やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑨ 渡航 小学館ガガガ文庫 2014年
生徒会選挙の一件以来、すっかりこれまでの関係にひびが入ってしまった奉仕部。そんな中舞い降りた依頼の主は、八幡の策略のもと生徒会長に当選した一色いろはであった。雪ノ下と由比ヶ浜を巻き込まない方法を選択した八幡は1人で案件を解決しようとするが、他校との合同クリスマスイベントという企画には想像以上のハードルがあることに加えて、相手の海浜総合高校側の生徒会長、玉縄の性格もあって、事態は暗礁に乗り上げる。
1度失ってしまったものはもう戻らないかもしれないが、また別の形で取り戻すこともできるのではないか。本書を読んでいてそう思った。以前の生徒会選挙では、今のこの環境を守るために策を講じたが、結果的にはそれが奉仕部を嘘と欺瞞に満ちた集まりにしてしまった。八幡は、春から巻き込まれる形で入部して続けてきた奉仕部に対して、初めて本気で自らの気持ちを伝え、雪ノ下と由比ヶ浜はそれに応えようと踏み出していく。場の雰囲気を優先して、実のない議論を続けようとする玉縄に対して語気を強める八幡と雪ノ下の姿は、まるでわだかまりがあったときの自分たちに対して話しているようで、後半のシーンは心熱くなる。
筆者のあとがきによると、このシリーズもそろそろ最終巻を迎える様子だ。次か、その次なのかはわからないが、彼らの青春物語にもうすぐ終止符が打たれると思うと寂しい気がする。
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