。特に、思春期の生きづらさに焦点が当てられていて、行き場のない思いに悩む者に生きるヒントを与えてくれそうな小説を紹介してくれる。

多感な思春期には、大人や社会に反感を抱いたり、絶望的なまでの孤独感に苛まれたりすることが多々ある。そんな時に支えとなってくれるのが、自らと同じ気持ちを発信している歌であり、ブログであり、小説であるのではないだろうか。一般に、中高生に対しては名作との誉れの高い古典的な純文学を読むことが奨励され、友情に感動した、表現に感動しただとか、何かしらの感動を強要されることがあるように思う。本作で取り上げられる小説は、必ずしも学校の先生が胸を張って薦めるような類の作品ではないかもしれないが、その分思春期の悩める世代にとってはまたとない大きな出会いとなる可能性を秘めた作品ばかりだ。

思春期を生きる中高生よ、真面目な大人が薦めてくる本にうんざりして、読書嫌いになってしまったのなら、是非本書を手に取り、取り上げられている小説を読んでみてはどうだろうか。本を読む素晴らしさを感じられると思う。

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# 『言語の社会心理学 伝えたいことは伝わるのか』
2014/03/21 20:15
言語の社会心理学 伝えたいことは伝わるのか 岡本真一郎 中公新書 2013年



言語を用いたコミュニケーションについて、語用論や心理学の立場から論じた本。非言語コミュニケーションや敬語の使用など、話題は多岐にわたる。

伝えたいと意図していることが、いつも伝わるとは限らない。では、なぜコミュニケーションに失敗するのか。その原因について多角的に論じているのが本書である。タイトルの通り、一応はことばの社会心理学をうたっているのだが、実際には言語学やコミュニケーションの理論にも触れながら、言語を用いたコミュニケーションの本質に迫ろうという内容である。敬語や皮肉など、言語学的な研究が多くありそうな分野でも、コミュニケーション学や心理学の領域からの分析が加わるだけで、違った視点を得られる。特に、伝える方は実際よりも相手に自分の意図が伝わっていると思いがちであるという実験結果は興味深い。

著者は研究で得られた成果をミスコミュニケーションの問題に応用しようという姿勢が強く、心理学的な研究の応用可能性についても考えさせられた。

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# 『就活のコノヤロー』
2014/03/18 14:37
就活のコノヤロー 石渡嶺司 光文社新書 2013年



前著『就活のバカヤロー』から6年の歳月が過ぎた。その間、大学生の就職活動をめぐる状況に変化は訪れたのだろうか。以前と同じく、学生・企業・大学・就職情報サイトの立場からの現状をリポートした本。

本書を読んでみると、現状としてはさほど変化していないのではないかという感想を持った。しかし、じわりじわりと変化してきている部分もある。例えば、就職活動の後ろ倒しに関する議論は今後も当事者にとっては見過ごせない大きな問題であろう。歴史的背景も踏まえた解説によって、就活開始時期を設定することの難しさがよくわかる。グローバル人材に対する関心の高まりも、この6年間での変化といえるであろう。

また、良い方向への変化もある。「バカヤロー」と叫びたくなるような状況だった6年前から、工夫を重ねて採用活動に成功している企業もある。自らの特性をうまく利用して成功する学生もいる。本書の随所で触れられているように、世間の不条理さに負けずに戦い抜いていくのが、成功の秘訣なのか。

相変わらず、明確な答えがない中もがき続けるしかないのが就職活動なのであろう。序章の就活生分類や女子学生の就活状況に関する記述からしても、いかにも優秀だからプラスになるだけではなく、社風に合うかなど、直感的な要素も就活に影響してくる。それが社会の厳しさだからと言っていては、馬鹿らしくもある現状の解決にならないのは事実だが、そのような不条理で不透明な世界だからこそ、見事に滑り込んで内定を得る面白さもある。皆にとって、就職活動は人生そのものを象徴しているのかもしれない。

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# 『憲法への招待  新版』
2014/03/11 22:20
憲法への招待  新版 渋谷秀樹 岩波新書 2014年



24の問いに答えながら、日本国憲法の根本にある思想や、憲法の規定する人権や統治機構について述べた本。安倍政権で憲法改正に向けての論議が活発化している中、日本国憲法に与えられた本来の意味や役割について考えることは、とても大切なことになるであろう。そんな時代だけに、本書が新版となって刊行された意味は大きい。

本書で一貫して主張するのは、憲法は1人1人の権利を守るためにあるという根本思想である。「憲法には権利ばかりが書いてあって国民に対する義務がほとんど書かれていない」などといった、憲法の意味を根本的に取り違っている主張が為されるのが日本の現状である。本書は憲法制定の背景や憲法の存在意義について述べた個所が多く、憲法を語るために知っておきたい事項がよくわかるようになっている。憲法改正について考える前に是非読んでおきたい項目だ。

また、本書を読んで痛感するのは、憲法上の権利が問題になったときの司法権の弱さである。一票の格差問題に表れているように、違憲の判決があっても、注意に留める判断をすることがあるし、場合によっては判断を差し控えるということさえある。権利が侵害されたときの最後の砦が裁判所の違憲審査権であると思うので、もう少し裁判所は積極的であっても良いのではないかと思ってしまう。

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